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私のアイドル  作者: 美海秋
二章 挑戦編

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再熱する想い 3

「次はどこに向かうんですか?」

「お楽しみと言いたいところですが、時間も時間なので、少し自主練をと思いまして」

「自主練ですか?」

「はい。そこの設備を一緒に見ましょうか」

「わかりました」


再度車内で行先を聞いたところ、今回はレッスンスタジオに連れて行ってもらえるということがわかった。

レッスンスタジオと聞いて、これまでよりもさらにテンションが上がってしまう。

まだシノの人気がなかったころに、お姉ちゃんに連れてきてもらったことがあったけれど、まだそのときは病気になったばかりで詳しく見ることもできなかったことを覚えている。

でも、今なら違う。

レッスンスタジオを隅々まで見ようと思ってしまう。

それに…

私はチラッと車の窓から外を見ている信さんを見る。

先ほど言っていた自主練という言葉が気になっていた。

今絶賛人気が上がってきているクローバーのリーダーである、信さんのダンスを練習とはいえ、見ることができるのだからだった。

それがわかっていて、テンションが上がらない人がいないはずない。

私はそわそわとしながら、スタジオに着くのを待つことになった。


「ここに…」

「はい。ここにはなんでもありますから」


さすがは人気のアイドルを抱えている事務所ということなのだろう。

連れて来られたのは、事務所で、その中にレッスンスタジオがあるというのが、大きさからわかる。

私は信さんに連れられるようにして、中に入って、説明を受けていく。

昔、お姉ちゃんに連れてこられた場所と違っていたこともあって、中を見ると新鮮に感じる。


「はええ…」


感心して、思わずそんな声が腑抜けて出るくらいには、驚きがあった。

幾つかの場所を案内してもらった後に、ようやくレッスンスタジオに案内される。


「ここは、今日は私たちが取ってる場所です」

「どういうことですか?」

「ええっと、同じ事務所の中でも、基本的には施設を使うときに、被らないようにするっていうのはわかりますか?」

「なんとなく…」

「こうやって、予約をしておくんです」


そう言って、信さんは私に携帯の画面を見せる。

画面に書かれていたのは、このレッスンスタジオに書かれていた番号と、その下にはびっしりとスケジュールが書かれていた。

これが、予約表ってことなんだ。

それにしても、ここまでびっしりと予定が詰まってるんだ。

予定にほとんど空きがないということに驚く。


「驚きましたか?」

「はい。これだけ、みんながレッスンスタジオを使っているってことですよね」

「そうですね。みんな頑張っているということです」


信さんはそう言葉にすると、手に持っていた飲み物を一口飲むと、壁際にそれを置き、中央に移動する。


「手伝ってもらってもいいですか?」

「はい」


私は手招きによって、信さんに向かっていく。

当たり前のように、体を倒すがかなり柔らかい。

後ろから押すことには押すけれど、押す必要がないくらいには、柔らかい。

その後も、ストレッチを繰り返す信さんの体はかなり柔らかい。


「すごい、柔らかいですね」

「そうですね。これくらいはしておかないと、怪我をしてしまえば、踊れなくなってしまいますからね」

「確かにそうなのかもしれません」


私はそう返事をしながらも、この状況に興奮を隠しきれないでいた。

当たり前だけど、目の前にいるのは私が知っているアイドルなのだ。

そして、そんなアイドルの信さんからはいい匂いがする。

吸い寄せられるようにして、私は思わず体を密着させてしまっていたときだった。


「あ、あの…」

「あ、すみません」

「べ、別にいいのですが…」


近づきすぎたのが、よくなかったのか、信さんは顔を赤らめてしまった。

ただ、そんな姿もすぐに収まり、信さんはすくっと立ち上がる。


「よし、それじゃあ、幸來さん。ダンスを見ていきますか?」

「いいんですか?」


信さんに、嬉しいことをいわれて、私は舞い上がる。

まさかのダンスを見ていいと言われたからだった。

ここで踊るということなら、特等席で見れるということなので、自分の中にあった興奮してしまうのをなんとか抑えると、邪魔にならない位置に移動する。

私が邪魔にならない位置に移動したのを確認した信さんは、持っていたリモコンを操作する。

少しして、音楽が流れだす。

これは!

この前あった、クローバーの新曲!

私の乱入事件があったときの曲だった。

実は乱入したせいで、新曲でどんなダンスをしていたのかを見ていなかった。

だからこそ、わくわくも倍増する。

すぐに信さんが動きだして、それと連動するようにして、音楽が流れる。

歌は口ずさむ程度だというのに、その少し聞こえるだけの声で、うまいというのがわかる。

そして、ダンスは案の定というべきか、キレキレだった。


「すごい、すごい…」


見ていた私の口から思わず声が出てしまうほどに、そのダンスは凄まじいものだった。

集中して見ていたせいもあるのか、三分ほどのその曲はすぐに終わってしまった。


「どうでしたか?」

「すごいです…まずは、動きですね。一つ一つの動きがびしっと決まっていて、綺麗でしたし、びしっと決めていることで、流れるような動きなのに、メリハリがついていて、後は後は…」


そこで、私は気づく。

思わず近づいて、魅力を語っていたということに…

私は慌てて離れる。


「ご、ごめんなさい」

「少しびっくりしましたが、大丈夫です」

「それなら、よかったのですが…」


興奮しすぎてしまった。

そのことに反省をしようとしたときだった。


「幸來さん」

「はい」

「次は、幸來さんが、踊ってみましょうか?」

「え?」


驚いている私に対して、信さんは笑顔で、こちらを見ているだけだった。

どういうこと?

訳が分からなくなっているうちに、信さんは問答無用で音楽を流すのだった。


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