第二十五話 基礎、スタートライン
最早、何回目か分からない掃除の確認に嫌気がさしていたが、ダイガの自信満々な態度に俺は今度こそと思いつつ確認する。
「どうだ! ナオユキ。これで文句ないだろ」
「うん。百点だ」
「やった!」と三人は大喜びするが、ダイガは違った。
「お前たち! たかが掃除の課題をクリアしたくらいではしゃぐな。スタートラインに立ったに過ぎない」
「その通りだ。この課題は本来、出来て当たり前のこと。それで喜ぶなんてどれだけ頭の中はお花畑なんだよ」と、俺はポリポリと頭の後ろを掻く。
「それでナオユキ。ようやく指導してくれるってことでいいんだな?」
「あぁ、ここからは基礎を学んでもらうぞ。当たり前と思うことが多いが、これらは意外と出来ていないことが多い。その辺を含めて学ぶことだな」
ダイガたちが勇者アカデミアに入って七日目。
ついに本当のスタートラインに入ったと言える。だが、大変なのはこれからであることを四人は知らない。
「それでまずは何をすればいい?」
「そうだな。まずは剣の素振りをするか」
「素振り? そんなこといつもやっている」
「お前がやっていても他の三人はどうだ?」
「いや、特には……」
「同じく」
「汗掻きたくないし」
三人は全くやっていないと言っているようなものである。
素振りをやる意味が一層高まった。
「ちっ。だが、俺は別のメニューでもいいだろ。次の指導をさせてくれ」
「別に構わないが、リーダーとしてメンバーを置いてけぼりにしていいのか?」
「何?」
「お前一人ならドンドン先のメニューをこなしても構わないが、同じメンバーもどのみちお前と同じことをする。だったら一緒にやるべきだと思うんだが」
「ぐっ。どうして俺が合わせてやらないといけないんだ」
「自分さえよければそれでいい。そう言う考えでいるといつまで経っても成長しない。まずはメンバーの状況をしっかりと把握することが大事なんじゃないのか?」
「そ、そうか。分かった。同じメニューをすればいいんだろ」
「では素振りを百回。そしてサンドバックに向かって左右、正面に向けて五十回ずつだ」
「そんなにやるんですか?」
「コースケ。その程度で根を上げているようではダメだ。俺の生徒は皆、これくらい毎日やっているんだ」
「ま、毎日?」
「基礎が大事って言うのはそう言うことだ。さぁ、全員で回数を数えながらやるんだ」
その後。ダイガの掛け声と共に剣の素振りが始まった。
普段、ここまでのトレーニングをして来なかったのか、皆辛そうだった。
特にアミカゼは序盤から限界だった。
「もう無理!」
「おいおい。まだ半分も終わっていないぞ」
「無理なものは無理!」
そう言うと思った。
「よし! 休憩だ。五分後に再開しよう」
「休憩? いいのか?」
「無理に続けても続かない。適度な休憩が効果的なんだ」
「そ、そうか」
水分補給を取りつつ、四人は精神を落ち着かせる。
「ナオユキ。本当にお前についていけば強くなれるのか?」
「それはお前ら次第だ。俺が出来ることは基礎のみ。それをどう使いこなせるかお前たち次第だ」
「俺は勇者として英雄になりたい。そのためにはこいつらと強くならなくちゃならないんだ」
「英雄か。大きく出たな。だが、今のお前には無理だ」
「ちっ。分かっているよ。そのためにはお前を利用するだけ利用してやる」
「上等だ。キッチリ利用してみろ」
俺とダイガが言い合っている時、コースケは遠くの方を見ながら呟く。
「あれって亜人族ですか?」
「亜人族? 亜人族がいるのか? どこだ?」
「ほら、あそこ」
「見えない」
コースケの視力でしか見えないようだ。
遠距離タイプを得意とするコースケならではの才能であるが、ゴーリキやアミカゼでは捉えきれない。
「あぁ、俺の生徒に一人いるぞ。亜人族」
「やっぱりいるんだ。亜人族でも勇者になれるんですか?」
「種族は関係ない。なりたい気持ちがあれば誰でも勇者にはなれる」
「そうですか。それはそうだとして。あの子、少し様子が変じゃないですか?」
「様子が変?」
「なんか、荷物をいっぱい持たされているけど。動きも少し不自然だし」
コースケの発言で俺は嫌な予感がした。
「お前ら、俺は少し席を外す。しっかりと課題をこなすんだぞ」
そう言い残して俺は走った。
「ルリディア!」
「ん? あ、ナオユキ先生」
ルリディアは両手いっぱいに荷物を抱えて辛そうに歩いていた。
「それは?」
「課題で使った武器や道具です。今、倉庫に戻そうと思いまして」
「お前一人でか?」
「は、はい。私が率先して一人でやっているんです」
ルリディアは少し後ろめたさがあるのか、視線をソッと下げた。
「一人で持てる量ではないだろ。俺が持つから半分よこせ」
「だ、大丈夫です。これは私が頼まれたことなんです」
「頼まれた?」
「は、はい」
「『押し付けられた』の間違いじゃないのか? ルリディア」
「そ、そんなことありません。これは私が進んでやっていることです」
ルリディアは元々、身体に傷があったが、以前より少し増えている気がした。
ルリディアの態度、そして身体の傷を見て俺は一つの結論を出した。
「ルリディア。お前、虐められているのか?」
「……………………っ!」
ーー作者からの大切なお願いーー
「面白い!」
「続きが気になる!」
「早く次を更新希望!」
少しでも思ってくれた読者の皆様。
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