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私のアイドル  作者: 美海秋
一章 出会い編

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お泊り特訓 4

天音の家につくまでに、お互いに話はしない。

先ほどのこともあって、お互いにどう話しをしていいのかわからなくなってしまったという感じだった。

そんなことを考えながらも、天音の家に着いたけれど、案の定というべきか、天音の家は私の家よりも大きい。

普通の家と豪邸のちょうど中間くらいの大きさで、驚いたのは防音室があるところだった。


「こっちに来て」

「う、うん…」


さっきの言い合いから、天音の言葉は少し棘があるものに変わった気がするけれど、私は天音に連れられるようにして、防音室に入った。


「ここが防音室…」

「はい。ここで特訓をします」

「それは、いいんだけど」

「なんでしょうか?」

「なんでもない」


ギロっと天音に見られて私は思わずそう返してしまう。

それくらい、今の天音には迫力があった。

そうはいっても、しっかりと特訓はするらしく、天音は耳にイヤホンをつけると、一人でダンスを始める。

言い争いのせいで、仕方ないことかもしれないけれど、天音は一人でする。

私は、何かを言うこともなく、そのダンスを見ていた。

あれから何度も練習したというのが、天音のダンスからわかる。

ほんの少し前まで、少しの拍子にリズムが崩れるとうまく踊れていなかったのが嘘のように今はしっかりと踊れている。

その姿を見て、成長を感じながらも、ダンスがうまくいっていない問題の場所に差し掛かる。

ダンスについてはかなりの練習をしてきたのか、完璧に近い。

でも、動きは相変わらず激しすぎる。

特に、どうしてもそのダンス中には屈伸のような動きをするので、ダンスと同時に歌を歌えば、屈伸による上下運動によって、声が震えたりしてしまうだろう。

これをなくすために必要になってくることは、大きく動かないこと。

これについては、天音のことを見ていればわかる。

絶対に納得しないことだから、中途半端なダンスをしたいとは言わないだろう。

次にやれることはダンスのタイミングをずらす、もしくは組み合わせを変えるというものになるけれど、それも天音がやると言わなければできないことだった。

それ以外にいい案と言われても…

正直なところ、思いつかなかった。

そもそも、天音が今回デビューをするときに使用するシノの曲は、シズとノエというアイドル二人組の曲で、今回天音がしようとしているのは、そのいいところをとったものであり、一人で踊るのであれば一番可愛くてかっこいいダンスになる。

ただ、それはダンス限定というもので、歌も一緒にと考えると難しい。

喧嘩する前であれば、私はうまくいっていない天音に対して、優しい言葉をかけていたはずだ。

でも、今はそうは思わなかった。

うまくいっていない、満足をしていない天音に対して、なんて声をかけていいのかもわからなくなっている。

あんなことを言ってしまったけれど、天音が頑張っているのは、一番近くで見ていた私は知っている。

だからこそ、うじうじとしている天音を見ていられなかったかもしれない。


「あー、考えがまとまらない!」


天音がイヤホンをつけているのをいいことに、私は一人でそんなことをつぶやくと体に力を入れる。

こういうときにやることは決まっていた。

私も天音と同じように踊るしかない。

私自身も無駄に悩むことに関しては苦手だから、体を動かしてすっきりした後に考えるのが一番だ。


「それに、天音を見てたら、私も踊りたくなったしね」


そう言葉にする通り、踊る曲は天音が今踊っているものと同じもの。

歌は口ずさむくらいにしておいて、ダンスをしていく。

シノの曲はダンスも歌も普通のアイドルよりもかっこいい系のものが多く、デビュー曲ですらもダンスはかなり激しい。

だからこそ、意識をするのはキレ。

シノのように激しいダンスを踊るには、かなりの練習がいるというのもあるけれど、激しくしすぎて、次の動きに支障がでては、流れとして悪くなってしまう。

それに、私自身があまり激しくしても体がついてこないというのもある。

当たり前のことだけど、帰宅部だからで、少しはプールなんかで運動はしていても、運動部のような体力はない。

それでも、動きさえ意識をすれば、大きな動きをしなくてもダンスとしては成立する。

まあ、こんな動きじゃ、天音のことを満足させられるものにはならないけれど…

結局のところ、一曲踊り終わっても、いい案というのは見つからなかった。


「ふう…」


私は踊り終えたので、休憩をしようと思いながらも天音の方を見ると、目が合う。

ただ、目が合ってもすぐにそらされてしまう。

見てたってことだよね。

その行動に、私は思わず素直じゃないなあと思ってしまう。

でも、見ていても、話しかけてこないということは、先ほどのことをまだ気にしているということなのだろう。

どうやって声をかけるのが正解なんだろう?

初めての経験すぎて、わからない。

それでも、このままじゃいけないというのは、わかっていた。

なんとかしなくちゃ!

そう思って、考えもなしに天音に近づいたところで、私は足をもつれさせる。


「あ…」

「え?」

「「きゃあああああああああ」」


私はそのまま天音の方に倒れてしまった。

私は倒れると思って、天音は倒れる私に驚いて悲鳴を上げる。

床に当たる衝撃を覚悟していた私だったけれど、その衝撃はなかった。

衝撃がくると思って閉じていた目を開けると、天音に私は支えられていた。


「あ、危なかった。大丈夫ですか?」

「う、うん、ごめん」

「いえ、その怪我がなかったのなら、よかったです」


天音はそう言って安堵の顔をする。

でも、すぐに思い出したかのように、顔をそらし、私のことを立たせる。

怒っていますという風な行動に、そこまであからさまにしなくてもと思う一方で、このままで本当にいいのかと考えてしまう。

せっかく特訓をしにきたのに、険悪なままで…

よくない。

こんな機会は今後起こるか、わからない。

それに、本当は天音との時間を楽しみにしていたのだから…


「「あの…」」


そして、お互いに声が被る。


「えっと…」

「花澄さんから…」

「ううん、天音から話してくれたらいいから」

「はい、それでは言わせていただきます」

「うん」


被ると思っていなかった私は、天音に先に話してもらうように言う。

天音はそらしていた目を私に向けて話しをするのだった。


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