27話 面倒事
やった!やった!やった!
とうとう宮藤君と付き合える事になった!
しかも向こうから告白なんて!
これって両想いって事よね?
私だけの一方通行じゃない!
宮藤君と私は想いが通じ合っていた。
両想いだったんだ!
嬉しい!嬉しい!こんなにも嬉しいと感じる事がこの世にあるだなんて!今でも夢みたい!
何よりあれだけの美少女達に取り囲まれていながらその中から私だけを選んでくれたのだ!
それがこの上なく嬉しい。
と、この時の私は浮かれていて、前が見えて無かった…。
性格は純粋というより幼い、幼稚といっていい。
人に合わせる事を知らないようで我儘な所が散見された。
普段は自分に自信なさ気な態度なのに、そんな事で?と思う所で物凄く我儘で融通が効かなくなる事がある。
良く言えば自信家、悪く言えば身勝手で自己中。
この一週間で私は彼の粗、欠点なんて言葉では片付けられない汚点をいくつも見せられ…彼への恋心は氷の様に溶けて消えていった。
デートの日には平気で遅刻してくるし、
気合入れて着てきた服や髪型には反応無し。
それどころか私のちょっとしたミスを揚げ足どってドヤ顔を決めて来た時はぶん殴りたくなった。
私には興味のない話を永遠続けて、それを咎めれば拗ねて無口になる。
Vチューバとか興味もないし、気持ち悪いとすら思う。
あんなのネットキャバクラと何が違うんだ?
と、かえせば彼は黙りこくって拗ねるのだ。
彼と付き合う事で良かった事、それは彼が幼稚で稚拙な…悪い意味で年齢にそぐわない精神を持った人間だと言う事が判明した程度だ。
この一週間、本当に無意味な時間を過ごした。
彼といて、得られるモノなんて何も無かったのだから…。
人を第一印象で決めてはならない。
その教訓を得た事だけが唯一の利点だろう。
そうして冷静になれば、あれだけ彼に構っていたあの女達が今は嘘みたいに誰もいない。
今にして思えば、前までは当たり前にいた彼の取り巻きの美少女達もそれが分かったからこそ、身を引いたのかもしれない。
今は嘘みたいに誰も彼に執着していないのだ。
そう思うと私だけアレと付き合いアレの汚点を目の当たりにするまでアレの欠点を見抜けなかったという事になる。
「これじゃまるで私だけ馬鹿みたいじゃない…」
みたいじゃない…馬鹿なんだ。
皆は付き合う前から欠点に気づいたからこそ手を引いたんだ…私だけ…私だけ実際に手を出してから気づいたのは明らかに失態だし、私が愚かな証拠だ。
「はぁ…これじゃ…足立の方がまだマシね…」
マシどころの話ではない。
今、思い返すと足立はかなりの優良物件だった。
顔こそぱっとしないが清潔感はちゃんとあるし、女子への気遣いもちゃんとある。
人を立てる事も出来るし、空気も読める。
常に私を立てる事を無理の無い範囲で実現していた。
退屈ではあったが逆にいえば欠点はそれだけだ。
むしろあれだけの立ち回りが出来る男がこの世にどれだけいるだろうか?
足立は私に告白してきて、私はその時の気分で足立と付き合った…。
これでも私は異性に良くモテる。
告白されることはザラだし、良くある事だけども…だからといって誰でもいい訳じゃない。
宮藤みたいに雰囲気や空気感が良くても付き合ってから見える汚点や欠点などは必ずある。
人を印象で見るのは駄目だと今回私は痛いほど理解したんだ、同じ間違いはしたくない。
だから軽はずみに告白して来たやつの中から選ぶのは駄目だと思う。
確かに当たりもいるだろうけど…それを引ける可能性なんて如何程のものか…。
ほんと…足立は当たりだったんだと痛感する…。
別に彼氏なんていらないし、興味ないけど、あの宮藤と付き合ったのに一週間も経たない内に別れたなんてお話にならない。
どんな噂を流されるかわからないんだ。
私と宮藤が付き合ってるのは既に周知の事実だ。
皆知ってる…。
こういう時自分の知名度が嫌になる。
何もしてないのに私に関する情報が勝手に拡散されるんだ。
プライバシーは何処いった。
とりあえず宮藤と別れるならば、それらしい理由が必要だ。
フッてそのままでもいいがそれだと心象が悪い…。
心象を悪くしたままだと、どんな噂を流されるかわからない…。
どうしたらいいか…
そうだ…そうしよう!それが良い!
足立に言い寄られて仕方なく縒りを戻した事にしたらいいんだ!
前から付き合いのある足立にどうしても縒りを戻しいと言われ仕方なく付き合いを再会した事にすれば宮藤をフッてもそこまで不自然じゃない!
そうだ!
そうだ!
冬真静留はそんな身勝手この上ない考えの下、行動を開始した。
しかし彼女も頭ではわかっているのだ。
自分の考えが支離滅裂でめちゃくちゃな物だと。
こんな理由では周囲から尻軽女と指を刺されるのがオチだとも…。
しかし宮藤と別れたい一心でそのめちゃくちゃな方法がベストに思えたのだ。
だから彼女は足立と二人きりで話す場を設けていたかった。
自分の案が不安な彼女にとってはそれを足立以外に聞かれるリスクは避けたい、九条茜に聞かれる等、もっての外だった。
智君は冬真さんの指示に従い人気の少ない校舎裏の中庭に向かった。
まさかあの人から呼び出される事になるなんて…
半年前の彼なら跳んで喜んでいたんだろうな…。
私は校舎の影に隠れながら耳元にスマホをあて、2人の会話に意識を集中する。
こんな事もあろうかと私は智君とある約束をしていた。
雅君と冬真さんの相性は最悪。
別れる事は予測してた。
まぁ、思ったより早かったけど…。
そして、冬真さんは雅君を捨てて智君の所に戻って来る可能性もあるんじゃないかと私は考えた。
そこで私は智君にある提案をした。
もし、冬真さんが来た場合、Vサインの合図で智君側のスマホを私にかけたままにしてもらう様に言ったのだ。
ちなみに私が人差し指を立てた時は私が電話をかけたまま放置にする約束をしている。
今、私のスマホは智君のスマホと通話状態になっている。
つまり、冬真静留と智君の会話をスマホ越しに聞く事が出来るのだ。
そして会話が始まった。
私はスマホに意識を集中する。
「それで…お前…俺になんの用だよ…」
「……単刀直入に言うわ…貴方…私と縒りを戻しなさい」
「はあ?」
「貴方も嬉しいでしょ?当時はあんなに私に未練タラタラだったんだから…」
「いや…普通に無理だし、ありえないのだが…?」
「どっ!どうしてよ!私の事が好きなんでしょ?嬉しくないって言うの!」
「当たり前だろ?あんなふられ方して、どうしてまたそんな奴と付き合いたいって思うんだよ?」
「昔の事をいつまでもイジイジと…そんな事は些事と水に流せる甲斐性は身につけてもらいたいわね」
「勝手な事をつらつらと…もうお前に未練も恋も無い」
「嘘よ…アンタは私の事が大好きなの…未練たらたらよ…あんなに私に尽くしてたんだもの…そんな簡単じゃないでしよ?」
「ははは…本当…今更だな…確かに昔なら靡いてたかも知れないけど今はお前に靡く理由が一つもない、」
「まさか…私より九条茜の方が良いって言うの?」
「比べるのも烏滸がましいレベルアップだ…」
「あんな地味な女の方が良いの?頭おかしいんじゃないの?」
「奥ゆかしいって言うんだよ、それにお前みたいに厚かましかったり傲慢だったりもしないし理想の女に出会えたみたいで軽く感動してるレベルだよ。」
「………、ふーん…それにしてもまぁ…よくも元カノの前でそれだけ浮かれていれるものね。」
「お前には嫌味の一つも言いたかったからなぁ…」
「ちっ…」
それから彼女は悪態をついたりしていたけどある程度文句を言い終えたら今度は自分の悩み事について智君に相談を始めた。
「宮藤と別れたいの…アイツと別れるのに協力して…」
「どうしてだ?念願の宮藤と付き合えたのだろ?お前の願いが叶ったんじゃないのか?」
「あんたの方が数百倍マシだった…九条が宮藤よりあんたを選ぶのも当然の話だわ」
「どっちにしても俺の知った事じゃないな…勝手にやってろよ!じゃあな!」
「待ってよ私の手伝いをしなさいよ!」
「はあ?ふざけんな!」
そのまま智君は彼女と離れて校舎裏から出てきた。
私はスマホの通話を切り、智君に近づく。
「あ、茜、どうだった?」
「うん、ちゃんと聞こえてたよ。」
「そっか…」
「それにしても…冬真さん…私が思ってた数倍…非常識だね…あそこまでとは思わなかった…」
「…昔はあそこまで酷く……いや、昔からアレだったんだろうな…俺がちゃんと見てなかっただけで…」
「智君は悪くないよ、智君は何も間違ってないし…気にしたら駄目だとおもうよ、」
情ない話だ。
昔の彼女に良いように利用されそうになりそれを茜に慰められている。
本当に情ない。
俺が茜に慰められていると今度は別の奴が突然絡んで来た。
「宮藤…?」
「何…コレ…どう…どうなってるのさ!?」
宮藤は俺の胸ぐらに手をやり掴みかかって来た。
その顔は悪鬼の如く歪んでいた。




