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分岐性のアルゴリズム

「おーい、遅いぞー。お前ら。」


 こちらに気付き、会うや否や文句を溢す高見である。そこには勿論ささみやもいた。相変わらず、何も変わらぬ日々だ。同じ毎日とやらだ。


「おいおい、何してたんだよ、二人で。予定時刻を20分もすぎてるぞ」


 高見は若干むすっとした顔で俺たちを見つめる。


「え、ああ。いやぁ、すまんすまん。やたらと、道が混んでいてだな。」


 俺は少し選ぶにしてもよりにもよってあまりにも苦しすぎる言い訳をした。咄嗟のことだったのでつい、変な誤魔化しを入れてしまう。


「そう、そう。車が凄く、渋滞していて、全然通れなかったの」


 自転車は渋滞はあまり関係ないのだがな。だが、流石高見が相手だ。これらの事に納得したのか、ささみやと顔を見合って、


「なんだ、渋滞ならもうしょうがないな」


「うん、しょうがないね」


と、勝手にふたり揃ってうんうんと、納得してくれた。

 生粋の馬鹿で助かった。普通は何処かしら何かに引っかかる所なんだがな。ただそこらへんは、都合の良い事なのでどーでもいい事だがな。


「まあ、みんな揃った事だし、パパッと見て回るか。勿論俺様が先頭でお前らは後ろをついてくるだけで良い。ああ、ライトは俺が持ってきたから安心しろよ。」


 高見がサッと足を踏み出す。その時に俺は玲に目を合わせる。玲は小声で、「アンタが言いなさい」と、ボソッと耳元で呟く。

 結局、俺がやるのかよ。

 まあ、いいさ。なんとかして見せる。

 そして、俺は進みゆく高見の足を止める言葉を言った。


「ああ、高見。それなんだけどさ」


「ん?なんだよ。」


 高見が足を止めてこちらを振り返る。


「いや俺さ、此処よりも怖そうで面白そうな心霊スポットをたまたま見つけてしまってさ。」


「なんだ、それ。あっ、まさかじゃ無いけど、怖気付いたのか?」


「いや、いやそんなんじゃ無いさ。此処よりももっと怖い、最恐レベルのスポットを見つけたんだよ」


「はあ?なんだと?普段オカルトや心霊を信じないお前が怖がる様な場所だと?いったいそんなものが何処にあるんだ?教えろ!!」


「それはづばり......」


「武楼山の廃ホテルよ!!」


 俺が言おうとしていた事を玲に遮られていた。まあ、つまりはそういうことだ。新たな場所に行くことによってアイツはおそらく居ないはずだ。


「廃ホテルねぇ、そこってどんなところなんだ?ハッキリ言って俺の勧める廃病院とあんまり変わらない気がするけどな。」


「いやいや、そんなことはないからね。この廃ホテルには、お化けの量がとんでも無いのよ!こんなありふれた病院なんかよりもね。ジャンジャン霊が飛び回っているって噂だから、そんなちっぽけな個人病棟よりも、断然に面白いわよ!!」


「まあ、つまりここの病院が猫だと例えるならば、ホテルの方は最早虎であると言うことだ。」


「おお、よく分からないけど凄いってことか?」


「そうだ!!凄いってことだ。」


「なるほどねー。」


 高見は手を顎に当てて考える素振りを見せる。暫く並んだ様子を見せる。頼むよ、高見。このループを抜け出す為にはお前がカギなんだ。正直、お前の動き次第で俺らの運命も決まったも同然なのだ。


「おう、じゃあいいぜ。その廃ホテルとやらに連れて行けよ。ただし、期待はずれだったら、ジュースの一本や二本を奢らせるからな」


 歓喜した。俺たちは、玲と顔を見合わせて顔を赤くしてグッドサインを送り合う。ようやく歯車をひとつずらす事に成功した。これでもう、大丈夫だろう。あの廃墟にしか、あの霊的な物は存在しないはずだからな。


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