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第十九話 没落、その後の旅路の果て④ ※ダイガ視点

 

 俺、ダイガ・ブライナ率いる勇者パーティーは長きに渡るベテラン勇者だ。

 だが、ある日をきっかけにうまくいかない日々が続いていた。


「くそ! また失敗だ」


 俺はイライラを木に向けて拳をぶつけていた。

 木に止まっていた小鳥がわざわざと羽ばたく。


「リーダー。そう、カッカしないで下さいよ。こっちまでイライラが移っちゃうじゃないですか」


「コースケ。俺に指図するんじゃない。せっかく勇者ランクをAにあげたのにこの失敗続きでBに降格したじゃないか」


「僕たちのせいだって言いたいんですか?」


「他に誰がいるんだ」


「たとえリーダーでも今の発言は許せませんね」


「ちょっと! 喧嘩はやめて下さい。仲間割れをしたところで意味がないですぞ。リーダー。コースケ殿」


「なら、ゴーリキ。お前は悔しくないのか。あんな駆け出しの新人に先を越されて」


「それは……悔しいですが」


 そう、俺たち勇者パーティーはナオユキが立ち上げた勇者アカデミアの卒業生に助けられた上に全てを見劣りされた。それだけではなくその後に現れた教え子たちにも先輩の威厳を見せられることなく軽々と先を越されてしまう。

途中まではうまく行くのだが、ナオユキの教え子と遭遇した時は決まって無様な姿を見せてしまうのだ。

その結果、Sランク間近だったにも関わらず、依頼の失敗続きで降格。このまま続けばCランクにまた降格だって考えられる。それだけは避けたかった。


「だったら今までのやり方を変えてみますか?」とアミカゼは提案する。


「変えるって何を?」


「新人勇者たちのやり方を真似てみるんです。そこに成り上がるヒントがあるんじゃないですか?」


「やり方を真似る、か。うむ。試してみる価値はあるけど、具体的にどうすればいいんだ?」


「全員で共有の技やスキルを身に付けてみるとか?」


「ふむ」


 メンバーたちは考え込む。


「よし。俺に名案がある」と俺は名乗り出す。


「名案?」


「そんな悩むことではない。俺たちにはそれぞれ尖った才能を持っている。だったら自分の得意分野をメンバー内で共有すればいいんじゃないのか?」


「なるほど。確かにそれなら新しいスキルを身に付けられる」


「なぜ、そんな簡単なことを思いつかなかったのか不思議だ」


「よし! 決まりだ。ペアを組もう。コースケとゴーリキ。俺とアミカゼでペアを組んでそれぞれ自分の得意分野のスキルを相手に教える。そして教えたらその逆に教え合うんだ。それで俺たちの勇者パーティーのレベルは爆上がりだ」


「はい! 早速やりましょう」


 俺の素晴らしい名案により、それぞれ得意分野を相手に教え合った。

 だが、その浅はかな考えは苦労の連続だった。


「リーダー。何度言えば分かるんですか? 今の動きだと魔術は発動しませんよ」


「う、うるさいな。お前の教え方が悪いんだろ」


「私のせいだと言うんですか? リーダーの物覚えが悪いのがダメなのでは?」


「お前、リーダーに向かってなんて口の聞き方を!」


「今はリーダーとかの立場は関係ありません。同じ土俵にいる協力関係にあります。はい。もう一度、最初からやり直しです」


「ぐぬぬぬっ」


 同じメンバーのアミカゼとは言え、こうして誰かの下で教えを請うのは嫌な気分である。

 この歳になって新たな知識を取り入れようとするとどうしてもどこかで拒否反応を示してしまう。簡単にプライドが邪魔をしているのだ。


「あ、リーダー。また間違えています。いい加減にして下さい。覚える気あるんですか?」


「う、うるさい。俺だって真面目にやっているんだ。お前こそ俺が教えた剣術を身に付けていないじゃないか。お互い様だ!」


「わ、私は剣なんて今まで触ったこともないのだから仕方がないじゃないですか! それにリーダーの教え方は雑過ぎます。スパーンとかズドーンとか擬音で教えられても分かりませんよ」


「し、仕方がないだろ。人に教えたことなんてないんだから」


「それにしてもリーダーの教え方は酷過ぎます!」


 アミカゼの反抗に俺は後退りをする。

 俺たちのペアはうまくいかずに膠着する。


「休憩だ。あいつらの様子を見てくる」


 コースケとゴーリキはうまくやっているだろうか。

 真逆の戦闘スタイルなので不安だったら少しでもスキルが身に付けばそれでいい。


「ゴーリキ。何度、言ったら分かるんですか! 目、付いているんですか?」


 コースケの怒涛が既に聞こえてくる。こっちもか。

 俺は頭を悩ませながら二人の元に行く。


「あ、リーダー。聞いてください。ゴーリキのやつが」


「リーダー。コースケはダメです」


「待て、待て。聞いてやるから一気に喋るな」


 コースケはゴーリキに弓矢の使い方を教えていたわけだが、理論的なコースケの教えに対して脳筋のゴーリキには理解しづらくうまくいかなかった。

 逆にゴーリキはコースケに槍の使い方を教えるが、見て覚えろ方式でコツが掴めずにいた。

 スキルとは関係なくこの二人は根本的にタイプが違うので教える側と教えられる側では釣り合わないところがあった。


「事情はよく分かった。お前たち、相手に合わせた教え方は出来ないのか?」


「それが出来たら苦労しませんよ」


「リーダーの方はどうなんです? アミカゼから魔術を覚えられたんですか?」


「いや、少し息詰まっている」


「と言うより、全くうまくいっていないんじゃないですか?」


「うっ……悪いかよ」


「まぁ、そんなところだろうと思いました。多分、僕たちにはそもそも教えるって言う才能がないんじゃないんですか?」


「俺にもナオユキのような教える才能があれば」とゴーリキは漏らす。


「あいつのことは考えるな。よし! ペアを変えてもう一度、教え合おう。次こそ上手くいく」


 だが、ペアを変えたところで結果は同じく新たなスキルを身に付けることは出来なかった。

 そして、次の依頼を失敗すればCランクに降格というギリギリのところまで追い詰められていた。


「くそ。このままじゃ、本当にやばい。もう後がないじゃないか。この年齢でCランクって死んでも言えないぞ。何か、何か手はないのか!」


 俺は木に頭をぶつけながら正気を保っていた。


「リーダー……。一つ提案があります」


 コースケは俺の背中に向かって言う。


「うるせぇ! 少し黙っていろ」


「リーダー。この際、恥を捨ててナオユキの勇者アカデミアに行ってみませんか?」


「なんだと?」


「あそこに行けば学べることは多くあります。もしかしたらSランク昇格も夢じゃないかもしれません」


「バカ言え。今更、そんな恥ずかしいこと出来るわけないだろ」


「僕たちは今、Cランク降格寸前です。そっちの方が恥ずかしいですよ」


「ぐっ……。お前らはそれでいいと思っているのか?」


 メンバーは皆、軽く頷いた。どちらかと言えばCランクの降格が恥ずかしいというのが皆の意見である。


「そうか。お前らの気持ちはよく分かった。ここは皆の意見を尊重する他ないようだな」と、俺は拳を力強く握り込んだ。



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