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私のアイドル  作者: 美海秋
一章 出会い編

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目指すアイドル像 2

花澄さんとのお風呂も終わり、寝てもらう部屋を紹介したあとに自分の部屋を離れた私は、一人で練習をしていた。

お風呂上りで、普通であれば後は寝るだけになるはずだった。

だけど、納得するパフォーマンスには届いていない。

それがわかっているからこそ、練習をしていた。

花澄さんに言われたことの意味というのを理解できていない。

見せられた動画にあった笑顔。

それは、ただアイドルとして、一人よがりに楽しんでいるだけではと思ってしまう。

ライブのときに見せた笑顔というのは、確かに大事なことなのかもしれないけれど、それよりも重要なことというのがパフォーマンスだと思っている。

完璧にできたからこそ笑顔というものがでると考えているからだった。


「はあはあ、どうしてうまくいかないの?」


花澄さんに教えてもらって、ようやくうまくなってきたと思っていたのに、実際はあれ以降の成長は全くなかった。

何度も練習をしていくうちに、余計に態勢が崩れて他の部分すらもよくなくなっている。


「く…」


何度もやっていくうちに余計に自分がわからなくなる。


「なんで、どうして…」


口からは弱気な言葉ばかりが出るが、それを慰めてくれる人も同情してくれる人も、当たり前のことではあったがいない。

私はただ、それでも成功するまでは休むわけにはいかない。

そう思って、練習を繰り返す。

ただ、私自身は練習に夢中で、何も見えていなかった。

滴り落ちた汗に靴が滑る。

態勢をなんとか整えようとしても、疲れた体ではうまくいかない。

無理に足を出せば、なんとかできるのかもしれないけれど、それをしてしまえば足を捻る可能性もあった。

そうなるくらいなら顔から床に…

そう思って目を閉じる。

大きな衝撃を覚悟していたけれど、トンという柔らかい感触が体を包む。

目を開けると、花澄さんがいた。


「すみません」

「はあ、電気がついているなって思って来てみれば…」


ため息をつきながらそう言われて、怒られると思った私は身構える。

ただ、天音がされたのは、頭を優しく撫でられるというものだった。

わけがわからなくて混乱していると、ゆっくりと花澄さんに言われる。


「私も言い方がよくなかったのかな、やっぱり…」

「そんなことはありません、悪いのは私ですから…」

「でも、それなら天音をこんな状態にさせてないでしょ?」

「これは、私が勝手にしたことです。だから、花澄さんがそういうのは違います」

「えー、それはそれで天音を教えている師匠としては悲しいんだけど…」

「えっと、えっと…」


花澄さんにそう言われて、私は何も言葉がうまくでてこなかった。

こうなっているのは、自分自身のアイドルとしての才能がないだけで、花澄さんのせいではないというのに…

そんなことを考えながらも、撫でられている私はようやくあることに気づく。


「花澄さん、そろそろ離していただけませんか?」

「どうして?」

「私の汗が花澄さんについてしまいますから…」

「確かにそうだね、ついちゃうかもね」

「汚いですよ」

「でも、離したら離したらで、また無理な練習を始めちゃうんだよね」

「そんなことはありません」

「だったら、私と一緒に寝てもらうからね」

「え?」

「寝てもらうよ」

「はい」


一緒にお風呂に入ったことで、花澄さん自身も遠慮というものがなくなったのか、それとも私が無茶なことをしていたせいなのか、いつもよりもかなり強くそんなことを言われてしまう。

片づけをした私は、花澄さんと着替えをして、布団を隣合わせにする。

花澄さんの布団を扉の前にすることで、私が部屋を出ていこうとすれば、バレてしまうという徹底ぶりで、さすがにその状態で何かができるというものでもなく、それも先ほどの無茶もあってか、気づけば眠りについていた。


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