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分岐性のアルゴリズム3

 新鮮な土の匂いと味を堪能した。そう、崖から落ちたもののなんとか生きながらえているのだ。

 だが、既に俺たち二人は虫の息。立ち上がる体力すらも残っていないし、足が全く動かない。何度も力を込めて立ち上がろうと二人で奮起するが全く動かない。


「おい、生きてるか?高見!!」


「ああ、なんとかな。たが、足がうごかねぇ」


 高見が生きてる事実を知り安堵したも束の間、大変なものを目撃する。


「!!」


「おい、お前!足が変な方向向いてるぞ」


「え、」


 高見の足元を見てみるとその足は見た事も無いほどしなしなに折れており、節々が紫色に変色していた。

 それはかつて見た事の無いような痛々しい見た目に変貌していた。

 だが、高見はそこまで痛そうな素振りを見せる事は無かった。急な出来事で脳がドーパミンを放出して痛みを感じにくくしているのかもしれない。

 でも、俺は少し責任を感じた。

 結局は、俺の行動の結果が招いたのだ。こんな状況をな。


「ああ、ほんとだ。」


 だが、人の事を言えないのが最悪な事だ。俺自身も全く足が動かない為、高見と同じように立ち上がる事が全くできない。

 恐らく足の骨が折れたか、足の腱が切れたのだろう。

 つまり、ここから動けない為俺たちは詰んだのだ。


「くっそ、どうすればいいんだよ」


「一応助けを求めよう。もしかしたら誰か近くにいるかもしれない」


 俺たちは出来る限りの大きな声を振り絞り、助けを求めた。しかし、そんな都合の良い話などなく、誰の助けが来る事も無かった。

 ここて、俺に出来ることは早くこの一日を終えて、もう一度ループする事だ。そう思っていた。

 そして、何やかんやしているうちに、あっという間に夜になった。


「なぁ、カズ。俺たちどうなるんだ。」


「......さあ」


「さあ、じゃねーよ。ふざけんな。お前がこんな所に連れて来るせいでこうなったんだろうが。俺のおすすめする廃病院に行った方がマシだったじゃねーかー」


 適当に答えた俺に対し、高見は憤怒しながら俺に掴み掛かる。無理もない。高見にとっては、もう取り戻せない所まで行っていると思っているんだからな。

 しょうがないことなんだ。俺がおかしくなってるだけなんだよ。本当は命は一つだし、同じ一日なんてやって来ない。

 それを知ってしまった俺はもう、不幸まっしぐらなのかもしれないな。


「ッ、しょうがないんだよ。こうしたら運命が変わると思っていた。俺だってこんな結果になるなんて知らなかったんだよ。」


「なんだ?運命ってどう言う事だ?ハッキリ答えてくれよ!」


 高見から帰って来た返事は、そもそもの基についての詳細だ。

 さて、そう来るならばここで俺は俺自身に問う。自分自身にいまさら何を問うかって?もちろんそんな事決まってるさ。自問自答とやらだ。

 高見に今まで起きた事のニセモノのような真実を言うか、それともまた黙ってひた隠しにするか。

 このループのこと。

 あの殺人鬼のこと。

 こうなった状況に至るまでの経緯とやらを全部洗いざらい言っちまえば良いんじゃないのか?

 いや、だがしかし、別に言うのは大丈夫だが、どうせ信じてはくれない。高見にそんな話をするような気力も残っていない。

 だが、仮にもだ。

 俺がこのループの事、もしくはこの状況だけでもいい。それを高見が覚えてくれれば、全てを解決できるだけのピースが揃うかもしれない。つまり、ループの原因である時報係さえなんとかすればこの先の諸々の事について全てを対処することが可能だ。このループは高見がパスワードとなっているならば、そのパスワードを覚えたままの可能性を信じた方がいいのでは無いだろうか。

 じゃあ、言ってしまった方が得じゃねぇかよ。何を俺は今更戸惑ってるんだ。

 俺よ。

 どうせ死ぬし

 どうせ繰り返すし

 どうせ解決して見せる。

 ならばここに至るまでに日和る必要なんてないだろう。なあ?そうだろ?

 俺。

 黙ってないで答えたらどうだ?

 どうした?何故ずっと黙っている。もしかして、ビビってるのか?こんな絶体絶命如きに怖気付いたのか?なんだ?違うか?

 ならば、何故一掴みの希望、天から垂れた蜘蛛の糸を登ろうとしないんだよ。

 お前は何の為にこの日を繰り返してるんだよ。

 お前は何をしにこんな一日に留まってるんだよ。

 ただただ、ボーッと生きているだけでこんなところにいるのか?

 どうなんだ?

 さあ、はっきり答えろ。


ー俺は、何をする為に今ここにいるのか?


 分かってんだろ。ボザーっと座ってないでささっと答えろ。出ないとお前はこのまま成長性のない、本当に己をループしているような奴に成り下がっちまうんだぞ。

 友達を救え。

 俺も救え。

 全員をハッピーエンドに導かないといかないだろ。


「おい、どーなんだ?なんで黙ってんだ?」


 黙ってるんじゃねえ。全部洗いざらい喋っちまえよ。

 どうせ、もう一度繰り返すんだろ?なら、やっちまえ。後悔は、全部俺自身が受け止めてやるから。

 さあ、行け。


「なあ、高見。運命って信じるか?」


「運命......」


「何度やり直しても同じ結末へと収束する。そんな状態の事だ。例え、違う行動を起こしても覆りようがないもの。しかし、矛盾するんだよ。」


「それって、どういう事だ?」


「バタフライ効果ってあるだろう。些細な出来事から始まる事象の事だ。だから、矛盾しているんだよこれは」


 高見はまるで豆鉄砲を喰らったかの様なキョトンとした顔をしている。

 無理もない。高見からしたらこんな説明なんて意味不明だろう。

 俺もそっち側の人間だったのだ。こんな事を体験する前は。


「......単刀直入に言おう。高見。俺たちは、この一日の間を既に数回以上もループしている。」


「同じ日を繰り返してるって、そんな事あり得るのかよ!?でも、俺には記憶がないけど。」


「実の所、俺と玲だけなんだ。その記憶が残り続けるのは。」


「つまり、お前らは、

何度も何度も、こんな結末を辿ったって事なのかよ!」


「まぁ、そんな所だね。」


「なんてことだ。何度も、何度も死んで......」


「それが事実だ」


 高見は下を向いて暫く沈黙する。何か重い背中を感じ取った。


「つまり、俺が心霊スポットに行った所為って事か......」


「いや、高見。実はそうとも言い切れないんだ。」


「なんでだ?心霊スポットにさえ、行かなければアイツに鉢合わせる事はないだろう」


「いや、アイツは恐らくなんだが何処にでも現れる。何故なら今回の廃墟は大幅に場所を変えた筈なんだよ。でも、恐ろしい事にアイツが平然と、そこに居て襲って来た。それがどう言う事かわかるか。」


「身内レベルの犯行か、それともストーカー的な奴の犯行って事か?」


「まあ、そう言う事になるだろう。恐らくの話、こんだけ執着してくるってことは、相手も只者ではないだろう。」


「あー、つか、まってよ。そういえば俺、犯人の顔ちょっと見えたかも」

 

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