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私のアイドル  作者: 美海秋
一章 出会い編

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目指すアイドル像 1

「あの、花澄さん」

「うん?」

「一緒にお風呂入ってもいいでしょうか?」

「え?どうして?」

「そ、その…少し聞きたいことがありまして」

「いいけど」


急な出来事で、思わず驚いたけれど聞きたいことがあると言われれば、納得はする。

私と天音は二人でお風呂に入ることになった。

そうはいっても、さすがに一緒にお風呂に浸かるということはできないので、お互いに体を洗っている間に交互に浸かるようにする。

先に体を洗った天音がお風呂に入ると同時に私と入れ替わって、頭などを洗っていく。

天音は話しがあると言っていたけれど、特に何かを話すということはない。

シャワーの水が滴る音がする中で、天音がゆっくりと話を始めるのが、聞こえる。


「花澄さん」

「なに?」

「花澄さんは、笑顔だけで何かができると思っていますか?」

「そうだね。その意味があるなら、思ってるね」

「そうですか、私はその意味がよくわかりません」

「そうなの?」

「はい。笑顔は楽しむことででるものだということはわかるのですが、それがアイドルとしての必要な条件だとは思いません」

「そっか、じゃあ天音が見てきたアイドルたちは笑っていなかったってことなのかな?」

「そういうことではありません。でも、アイドルが楽しむのではなくて、アイドルは楽しませるものだということだと思っています」

「それこそ、私も思ってることだけど、自分が楽しめてないことに対して、同じように他の人に楽しんでもらえるのかって疑問に思うんだよね」

「ですが、それは…」

「そんなにうまくいくことじゃないって考えているのかな?」

「はい」


天音の言うことはわかっている。

それこそ、私は天音と違ってアイドルにすらなっていない、アイドルが好きなだけな女だ。

だけど、だからこそ私は思ってしまう。


「アイドルとして、やっていることに、少しでも楽しめない人が他の人を同じように楽しませることができるのかなって…」

「それは…」

「それに、よくあるでしょ?感情は連鎖するって」


そう、これは私自身がよく思っていることだった。

楽しい。

他の人にそう見えているのであれば、同じように楽しみを共有することができるのではないのかというもの。

隣にいる人が笑えば、同じようにしてつられて笑う。

そんな状況になるのではと、考えてしまう。

それが、どんなに理想論だとしても…

ただ、私は思う。


「天音はどうするのが自分の正解だと思っているの?」

「私は前も言ったように、アイドルとしてパフォーマンスを完璧にして、それを見せることが、アイドルとして一番重要なことだと思っています」

「それが、どれだけ自分一人よがりのことだとしても?」

「そうならないためのパフォーマンスです」

「そっか、だったら完璧になるために頑張らないとね」


私はそう言葉にする。

天音は頷いたが、私はただもう無理なのかもしれないと考えてしまった。

ステージは失敗する。

それがわかっていながらも、私は天音に笑顔を向けるのだった。


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