お泊り特訓 2
どうしたらいいのか、それについて、私は悩んでいた。
オーディションに受かって、そこから私自身のアイドルとして、うまくできるようになるのだと思っていた。
それなのに、うまくいくどころか、酷くなっているのではないのかと思うほどに、レッスンを重ねるごとにどこかに違和感を覚える。
うまくいっていないところを意識するあまり、他がよくなくなりさらにおかしくなる。
そんな無限ともとれるコンボによって少しあったはずの自信もほとんどなくなっていた。
「でも、今日は帰ってからは、特訓ができる!」
ここ数日うまくいっていないせいで、ダンスを教えてくれている講師の人との関係も、またぎこちなくなってしまった。
うまくいかなくなってしまったダンスをなんとかするためにも、私は今日の特訓に期待していた。
私自身が、再度変わるだろうと…
だからこそ、いつもより短いレッスンを終えて、私は待ち合わせ場所の駅に向かった。
電車に乗ってすぐには、特に気づくことはなかったけれど、少ししてその存在に気づく。
あれって、高南梅さん?
そこにいたのは、あの高南梅さんだった。
気づいたのは、高南さんが先に気づいていたのか、ずっと私のことを見ていたからだった。
まさか同じ電車に乗っているとは思っていなかったので、どう反応していいかわからない。
そんな私に、ゆっくりと高南さんは近づいてくる。
「こんな時間に、どこへ向かっているんですか?」
「それは、自分の家にですけど…」
「もう帰るということ?」
「そうですが…」
「どうしてですか?明後日の朝にはステージが待っていますよね。家に帰って練習をするということですか?」
「えっと、それは…」
高南さんにそう言われても、どう返していいのかわからない。
素直に言ってしまえば、同級生にダンスがうまい子がいて、その子に練習を見てもらうという内容だけれど、高南さんにそんなことを言ってしまえば、私が冗談を言っているように思われるかもしれない。
それに、アイドルとして活躍している高南さんからすれば、一般の同級生に教えてもらうことを考えると、バカにしていると思われるかもしれない。
そんなことをぐるぐると頭の中で考えているうちに、高南さんはため息をつく。
「何も答えないということは、もうステージに向けての練習はしないということですか?」
「それは…」
「ああ、そうですよね。違う事務所である人には教えられませんよね」
「そ、そういうことではないのですが…」
本当にどう説明したらいいのかわらかなかった。
そもそもどうしてそんなに気になるのかが、わからない。
他の事務所がどういう練習をしているのかが気になるのだろうか?
そう考えても、よくわからない。
だからといって、下手なことは言えない。
ただ、気まずい時間は長く続かない。
それは、私が降りる駅に着いたからだった。
アナウンスがなり、扉が開く。
私が動けないでいたところ、高南さんに言われる。
「降りなくていいのですか?」
「お、降ります」
「はい」
私は、逃げるようにして電車から降りる。
そして、花澄さんがいることも忘れて、駅から逃げるようにして家に向かっていくのだった。




