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おめでとう、


 その報告を受けたとき、わたしは人目も憚らず飛び跳ねて大喜びした。

 長い時間を一緒に過ごしてきた幼馴染みと、職場で一番仲が良い友だちという、わたしの人生においてなくてはならない大切なふたりが、付き合い始めたのだ。飛び跳ねたくもなる。


「おめでとう、お幸せにね」


 張り上げた声は、風船みたいに膨らんで、上擦っている。


 感情が溢れそうな声に、ふたりは目を丸くしたあと顔を見合わせ、フフと笑った。とても幸せそうに。とてもそっくりな笑顔で。まるでわたしには見えない、ふたりだけの世界が広がっているかのように。


「とてもお似合いだよ」


 また風船みたいな声で祝福し、なくてはならない大切なふたりに、わたしができる最大限の笑顔を見せた。


 きっと人生において、これほどまでに心を動かされる報告を受けることは、二度とないだろう。もう二度と。ないことなのだ。




 思ってもいない言葉に、心はない。


「おめでとう、お幸せにね」


 言葉が物体であったなら、きっとこれは氷よりも冷たく、発した瞬間ぱりんと割れてしまうだろう。


 それでも私は、笑顔を作る。

「とてもお似合いだよ」

 また言葉が、ぱりんと割れた。



(了)

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