一歩前に進むなら 3
何を言えば、天音は納得してくれるのだろう。
だって私は、アイドルになれるはずがないのだから…
そう思った私は、再度天音に声をかける。
「天音。さっきも言ったけどアイドルにはなれないよ」
「どうしてでしょうか?」
「だってそれは、病気をもっている私がアイドルをしてしまったら、アイドルを頑張っている人にも、アイドルを目指している人にも迷惑をかけるから…」
「それは、誰が決めましたか?」
「それは、その私が…」
「でしたら私が言います。花澄がアイドルにならないのなら、私が困ってしまいます」
「どうして?」
「だって、私がアイドルとして最初のステージをこなせたのは、花澄がいたからです」
「わかんないよ。天音だったら、うまくできていたかもしれないよ」
「そんなことありません!」
天音が大きな声でそう言う。
私はびっくりしてしまう。
驚く私に対して、天音はさらに言葉を続ける。
「私は、あの日…別のことを考えていました。花澄が私の家で見た親のことです。どうしていいのかわからなくなって、気づけば花澄とやっていたダンスも忘れてしまうくらいでした。だから、ステージがうまくいかないというのは当たり前だったはずです。でも、花澄が来てくれました!だから、私は頑張ろうって思うことができたんです」
「そうなんだ…」
「私は、花澄のおかげでステージを成功させて、親に言えました。今度は見に来てくださいって…だから、花澄!」
「…」
「私を助けてください!」
「…」
「花澄がなれない理由を言うのなら、私は花澄がなれる理由を言い続けます」
「どうして…」
「花澄がステージで踊っている姿を見たいからです!」
天音の言葉はただ、真っすぐだった。
私の言葉はどうだっただろうか?
何かを挑戦するたびに、私は病気だからと言ってしまうの?
それで、本当に私は後悔しないの?
本当はやりたい…
でも…
「ごめん、ごめんなさい。天音…私は…」
そんなあいまいな言葉しか出てこない。
私だって、本当はやりたい。
それは、天音のステージに乱入してしまったときに感じた高揚感だった。
みんなが盛り上がっている。
それを肌で感じて、余計に盛り上がる。
あれを知れば、私はもっともっとやりたいと思ったのに…
それを感じれば感じるほど不安も大きくなる。
心臓がぎゅっと掴まれてしまうような不安が…
いつ、私の病気が自分自身に牙をむいて、踊れなくなってしまうんじゃないのかって…
天音が言ってくれる言葉は、嬉しい。
私だって、わかっている。
でも、私がアイドルにもしなってしまったら、迷惑をかけてしまうんじゃないのかって、いつも思っている。
だから…
いつの間にか、私の目から涙があふれていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。花澄…」
「ううん、私が…」
「いいえ、無理に誘った私が悪かったのですから…だから、明日の放課後時間を私のためにください」
「どういうこと?」
「それは、そのときのお楽しみです」
天音はそう言葉にすると、私の顔を優しくハンカチで拭う。
「花澄。かわいい顔が台無しですね」
「天音には、言われたくない」
「そうですね。では、私は帰らせていただきます」
「うん…」
天音は、何かを決心したようにして帰っていく。
私は、それを見送った。
その日は、それ以降ダンスもする気がおきなくて、ただ私がどうすればいいのかを考えていた。




