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第九話 不穏、奴隷商人

 

 勇者ギルドを後に俺たちは街を歩いていた。


「それにしてもエンリィの系統が分からなかったことが残念」


 カレンは面白くない様子である。


「私は戦えれば何でもいいけど」


「気にするな。あれは所詮、見定めるだけの情報に過ぎない。自分の系統は自分で決めることだ」


「そういえば、ナオユキ先生もあの系統判定はやったことあるんですか?」


「まぁ、あるけど」


「それで結果は?」


「俺の場合は少し特殊でな。全部の系統が表示された」


「全部って戦士系や魔術系を含めて全部ですか?」


「まぁ、ある意味エンリィと同じで判定不能ってわけだ」


「それはそれで凄いですね。そういえばナオユキ先生が勇者だった頃ってどんな感じなんですか? やっぱり強かったですか?」とカレンの質問攻めが始まる。


 やっぱりそこ気になるよな。出来れば聞かないでほしい。


「そんなくだらないことを聞いている暇があったらどうやって試験に合格しようとか考えるんだな」


「あ、ずるい。ナオユキ先生は都合が悪くなるとすぐ話を逸らす。エンリィも何か言ってやってよ。て、エンリィ。聞いている?」


「あれ、何かな?」


 エンリィの視線の先には手錠をはめられた子供がトラックに乗せられる光景が写っていた。


「あれは奴隷商人だ。身寄りの無い子供を拾って金持ちに高く売る連中だ。お前たちには関係ない」


 子供は見たものに興味を示す。だが、こればかりは関わらない方がこいつらのためだ。ここは大人の俺がしっかり指導してやらねばならない。


「可哀想……」


「ほら、行くぞ。早く寮に帰って明日に備えるんだ」


「はい」


 エンリィは気になる様子だった。




 街を抜けて辺境に向かう道中である。


「そうだ! ナオユキ先生。戻る前に少し、お手洗いに」


「ん? そうか。待っていてやるから早く済ませてこい」


「すぐ戻りますので」


 そう言ってエンリィは走りだす。

 それから数分、エンリィは一向に戻ってくる様子はない。


「遅いな」


「ですね」


 俺はカレンとともにエンリィの帰りを待っていた。一体、何をしているのか。


「カレン。少し、様子を見てきてくれないか?」


「え? 大丈夫じゃないかな。すぐ戻ってくると思うよ」


 目を逸らすようにカレンは言う。

 その僅かな異変に俺は勘付いた。


「カレン。何か隠しているんじゃないのか?」


「え? 別にそんなことは……」


「嘘を言うな。お前が嘘を付くときは決まって足をくねらせる」


「ナオユキ先生。そんなくだらないことをいつも見ていたんですか?」


「生徒の癖を把握するのも俺の務めだ。さぁ、言ってみろ」


「じ、実はエンリィのやつが……」


 俺は事情を知って慌てた。

 そう、エンリィはカレンに俺の足止めをするように頼んでいたのだ。

 そして、その目的は先ほどの奴隷がどうなるのかこの目で確かめたいと言うのだ。全く、バカなことをしてくれる。


「カレン。お前は後で補習を受けてもらうからな」


「そんな! どうして私がそんなことを」


「連帯責任だ。それより今はエンリィを見つけることが先だ。俺から離れるなよ」


 俺はエンリィを探すために走り出した。

 行き先は分かっている。後は何事もないことを祈るだけだ。

 奴隷商人のアジトとも言える場所はサーカスのような薄暗いテントである。

 奴隷商人でも良心的な人も居れば心が腐った悪心の人もいる。

 まぁ、大抵の場合、悪心に偏るのが奴隷商人の鉄則とも言える。

 俺は地下になっている通路を進んだ。


「おや、お客様ですかな」


 細いサングラスをした小太りの男が出向く。


「今、ここに帽子を被った青髪の女の子が来なかったか?」


「青髪? はて、何のことでしょう」


 奴隷商人は顔色ひとつ変えずに受け答えをする。見たところ、経験豊富の商人だ。

 つまり口がうまくなかなか尻尾を出さないと見た。


「商品を見せてもらうぞ」


「おっと。まずは入場料を払って頂けますかな?」


「入場料だと?」


「はい。うちは素晴らしい商品を取り揃えております。生半可なお客様はお断りしているんですよ」


「ちっ。いくらだ?」


「金貨三枚」


「高い。もう一声」


「では金貨二枚」


「もう一声」


「これ以上は無理ですよ。納得頂けないのでしたらおかえり頂くことになりますが?」


「ちっ。ホラ、金貨二枚だ」


「へへ。毎度あり」


 やり口が汚いのはどこの奴隷商人も共通というわけだろうか。

 何とか入場出来た俺は鉄越しの箱がいくつも並べられた部屋に案内される。


「ナオユキ先生。これ、全部奴隷ですか? それにエンリィはここにいるのかな?」


「分からない。でも、可能性はあるはずだ」


 性別や年齢が様々の人間が多様に奴隷として商品になっていた。

 確かに入場料を取るだけの品揃えは用意されている。だが、そんな奴隷には目を向けず、自分の目的を真っ当する。

 奥の方へと歩み寄った直後、見覚えのある顔が見つかった。


「エンリィ」


 既に奴隷服を着せられて手錠と足首に鉄球が付けられたエンリィの姿がそこにあった。


「ナオユキせんせー」


「勝手な行動しやがって。心配したんだぞ」


「ごめんなさい」


「謝罪は後だ。帰るぞ」


 だが、奴隷商人はタダでは帰らせてくれない。

 連れて帰るには金貨十枚を要求してきたのだ。

 本来、払う義理はないのだが、一刻もここから抜け出すためにお金で解決しようと言われた金額を奴隷商人に差し出す。


「ちっ。くれてやる」


「毎度あり」


「ナオユキ先生。ごめんなさい。私のせいで大金を使わせてしまって」


「気にするな。生徒を守れずに教師ができるか。お前が気に病むことではない」


「うっ……うっ……」


 エンリィは泣き出してしまった。

 怖い思いをさせてしまったのは俺の責任でもある。

 だから安心させるために俺はそっと抱きしめた。


「怖かったな。もう大丈夫だ。一緒に帰ろう」


 こんなところは一刻も早く抜け出したかった。何より気分が悪い。


「お客様。他にも素晴らしい商品を用意しているのですが、見ていかれませんか? 今日、入荷したばかりのレアモノです」


「遠慮しておく。本来、俺の目的はエンリィを連れ戻すこと。それが済んだらここにはもう用がない。行くぞ。エンリィ」


 俺がエンリィの手を引いたその時だ。エンリィは俺の手を振り払った。


ーー作者からの大切なお願いーー

「面白い!」

「続きが気になる!」

「早く次を更新希望!」


少しでも思ってくれた読者の皆様。

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