5話 姉は五大女神の1人で聖女なぐーたら女
怒涛の1日が終わり家に帰り着く。
もはや関わり合うはずの無い存在に成り下がったと思っていた元カノの冬真静留に絡まれ、頼み事まで押し付けられた。
個人的には気乗りしないこの頼み事だが今にして当時あの女にフラれた時の復讐に使えると思い至った。
あの女にフラれた時の苦しみをあの女にも味あわせてやれる…そこまで思い、それが余りにも下らない事だと思い至る。
宮藤を利用すればあの女…冬真静留に復讐するのは簡単だけどそれには驚く程に興味がわかない。
俺にはもう冬真静留に対する復讐心が以前程残されていないようだ。
そんな事より宮藤を取り巻くハーレムが修羅場を迎えている所が見てみたい。
阿鼻叫喚の地獄絵図、それはきっと端から見ているだけなら最高の娯楽となるだろう…そんな事を思いながら俺は家のドアを開く。
家のドアをくぐり、リビングに入ると姉がだらしない姿でテレビを見ていた。
俺の姉、足立桜花は学校内で五大女神の1人にカウントされ、聖女なんてあだ名で呼ばれている美少女だ。
自分の姉に美少女なんて表現は使いたく無いが実際に他の4人と比べても遜色のないルックスと色気を持っているのだから仕方ない。
誰に対しても別け隔てなく平等に接する姉は人をオタクだとか不良だとかで隔てたりせず平等に接する。
また困ってる人がいれば率先して助け、面倒な事にも身を粉にして挑む。
そんな姉の姿を見た誰かしらが聖女と呼びそれが浸透し広まったらしい。
またおっとりとした態度や敬語を基本としたコミュニケーションは姉の聖女感を補完している一つの要因らしい。
また血の繋がった姉ながら目のやり場に困る体付きをしていて…出る所はとことんまで出ているのに腰はきゅっとくびれている。
無駄な贅肉が無い完璧なグラビア体型をしているのだ。
有り体に言えばおっぱいがデカいのだ。
3年とはいえ、高校生であのデカさは弟ながらあっぱれだと思う。
まぁ…そのおっぱいのデカさと敬語を主とした話し方やおっとりとした態度、誰に対しても平等に優しく慈愛に満ちた姿は男達の性を刺激する。
所謂バブみを刺激し一部の男子の性癖を歪めている。
とここまでは姉の表向きな概要だ。
「あぁ智春〜帰ってたの?冷蔵庫からホワイトソーダ取ってよ」
パンツから溢れ出た肉付きの良いケツをボリボリ掻きながら姉はそんな事をいう。
その姿からは聖女のせの字すら感じる事は出来ない。
現在姉はノースリーブに短パンという極めてラフな格好でソファに寝転がっている。
発育の良い無駄にデカい胸がノースリーブからはみ出そうになっている。
クラスの男子が見れば目の色を変えて狂喜乱舞する事間違いなしだろうが俺にはただ、だらしのない姉の素の姿が目に映ってるだけだ。
俺の姉はグータラ女だ。
面倒くさがりで自分の利となる事以外は絶対にやらない。
掃除や洗濯も基本は親や俺に丸投げで、家での姉は徹頭徹尾駄目人間の模範を地で行っている。
そのくせ要領はよく、物覚えもいい天才肌だ。
見た目もよく頭の回転も早い。
まさに超人的スペックのチート女…
それが俺の姉だ。
天は姉1人に過剰なまでの贔屓をするのだ。
俺も俺の両親も平凡なフツメンなので姉が突出した美貌を持ってるのが昔から違和感しかなかった。
実は血が繋がってないのではないかなんて疑いもしたが父さんがれっきとした親子だと断言してくてたので俺はもう疑うのを辞めた。
まぁ…ともあれ…それだけ能力に開きがある姉は学校と家ではキャラを使い分けている。
そして学校での聖女、五大女神としての姉は偽りで家でのグータラ女が姉の素の姿である。
「ほら、ここに置いとくよ」
「コップに注ぎなさいよ…まったく気がきかないわね」
「そのくらいは自分でやれよ、」
「めんどい…智春がしてよ」
「はぁ…学校と家で態度が全く違う…今更だけどほんと…別人だな…」
「家にいるのにどうして外行きのキャラ維持しなくちゃならないのよ…家の中でくらいリラックスしてたいわよ…学校じゃ炭酸ジュースも飲めないのよ?息がつまるわ…」
「なら辞めればいいじゃん…」
「はあ?馬鹿なの?今更辞めれるわけないでしょ」
「自業自得だろ…最初から猫なんか被らなければよかったのに…」
「別に面倒だけど後悔はしてないわよ…このキャラのお蔭で雅人君の気を引けてるのは事実だしね」
「まぁ…だね…宮藤のなかでは5女神の中で姉ちゃんが一番リードしてると思うよ」
「そうでしょ!そうでしょ!ふふ、やっててよかったわ清楚キャラ…でゅふふふ」
「でゅふふふ…って……はぁ…」
恋愛シミュレーションゲーム…つまりはギャルゲーなどでは幼馴染キャラは鉄板だ。
世の中のオタクはこの幼馴染というキャラに一定の願望と夢…ロマンを見出している。
まただいたいのギャルゲーにおいて幼馴染キャラというのは大抵主人公とは結ばれない事が多い。
だからこそオタクは俺が幼馴染ちゃんを幸せにしてやる!したい!と願望を持つ傾向が強いと俺は勝手に思っている。
でなければ幼馴染が主人公を裏切る幼馴染NTRとかのジャンルがここまで人気になるはずがないからだ。
あれは俺を裏切る筈がないと絶大な信頼を寄せている幼馴染が裏切るという喪失感、怒り、悲しみ、虚しさ、空虚さがあるからこそあれだけ流行っているのだ。
オタクである宮藤雅人は当然この手のジャンルにも手を出している。
九条茜、宮藤のリアル幼馴染である彼女のほうが有利に宮藤争奪戦を進めれる様に思うかも知れないが実際にはそんな事は無い。
架空幼馴染とリアル幼馴染は明確に異なる。
幼馴染は空想…架空の存在だからこそいいのだろう。
つまりは九条茜は幼馴染という最大の利点が最大の弱点となっているのだ。
俺には幼馴染なんていないから想像でモノを言うしかないが実際に幼馴染なんていたらウザいだけかもしれないし、恋愛の対象からもっとも離れているのかもな…。
他にも生徒会副会長やら義妹等も宮藤のハーレムを構成するメンバーにふくまれている。
恋愛シミュレーションゲームにおいてこれらも幼馴染と拮抗するキャラ人気を持つがどうにも影が薄い。
そこにいくと姉の聖女キャラはどうだろうか…
普通は聖女なんて現代社会の学校にはいない。
聖女はファンタジーのキャラだ。
リアルな現代社会で聖女なんてワードは本来有り得ないと俺は思っている。
でも…リアルに聖女というキャラ性を持つ姉はこの現代社会で見事に聖女という存在を宮藤の前に顕現させる事に成功した。
聖女はファンタジージャンルにおけるヒロインになりやすい。
おしとやかで清楚な美少女。
それは宮藤が好む作品群にも多く登場し、宮藤自身も推しているキャラだ。
学校での姉の聖女ムーブは完璧だ。
誰にも別け隔てなく聖女のほほえみを絶やさずまた宮藤に対しても一定の距離を保ち、あくまでも平等を維持している。
美人でおっぱいがデカい清楚な年上お姉さん。
そんな皮を被った姉の聖女キャラは確かに宮藤から多くの期待と関心を寄せられている。
しかしそれ故に決め手にかけるのだ。
「ねえねえ…もういいかな?もう雅人君を押し倒しても良い頃合いかな?」
「宮藤に嫌われたいなら好きにすればいいんじゃね?」
「何よ!まだ駄目なの!?」
「聖女様が男を押し倒したら駄目でしょ?常識的に考えて」
そう聖女はあくまで聖女としてのムーブを維持してこその聖女なのだ。
押し倒すとか完全にアウトだ。
そんなの聖女と真逆の行動だ。
つーかビッチだ。
姉が他の5女神より一歩リードしているのは聖女キャラという一種の非現実感による物が大きい。
聖女からビッチにジョブチェンジなんてしてしまえば宮藤の関心は姉から一気に薄れ他のその他以下の存在になり下がるだろう。
「だったらどうすれば良いのよ!私もう我慢できないわ!」
「我慢しろよ…発情してんじゃねーよもう…はぁ…」
俺はため息をつきつつ姉に助言する。
「姉ちゃんはそのまま聖女キャラで距離感を維持しながら宮藤を誘惑してアイツをその気にさせる様に振る舞うしか無いだろ…絶対に姉ちゃんから手を出すなよ…そんな事すれば聖女キャラのバフがなくなって争奪戦レースから脱落だからな…」
「でも雅人君はとても純粋で奥手よ?手なんて出してくれるかしら?」
「そこは上手くやれとしかいえないな…でも宮藤も男の子なんだしチクチク攻めてればそのうち爆発する、その時に姉ちゃんのその無駄に馬鹿デカいπでホールドしてやればいいだろ?」
「…ふふふ…それもそうね…その時は…どゅふふ…」
舌舐めずりをする学園の聖女様。
こんな姿をみれば千年の恋も秒で冷めそうなものだ…。
それでもこの姉は5人しかいない女神で聖女なのだ。
既にプランが頭の中に構築されている事だろう。
せっかく天から与えられた才能を宮藤なんかの為に浪費するその様は無駄以外の何物でもなかった。
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