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第一章7「風呂場での攻防戦」

「ここ、緋之原ひのはらが使うお風呂場だよな……。やっぱり、女の子ってシャンプーとかに、物凄くこだわったりするのだろうか……?」


 緋之原ひのはら琴葉ことはの友達らしき人物が来たことにより、春輔しゅんすけは身を隠さざるを得なくなってしまった。

 万が一、その友達に、自分が緋之原のアパートに泊まったことがバレれば、学園内での自分の扱いが危ういものになるだろう……。

 そのせいで、このお風呂場に隠れることになったのだが……。意外と言ったら失礼だが、案外あっさりしているな、と思ってしまった。


「あの清楚せいそって言われる緋之原のことだから、ブランド物の美容品や化粧品とか並んでいるかと思ったけど、そうでもないんだな……」


 ――だとしたら、素材が良すぎるだけなのか。


 まあ、ブランド物の美容品を持っているから何だ、と言われればそれまでだ。

 緋之原の清楚なイメージだけで、勝手にそうだと決めつけるのは、さすがに失礼な偏見だし間違っているな。

 すると――。


「琴葉っちー! 今日はいつもよりも遅かったけど、寝坊でもしたのー?」

「ああ、えへへ……。実はそうなんだよね、あはははは……」


 外から、緋之原と彼女の友達とおぼしき会話が聞こえてくる。


「仲が良いんだな、二人とも……」


 そもそもの話、緋之原は誰とでも仲良く会話をするので、友達は多い部類に入るだろう。


 自分とは全くの正反対だな……。俺なんかいんキャの典型だから、友達とか少なくて、クラスでいっつも浮いていたのにな……。


 そう心の中で情けない愚痴をこぼし、二人の会話に耳を傾ける。


「あれ? 琴葉っちってこんなに食べるっけ? なんか二人分の食器が置いてあるんだけど……」


 ヤバい……。いきなり核心を突くようなことを指摘してきしたぞ、この時音ときねとかいう友達……。

 すると、緋之原は――。


「あ、こ、これはね……。最近、体力をつけようと思ってたから、いつもよりも多く食べようと思ったんだよね……」

「ええー!? 琴葉っちって、せっかくスタイル良いのに、そんなことしてたら太っちゃうよー!?」

「そ、そうだよね……。あは、あはははは……」

「あー、ひょっとして、誰かに手料理作ってたとかー?」


 なかなか鋭いな、この時音とかいう友達……。


 彼女たちの一つ一つの言葉に、春輔は胸がドキドキしてしまう。

 すると、緋之原は――。


「た、ただの体力作りだからね……! 決して、その……。男の子に手料理を作っていたワケじゃないからね……!」


 ――うそつくの、めっちゃ下手だな!


 あんな調子で果たしてこの山場を乗り越えられるのか……。正直、すごく不安になってきたぞ……。

 すると――。


「ええー、琴葉っちくらいの美人さんなら、彼氏くらい居ても普通でしょー? アタシなんて"イケメン"しか興味無いから、一人もできなくて詰んでるんだよー?」


 時音という緋之原の友達は、結構グサッと来るような茶化し方をする。


「そ、そそ、そんなことないよ……! 私に彼氏なんて、そんなの……。一生できない、から……」


 ――彼氏、か。


 もし、緋之原と自分がそういう関係になったら……。そのときは、お互いに幸せになれるのだろうか……。

 一緒に映画を観に行ったり、一緒にデートスポットを堪能したり……。

 まあ、緋之原の場合は、一緒にエロゲーをプレイする方が楽しんでくれそうだけど……。


「そして、ゆくゆくは……。結婚のことも、考えるのか……?」


 そこまで言って、春輔はふと我に返る。


「って、何考えてんだよ、俺!? あっ……!」


 ――しまった! 恥ずかしくてつい、大声を上げてしまった!


 だが、そう思っても、口から出た言葉が戻ってくることはなく……。完全に自分が隠れていることをアピールしてしまった。

 すると――。


「……え、誰かいるの!?」


 時音という女の子のものとおぼしき足音が、次第にこちらに近づいてくる。


 ――ヤバい! これは、もう言い逃れできないぞ!?


 着々と近づいてくる足音……。その足音は、もはや怪物に襲われる一歩手前のようにも感じられた。

 すると、緋之原が――。


「あ、いや、その……。お風呂場には誰もいないからね……!?」


 ――だから、嘘つくの下手かよ、緋之原!!


 結局、緋之原の正直すぎる性格ゆえに、この山場を誤魔化ごまかすことはできなかった。

 風呂場の扉が、ゆっくりと開けられていく……。

 そしてついに、時音という女の子と目が合ってしまった――。


「きゃあああああ!!」


 その瞬間、彼女は耳が痛くなるほどの悲鳴を上げる……。


「あ、終わった……」


 短い学園生活だったが、最後に緋之原という、とびっきりの美少女のアパートに泊まれて良かったよ……。


「ご、ごめんね……。岡崎君……」

「いいんだよ、緋之原……。俺、もう覚悟決めてるから……」


 退学処分の手続きって面倒なんだろうな……と思いながら、自首をした犯人のように粛々とお風呂場から出ようとする春輔。

 すると――。


「め、めっちゃカッコいい……!!」

「「…………へ?」」


 同じタイミングで、間抜けな声を出してしまう春輔と緋之原。

 薄茶色の髪をポニーテールにしている時音という女の子……。その女の子が突然、男性アイドルを見たときのような輝く瞳をこちらに向けてくるのだ。


「アタシ、三谷みたに時音ときねって言いますっ!! もしかして、琴葉っちの彼氏さんですかっ!?」

「い、いや、違うけど……」


 何が起こったのかワケが分からず、ぼんやりとそう返す春輔。

 すると――。


「じゃあ――アタシの彼氏になってください!!」

「「えええええええええ!?」」


 お風呂場に、春輔と緋之原の驚愕きょうがくしきった声がとどろいた。

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