一人のステージ 4
緊張する。
いつもは撮ったものを編集して投稿する。
そうすることでダンスは一発撮りだったけれど、歌は後で録音するみたいなこともできない。
ダンスがうまくいっていなければ、普段であれば体がもつ限り数回トライするということもできない。
そんな姿を、応援してくれていた人たちに見せていいのだろうか?
頭の中にそんな疑問が出てくるけれど、結局それは嘘をついていることになるんだと思うと、それはできない。
うまくいくのかと言われると、正直なところわからない。
でも、私が作り上げた仮面様というキャラクターは今日この時のためにあったんだと思うから…
「皆さん、今日は急に配信をしてしまって申し訳ありません。仮面様と呼ばれたこのキャラクターで、皆さんに少しでも認知をされていたかと思います。このまま仮面様というものがどこの誰かもわからない状態で物語を終わらせるということも考えていました。でも、私自身が前に進むためにも、やりたいことをするためにも仮面様の素顔を出すことにしました。ただ、その前に一曲見てください」
その言葉とともに構えをとる。
そして音楽が鳴り出すと、私は歌って踊り始める。
「前へ前へ進めと私たちは口にする
なのになのに体は前に進まない
このままでいいのかって?
いいわけないでしょ?
だったら私はそう
動け動けと無理やり体を動かす
気持ちは入ってないけど大丈夫って?
そんなことを言うやつには言い返してやる
動かないと気持ちもついてこないでしょって
だから私は足を動かすんだ
進め進め考えるよりも速く
進め進め心よりも速く
そうすればきっと動くんだ
進みたい未来へきっと動くんだ」
そこまで口にして、ダンスを終えたときだった。
体がふらつく。
でも倒れるわけにはいかないと思い、なんとか踏みとどまる。
大きく荒い息が入るのがわかる。
まだ倒れるわけにはいかない。
そう思っていたときだった。
この部屋の病室が開く。
入ってきたのは、天音だった。
私はその姿を見て、安心する。
でも、手を前にやる。
由紀さんは言いたいことを理解してくれたようで、天音のことを止めてくれる。
そして、すぐに入ってきたお姉ちゃんのことも同じく止めてくれる。
二人は心配そうに私を見るけれど、二人の顔を見た私はむしろやる気がみなぎってきていた。
力があまり入っていなかった足にも、ぼーっとし始めていた頭にも、全部に力がみなぎってくる。
大丈夫。
そう言葉にしなくてもわかるくらいに仮面の下は笑顔にあふれているはずだ。
大丈夫。
一人のステージだけど、一人じゃないから…
私はつけていた仮面をゆっくりと外した。
画面に映っている私の顔はどうなのかわからないけれど、見てくれている人がいるってことは、大丈夫。
もう、アイドルになりたいって、ただ考えていたときからは成長をしているはずだから…
「皆さん。仮面様として応援をしていただきありがとうございます。仮面様が誰なのかわかりましたでしょうか?知らない人のほうが多いとは思いと思います。そんな私は最近アイドルになることができましたサラです。この姿を見てもらって、仮面様と同じように応援をしてもらうということは正直考えていません。姿がわからないほうがいいと思う人がいるということはわかっています。でも、本当の私を見てもらわないことには、仮面様と私の両方が消えてしまう気がしました。だから、すみません…いきます」
そして、私は再度構えをとる。
喋っている間に少しは体力は回復した。
いけるはずと判断をした。
だから音楽はなくても歌いだし、踊るのだった。




