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第二話 設立、勇者アカデミア


 元勇者になった俺、堺直之は冒険者ギルドの一角にあるバーで一杯やっていた。

 いわゆるやけ酒だ。


「これからどうしようか。特にやりたいこともないし」


 明日のことも分からない俺は浴びるように酒を飲み干した。

 昨日まで勇者だった自分が遠い昔のように感じた。

 元勇者というのが俺に残された唯一の肩書きである。


「あれ? ナオユキさんじゃないですか。どうしたんですか。一人でここにいるなんて珍しいですね」


「何だ。イロハちゃんか」


 俺に声を掛けてきたのは冒険者ギルドの受付を担当する看板娘、イロハちゃんだ。勇者をしていた時はよくお世話になっており、顔見知りである。

 黒髪ツインテールで幼い顔をしているが、実際の年齢は不明だ。

 こうして冒険者ギルドで顔を合わせると友達のように和気藹々と喋る仲でもある。


「寂しそうな背中だったので誰かと思いましたよ。仲間はどうしたんですか? 別行動中って訳でもなさそうですが……」


「あぁ、実はな……」


 俺はことの経緯をイロハちゃんに喋った。

 追放されたこと。元勇者になったことを酒の勢いで喋ってしまう。

 誰かに聞いてもらいたかったこともあり、素直な気持ちを打ち明けた。


「え? 追放? じゃ、勇者を辞めちゃったんですか?」


「まぁ、そういうことだ」


「そんな勿体ない。ナオユキさんほどの才能がありながら辞めるなんて」


「才能って俺には何にもないよ。全てが平均的で器用貧乏って馬鹿にされるくらいだぞ?」


「滅相もない。全てを平均的に扱えるって実は凄いことなんですよ。普通の人って何か一つしか身に付けられないのにナオユキさんは異常です。数十種類の武器や技を使いこなせる人なんて私、聞いたことありませんもの」


「使えるって言ってもあくまで平均的だが?」


「それが凄いんですよ。どうしてそんな多くの種類を使いこなせるんですか?」


「え? いや、基礎が分かれば使いこなせるじゃないか。そんな凄いこと?」


「はい。凄いですよ。そんな人が勇者を辞めるなんて勿体ない」


「とは言っても俺、勇者に向いていないんだよな。追放されちゃったし」


 否定的な俺の発言に対してイロハちゃんは考え込むように俯く。


「ナオユキさん。今後のことは何か考えているんですか?」


「いや、特には」


「そうですか。なら、一つ提案があります」


「提案?」


「ナオユキさんは教える才能があると思います。だから勇者アカデミアを設立してみてはどうでしょうか」

「勇者アカデミア? つまり俺が教師として生徒に教えるってことか?」


「はい。あらゆる武器を使いこなせると言うことは教える才能もあるはずです。どうでしょう?」


「まぁ、悪くないけど、俺に出来るかな?」


「ナオユキさんなら出来るはずです。最近の勇者は基礎がなっていないんです。冒険者ギルドに登録だけしてそのままフェードアウトする人が続出しているんです。だからしっかりとアカデミアで基礎を身につけた卒業生をうちに紹介してくれたら非常に助かるんですよ。どうですか? 冒険者ギルドと提携組んで勇者アカデミアを設立してくれませんか?」


 イロハちゃんのまさかの提案に俺は胸を躍らせた。

 なるほど。何も勇者を続けなくても教える立場なら俺でも出来るかもしれない。これなら勇者として関わることが可能と言うわけだ。

 何もやりたいことがなかった俺に一つの道筋を見出せた気がした。


「よし。良いかもしれないな。勇者アカデミア」


「提案しといて申し訳ないのですが、設立するには結構大変ですよ。例えば費用とかそれなりに掛かるかと……」


「まぁ、勇者時代に稼いだ資金が使わずにとってあるからなんとかなるだろう。足りない分は生徒から入学金を入れてもらってまかなえばなんとかなるかもしれないな」


「そうですか。うちとしては勇者アカデミアの設立は助かります。少しであれば援助することも可能ですが、どうしますか?」


「援助してくれるのか?」


「はい。卒業生をうちに紹介してくれればメリットがありますし、そのための資金なら喜んで出します」


「そうか。助かる。悪いな。俺のために」


「いえいえ。ナオユキさんはうちとしてもお世話になった仲ですし、当然のことですよ。それでどこで設立しますか?」


「そうだな。辺境の地なら土地も余っているだろうし、その辺が理想だな」


「なるほど。土地の問題なら解決できそうですけど、生徒が通うってなったらかなり負担になると思いますよ?」


「そっか。その問題もあったな。だけど、都心に建てると費用高いだろうな」


「なら一層、寮も一緒に設立してみてはどうでしょうか。それなら通う必要もないですし、いつでも生徒の面倒を見ることができますよ」


「寮……。それだ! イロハちゃん。いい提案するな」


「実はずっと考えていたんですよ。ただ、設立してくれそうな人がいなかっただけで今回、ナオユキさんが名乗り出てくれて嬉しかったです」


「そうか。早速、設立の段取りを進めないとな」


「はい。私も出来ることならサポートしますので何でも言って下さいね」


「ありがとう。俺、頑張るよ」


「ファイトです! ナオユキさん」


 イロハちゃんに背中を押された俺は勇者アカデミア設立のため、行動に移した。

 土地の選定、アカデミアの図面の書き起こし、授業に必要な部屋や広場などイロハちゃんの協力のもとで話を進めていく。


「よし。こんなところか。少し狭く感じるが、設立して軌道に乗れば増築していけば何とかなるだろう」


 理想のアカデミアの形が決まり、早速工事が始まった。

 勇者時代に築き上げた知り合いに声を掛けて多くの人の手を借り、着々と建物を作り上げる。




 そして、数ヶ月の月日の末、ついに完成した。

 座学棟、実習棟と大きく二つの建物の間にグラウンドを完備。

 食堂、図書室、保健室、映写室など細かい設備まで用意してまさにアカデミアとしてふさわしい外観となっていた。

 そして棟の裏には寮を完備しており、最大百人の生徒が生活できる空間を用意した。


「出来た。これが俺の夢の勇者アカデミア。ここから俺の新たな第一歩を踏み出すんだな」


 完成した勇者アカデミアの前に感動に浸っていた俺は泣きそうになっていた。


「お! ついに出来たんですね。勇者アカデミア!」


 不意に俺の後ろに現れたイロハちゃんの存在で涙が引っ込む。


「イロハちゃん。来ていたんだ」


「どんなものになったか見に来たんですよ。へー立派な建物ですね。これなら生徒はいっぱい来ますよ」


「だといいんだがな」


「ナオユキさんにイイものを持って来ましたよ」


「イイもの?」


「あれを見て下さい」


 イロハちゃんの指を差した方向には俺の姿をした黄金の全体像が置かれていた。


「な、何だ。あれ」


「えへへ。設立記念物です。勇者アカデミアを尊重するものとして一番目立つところに置いて下さい」


「尊重って。なんか恥ずかしいな」


「何を言っているんですか。このアカデミアはナオユキさんが設立したんですよ。ならナオユキさんを尊重させなくてどうするんですか」


「まぁ、ありがたく置かせてもらうよ」


「何だか嫌そうですね」


「いや、凄く嬉しいよ。ありがとう」


「どういたしまして。さぁ、これから忙しくなりますね。陰ながら応援していますね。ナオユキ先生!」


「先生か。悪くない響きだな」


 自分の世界に浸りながら俺の第二の人生が幕を開けようとしていた。

 そう、この勇者アカデミアから始まる。




ーー作者からの大切なお願いーー

「面白い!」

「続きが気になる!」

「早く次を更新希望!」


少しでも思ってくれた読者の皆様。

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