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1話  ハーレム主人公と五大女神

  



ハーレム…トルコ語を語源とする造語らしく、1人の男に多数の女が取り巻き、イチャイチャにしている事をハーレムというらしい。

逆のパターンもあるかもしれないが今回は男を中心としたパターンを基本に話をして行きたい。


さて、まずは簡単な自己紹介からさせてもらおうと思う。

俺の名前は足立智春という。

クラス内で底辺の陰キャ…という訳ではないが別にカーストトップの陽キャとかでも無い…よくいる平均的な普通の男子生徒だ。

友達もそこそこいるし、成績も普通で、可も不可もなく運動も並程度には出来るけどそれだけの普通の生徒だ。

特徴がないのが特徴。

普通を絵に書いた様な男が俺と言う人間だ。


そんなんだから高校に入って初めて出来た彼女にもあっさりと捨てられた。

理由は他に好きな人が出来たから。

なんとも在り来りで普通の理由だ。

しかし普通の俺は普通に当時狼狽えて情けなく俺の下を去る彼女にどうしても駄目なのか?と懇願したりもした。


結果は今独り身なのが物語っている。

まぁそれはどうでもいい事だ。


さて最初のハーレムの話に戻るけど俺が在籍するこのクラスにはハーレムが存在する。 

そんなもんなんの権力も持たない子供ばかりの高校内で発生する訳もなく漫画やゲームの中にだけ存在するフィクションだと思うのが普通だけど実際にあるのだから仕方ないだろ?


兎にも角にも俺が所属するクラスの同級生である宮藤雅人には計5人の美少女が基本的に誰かしら取り付いている。

5人は表面的には仲良くしているがそれぞれ宮藤を取り合い牽制しながらも独自のコミュニティを活かしイニシアティブを得るための行動を取っている。


そしてこの5人はこの学校では五大女神なんて呼ばれ、女子校生ながら学内で決して馬鹿に出来ない数のファンを抱えている。

その人気は学内の枠を越えて外にまで影響してるくらいだ。


彼女等は自分のファンや信者を独自のコミュニティとして利用し、宮藤を我が物にせんと日夜目を光らせているわけだ。

さて…ではその宮藤雅人とはどんな奴か?

きっと絵に書いた様な爽やかイケメンチャラ男か女の母性とか庇護欲をそそるイケメンショタ君なのかと思えば俺と大差ない平凡なフツメンだったりする。


宮藤雅人

同クラスの生徒で顔は平均以上には整ってるものの、騒ぎ立てる程の大きな特徴はない。

身嗜みに特段こだわりは無いのか服は首元が伸びたもののだって平然と着るし、髪も寝癖をそのまま。

性格も優柔不断で決断力にかけるし、他の事には無頓着で他人の変化に鈍い。

なよなよしていて男の視点から見て、そこまで惹かれる要素は見当たらない。


そのくせ無駄に自信家で融通がきかないし、多少なり人を見下す様な態度も散見される…。


まぁ…コイツ自体は普通の…なんの変哲のない奴だ。

なのに何故かやたらとモテる。

しかもS級美女を基本に…もうマジで意味がわからない。


そんなだからか影ではコイツの事をみんなギャルゲ主人公だとかラノベ主人公とか呼んでいるが正直その通り過ぎて修正の余地は無いと思う。



コイツを特異点とした時空の歪みでも発生してると言われた方がまだ納得がいく。


そしてコイツには面白いくらいに男友達がいない。

当たり前だ。

学内で女神なんて呼ばれてる美女5人を取り巻きにしてヘラヘラとしているのだ、嫉妬や妬みの対象に友情が芽生えるきっかけなんて来る筈がないのだ。

だからかコイツは俺にやたらと話しかけてくる。



「足立君!昨日の転ゴブ見た?いやぁ面白かったね!」


「あぁ…深夜アニメでしょ?あれ、まだ見てないよ」


「そうなの?昨日はようやくヒロインと再会してさ!ゴブリンでありながらヒロインを通して人間と親睦を深めていくみたいなんだよ?来週はいよいよ街興しに踏み出すみたいで先の展開が楽しみだよ!」


「それはよかったね」



転ゴブとは転生したけどゴブリンとか俺詰んでね?を略したアニオタ界隈での造語だ。


今期の覇権アニメとして期待されてたモノで原作ラノベは凄い売れてるらしい。

ふわっとした情報しかないが売れた晴れたにあまり関心がないのだから仕方ないだろ?

兎に角ハーレム主人公様は所謂オタクで数少ない友人(と思われている)俺にこうして頻繁かつ一方的に話しかけてくる。


ちなみに相手が話の内容に関心があるかとかそんな事を気にする素振りは基本的にない。

その時自分が話したい内容を何回でも話し、他人の話は聞かないがコイツのライフスタイルだ。


先ほども見てないと言ってるのにガンガンネタバレしてくるので空気も読めない。

コイツに友達が出来ないのはハーレム主人公だけが理由では無いという事だ。


だからこそ解せない…何故S級美女にばかりコイツがモテるのか…。



「もぉ〜マサ君駄目だよ!足立君困ってるよ?」


「え?あぁ…茜か…いいだろ別に」


「足立君もごめんね?朝からマサ君がお世話になってます」


「あぁ別に大丈夫だよ」


「足立君は優しいね、ほらマサ君も足立君にお礼言わなきゃ?」


「はあ?お礼言う所どっかにある?」


「もぉ〜いいからいうのぉ!」



「あはは、」




突然俺達の会話に交ざって来た彼女の名前は九条茜、このクラスの学級委員長で宮藤雅人の幼馴染らしい。

甲斐甲斐しくこの男の世話をやいている所をよく見る、朝も迎えに行ってるらしいし行き来も基本的に共にしている。


まさに幼馴染キャラのお手本みたいなムーブを取る彼女は学級委員長でもありこのクラスみんなから慕われている。

狙ってる奴も多く、次期女神候補とまで言われる程に整った外見の美少女だ。

たまに委員会の仕事で宮藤と一緒に帰れない時はダメ元で宮藤に待ってて欲しいとか言ってるらしいがそれが叶ったことは基本的に無いらしい。



「朝からとても仲良しですね、お二人共、おはようございます、宮藤君、それと九条さんも」


「あっおはようございます!足立先輩!」


「……おはようございます…足立先輩」



突然現れ2人に話かけて来たのは俺と宮藤、九条の一年上の先輩の三年女子の足立桜花。


目を見張る巨乳と引き締まった腰回りから流れる様に盛り上がった尻。男好きする体躯は本当に高校生か疑われる程のスタイルで主に男子の視線を一手に集めている。

一年と二年からその落ち着いた物腰と世話焼きな性格から聖女なんて呼ばれているこの学校に5人いる女神の1人だ。




「ふふ、改めておはよう2人共…それと智春もね」


「ああ…」



そして俺の実姉である。

同じ名字な事から察している奴もいるだろうが基本的にスペックが違い過ぎるので俺達が姉弟だと知る者は意外に少ない。


「2人共私の弟とお友達になってくれてありがとうね?この子意地っ張りだから大変でしょ?」


「ちょっ!?姉貴!」


「あら?何かしら?てれちゃって?可愛いらしいところもあるのね?智春も?」


「…………はぁ…」


「安心してくださいよ先輩!俺、智春とは親友ですから!これからもずっと仲良くしていきますよ!」


「あ……わ…私も足立君とはクラスメイトとして!仲良くしてますよ?先輩」


「そう?ありがとうね…そうだ、今日お弁当作って来たの、よかったら2人でどうかしら?」


「マジですか!?とても楽しみです!」


「え…あ…の…マサ君…私も…」


「なら決まりかしらね、お昼休みになったら…」


「ちょっと待ったぁ!!抜け駆けは駄目手ですよ聖女様!マサ兄はワタシのマサ兄なんだからね!ね?マサ兄!」


「花楓?ここ上級生の教室だぞ?」


「そんなのカンケー無いよ!マサ兄は花楓の作ったお弁当を食べる運命なんだからね!」




またもや現れたのは5女神の1人に数えられる一年女子の宮藤花楓。

感の良い人ならピンと来るかも知れないが名字からも察する事が出来る通り宮藤雅人とは兄妹に当たる関係だ。

義理の兄妹らしく血の繋がりはないらしい。

2人が中学の頃に親が再婚し、その時に家族になったらしい…、が失礼かも知れないが正直流石ハーレム主人公だなとしか思わなかった。

現実に義妹なんてワードを聞く機会がリアルに巡ってくる事なんてそうそう無いだろうし仮に実際に義妹がいたとして毎日弁当を兄の為に作るとか、あんなにベタベタとくっついて来る事も基本的にあるまい。

向こうは年頃の女の子なワケだしな。


ちなみに宮藤花楓は一年の中では突出した人気を持つ美少女だ。

その整った見てくれもさることながら男子の扱いを心得ていて一年にして早くも5女神にくいこむ程の人気を持っている。


そんな子が義理とはいえ、兄にべったりとか普通におかしいと思う。



「まったく…君達もうすぐ予鈴がなるぞ?各々教室に戻った方がいいわ、たしかに雅人君と話したい気持ちは解るがそれは後でもいいでしょ」


「あ、副会長、おはようございます」


「ああ、おはよう、雅人君」



蔵王萌芽


この学校で生徒会副会長を務める三年の上級生。

副会長なんて肩書だがその実態は生徒会長より多くの成果を上げており、生徒会の実権はほぼ彼女が握っていると言っても過言ではない。


正にこの学校の裏番長的な存在であり、見た目もドイツ人とのクォーターらしくブロンドロングヘアに日本人ではどう背伸びしても不可能な大人びた顔立ちと体付きの持ち主だ。

勿論勉学においても右に出る者はなくこの学校でずっと総合成績1位を欲しいままにしている化け物だ。



「またお昼まで我慢とかや〜だ!ねマサ兄」


「お昼になったらまた会えますから我慢ですよ?ね?宮藤君」

  

「生徒会室を使うかい?君達ならいつでも歓迎だよ?」


「もう、萌芽は生徒会室を私物化し過ぎですよ?」


「構わないだろう?私は実質的なこの学校の女王だからね、」



今話してるのは副会長の蔵王先輩と姉の桜花だ。

二人は仲良く談笑を始める。

教室から出て行かないとって話をしていた筈なのに副会長自らがそれに反した行動をとっている。 


2人共三年だからか仲がいい、ハーレム主人公の宮藤を取り合う仲でも一応の線引はしてるみたいで2人で一緒にいる所も良く見かける。 


超人副会長と聖女の組み合わせはこの学校の中でも人目を引く…引いて余りある組み合わせで所謂カプ厨が湧いて出てくる程だ。


俺はワチャワチャして来た教室から抜け出す為にトイレに向かおうと席を立つ、誰も…姉の桜花すらそれに頓着せず宮藤を取り合うので必死だ。

今の内にトイレを済ませておこう。




「あ…」



トイレに向かう最中にとある女子生徒と目が合う。

彼女はつかつかとこちらに歩み寄って来ると徐ろにこう言った。


「ね?お昼休み…開けておいてよ…」


「は?なんで…?」


「お願いだから…」



コイツは冬真静留

同学年の女子で図書委員をしている。

物静かで飾り気の無い美人優等生だ。

容姿は優れていて先ほど騒いでいた五大女神の1人に数えられている。


そしてあのハーレム主人公君が好きになったからと一方的に俺を捨てた元カノだ。 


そんな奴がなんの用があって今更話かけてくる?


嫌な予感しかしない。




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