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私のアイドル  作者: 美海秋
二章 挑戦編

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再熱する想い 2

「終わったー」

「終わったねー」

「お疲れ様です」

「もう、だから固いよ、幸來ちゃん」

「そうですよ。お姉ちゃんに対応するときは、もう少し雑でいいですからね」

「何を言ってるのかな、(しの)ちゃん」


ノエさんは、そう言って、信さんを呼ぶ。

呼びなれない名前に、私が戸惑っているとノエさんがそれに気づく。


「ふふふ、信ちゃんの名前を知らないんだね」

「はい、芸名しか知りませんでした」

「うんうん、素直だね、幸來ちゃんは…そんな幸來ちゃんには、ノエたちの本名を教えておこう」

「本当ですか?」

「うん、だからお昼にいっこっか」


ノエさんに誘われる。

私は、信さんの方をチラッと見ると、少し申し訳なさそうにしている。

これは、断るのは絶対にダメなやつだろう。

まあ、ファンとして、アイドルの知らないことを知れるというのは、嬉しすぎる出来事なので、断るという選択肢は最初からなかったけど。

そして、着いたのは、楽屋のような一室だった。


「ここは?」

「お弁当が置いてあるんだよ、ほら!」

「お姉ちゃん、中身が入ったままで傾けないで、こぼれるから!」


嬉しそうにお弁当を見せてくれるノエさんを、信さんは叱る。

ノエさんは叱られたというのに、どこか嬉しそうにしながら、お弁当の中身を落とすことなく手に持ち直すと、真ん中に設置されていた椅子の一つに座る。


「やっぱりお弁当は、彩りがいいと可愛いよね」

「幸來さん、これ」

「ありがとうございます」


さっさと開けて食べようとするノエさんを見ながら、ため息をつきそうになる信さんは、私に一つお弁当を渡してくれる。

三人とも同じお弁当ということもあって、中身を交換するということはなかったけれど、アイドルと同じお弁当を食べているというのは、ファンとして以下略である。

私がそんなことを考えながらも、食べていると、信さんが少し話しをしてくれる。


「先ほどの、話しなのですが…」

「はい」

「ちゃんと、紹介するのが遅れてすみません。私は山本信(やまもとしの)、そして…」

「お姉ちゃんの乃絵(ノエ)だよ」


二人に挨拶されて、私も慌ててする。


「花澄幸來です」

「「知って(ますよ)るよ」」

「そうですよね」


言っておいて、確かにそうだったと思ってしまう。

そもそもここに誘われたのは、信さんが私のことを知っているから成立することなのだから。

二人の名前もちゃんと知ったところで、私はこの後について聞いてみることにする。


「この後はどういう予定になるんですか?」

「この後はですね。取材になりますね」

「取材ですか?」

「うんうん、乃絵と信ちゃんが表紙を飾る初めての本だからね。そこで、乃絵と信ちゃんが、姉妹だっていうことも含めて二人の秘話を話すんだよ」

「そ、それは、楽しみですね」


聞いた内容は、すぐに興味津々になる内容であった。

少し時間がたって、部屋がノックされる。


「ご飯、食べ終わりましたか?」

「うん、食べたよ」

「それでは、取材の方を連れてきますね」


マネージャーの人から、言葉が聞こえ、少しして、取材をする人たちが入ってくる。

私は、邪魔にならない位置で座って、その話しに聞き耳を立てる。

聞き耳を立てた内容というのは、二人を知っている人たちからすれば、かなり興奮するようなものばかりだった。

思わず、そんなことが過去の二人に!なんて、声を出してしまいそうになるくらいの内容だった。

少しして、最後に二人の話しが終わり、仲良くトイレに行ってしまったときだった。

マネージャーの人がこちらに近づいてくる。


「あの…」

「は、はい」

「ここで聞いた内容というのは、誰かに話さないようにお願いします」

「はい。わかっています」

「本当ですか?」

「え?」

「わかったっていう人の方が怪しいですから…まあ、いいですけど」


その後も、何か予定表のようなものを見ながら、ブツブツと独り言を言っている。

えー…態度わる…

でも、こういうのはあるあるって聞くよね。

二人が出て行ったことで、態度が悪くなったマネージャーに、私は心の中でそう思ってしまう。

確かに、私が他の人に話してしまうようなこともありえるから、釘を刺しておくというのは理解できるけれど、もう少し言い方というものがあるのではないのだろうかと、考えてしまう。

ただ、そんな悪い態度というのも二人が部屋に戻ってくると消えてしまう。


「さあ、次に向かうよ、次だよ!」

「お姉ちゃん、もう少し大人しくして…」

「元気があるうちになんでもしないと、いけないよ、信ちゃん!」

「ノエさん、そこまでです」


テンション高く会話をする、ノエさんを遮るようにして、マネージャーが入ってくる。


「何々?マネちゃん」

「何々じゃありません。次、ノエさんには別の予定がありますからね」

「そうなの?」


マネージャーの言葉に、ノエさんはとぼけたように言うけれど、すぐに言葉を改める。


「ごめん、ごめんよ。マネちゃん。そう怖い顔をしないで」

「そう思うのなら、させないでください」

「わかったよ、しょうがないなあ」


ノエさんは諦めたようにそう言って、少しの荷物をもって立ち上がる。

名残惜しい感じで、ゆっくりと扉に向かっていく。


「じゃあ、また会おうね、幸來ちゃん、信ちゃん」

「家ですぐ会えるから」

「はい」


返事をする私と、あきれたように言葉を返す信さん。

少しして、私たちも移動することになった。


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