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私のアイドル  作者: 美海秋
二章 挑戦編

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憧れたもの 4

私たちでも当たり前に知っているレベルのアイドルたちなので、ステージは盛り上がっている。

歓声も袖にいる私たちにまで聞こえていて、天音と二人で、声を出したいのをなんとか抑えているくらいだった。

そうして、盛り上がって最初のステージが終わる。

次の仕事もあるという三人は、ステージが終わると、私たちにも挨拶をしてくれると、そのまま去っていく。

かっこいい…

おそらく天音と私は、同じようにそう感じていただろう。

あとは、私たちの出番までなるべく落ち着いて待とう。

だから、油断していた。

マネージャーである由紀さんも、少し用事の電話をかけなければいけないこともあり、私たちに声をかけると出ていく。

残ったのは、私と天音。

そして、今やっているアイドルたちの後にやるであろう、アイドル二人の四人だった。

何かを話したほうがいいのだろうか?

そう考えたところで、初めて会った人に何かを言うのも違うと思った私たちは、どうしようかと考えつつも、この時間を無難に過ごすことを考える。

二人で動画を見て、今日行うステージで披露する曲である、プールといえばというよりもこれからの夏にぴったりの曲だったりする。

この会場であれば、盛り上がるだろうと思った私たちが選んだものだった。

今日もうまくいくだろうか?

少し不安ながらもそう考えているときだった。


「楽にアイドルになれた人はいいよね」

「ほんとにね」

「うちらは必死にオーディションを頑張っても、大手になんか入れないのに、コネなら簡単に大手の事務所に入れるんだもんね」

「うん、アイドル人生イージーモードってやつだよね」


そんな言葉が聞こえてくる。

思わず他の誰かのことを言っているのだろうかと考えたけれど、そうじゃなかった。

彼女たちは、私たちのほうをチラチラと見ながら、その言葉を話している。

そこから考えられることは、確実に私たちに向けて話しているということだった。

それがわかったのだろう、座っていた天音が立ち上がって文句を言おうとしたときだった。

慌てて一人の女性が中に入ってくる。


「間に合った…」


そう言葉にしながらも、入ってきた女性は私も知っている人だった。

今人気になっているアイドルの梅ちゃんだった。

このタイミングで登場するということは、最後。

トリのステージを行うのは、梅ちゃんなのだろうか?

先ほど言われていたことも忘れて私はそう考えていたときだった。

梅ちゃんは、私たちのほうをちらっと見る。

見られてる?

私はそう思い、天音に話をしようかと思っていたタイミングで、先ほどの二人の女性たちが、梅ちゃんに向かっていく。


「おはようございます、梅さん」

「おはようございます」

「おはようございます」


二人が挨拶をし、梅ちゃんもそれを返す。

やることは終わったとばかりに、梅ちゃんはすぐにその場から離れようとしたけれど、彼女たちの一人がさらに話しかける。


「梅さん。あのうちファンで…よければ写真なんかを一緒に…」


そう言葉にする。

梅ちゃんは、そんな彼女のほうを見てはいたけれど、すぐに不思議そうな表情をする。


「どうして、他のアイドルをバカにする人と写真を撮らないといけないのでしょうか?」

「別にそういうことは…あの二人がよくないことをしたのが悪くて…」


まさか先ほど私たちに言っていた言葉が彼女の耳に入っているとは思っていなかったのだろう。

言っていた彼女はしどろもどろになりながらも、言い訳を口にしていたけれど、それを遮るようにして梅ちゃんが言う。


「写真を一緒に撮ってしまうと、こちらも同じように馬鹿にされる可能性がある以上は一緒に撮ることはできません」

「そんなこと…」

「ありえないというのであれば、まずは二人に謝罪をするのが筋だと思いますが、違いますか?」


梅ちゃんにそう言われた彼女は私たちのほうを睨みつけるように見る。

私たちのほうに向かって何かを言おうとしたけれど、そのタイミングで次が呼ばれてしまう。

彼女たちはそれがタイミングがよかったと思ったのだろう。


「すみません、呼ばれましたので」


そう言葉にすると、ステージに向かっていった。

残された私たちは、すぐにかばってくれた、梅ちゃんに向かっていく。


「あの、先ほどはありがとうございます」

「いいのよ。あんなことを言うってことは、一緒に仕事をする人も簡単に悪く言ってしまう人たちってことだから…」

「そうなのかもしれませんが、庇ってもらったことが嬉しくて…」

「いいのよ。断る理由にしたかっただけだから。そろそろ着替えさせてもらうね」


梅ちゃんはそういうと、目隠しされているスペースに入っていく。

助けたというのに、特に恩着せがましというわけでもないということに私は憧れを強くもつ。

さすがは、アイドル。

そんなことを思ってしまうのだった。

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