第十八話 回復、そして成長
「ナオユキ先生! ナオユキ先生!」
慌ただしくカレンは俺を呼ぶ。
「どうした。騒々しい」
「ルリディアが目を覚ましました。急いで来て下さい」
「何? 本当か」
俺は業務を投げ出してルリディアの眠る部屋に向かう。
「ルリディア!」
「…………………………………………っ!」
ルリディアは上半身裸でエンリィが身体を拭いている場面に俺は遭遇した。
「あっ、あっ、あっ!」
「わ、悪い」
バタンと俺は勢いよく扉を閉めて部屋を出た。
それから数分後、エンリィから許可が出て部屋に入る。
「ナオユキ先生。エンリィから事情を聞きました。すみませんでした。ご心配をお掛けしたようで」
「いや、このままずっと目覚めないんじゃないかと思ったが、何ともなくて安心したよ。それより身体は大丈夫か? 痛いところとか」
「痛みはないようですが、なんか急成長しているみたいで自分でもビックリです」
ルリディアの身体は幼児体系から成人体系へと成長した。
スラッとした手足の他に胸の膨らみが目立つ。見た目は既に女性そのものだ。
「亜人族はある時期から一気に成長をするらしいな。それがたまたま寝ている間に来たんだろう」
「ルリディアナイスバディじゃない。ちょっと触らせて」
「え? カレン。やめて下さい」
「もう、カレン。ちょっかい出さないの」
「えー。エンリィも興味あるくせに。さっき身体を拭いている時、ニヤけていたじゃない」
「ニヤけていません!」
「あ、喧嘩はやめて下さい」
止めに入ろうとしたルリディアだったが、ベッドから落ちてしまう。
「ルリディア。大丈夫ですか?」
「は、はい。少し身体が慣れていなくて」
「無理をするな。身体の急成長と数日寝ていた影響でうまく動かせないはずだ。少しずつ慣らしていけばいいさ」
「はい。そうします。それより私はどうして寝込んでいたのでしょう?」
「覚えていないのか?」
「えっと、寝る前は確か、ナオユキ先生と職業体験をしていたはずですが、その先のことはよく覚えていません」
「おそらく急激に魔力を消費した影響だな」
「魔力? 私が?」
やはり本人に自覚はないらしい。ここで一気に話してもついていけないだろう。時間を掛けて知っていく必要がある。
そう、ルリディアには隠れた魔力が存在する。
あの場にいた百人以上の負傷者を一気に回復させた。それはチート以外何ものでもない。この力は将来、狂気になることは間違いない。
あとは使い方や手順を学んでいけば素晴らしい逸材に成り得る。
将来が楽しみの生徒である。
「それよりルリディア。お腹減ったじゃないのか? 寝ている間、まともに食事をしていなかったことだし」
「そ、そういえば凄くお腹が空いています」
意識をしたのか、ルリディアの腹の音は雄叫びをあげていた。
「食事の準備をする。エンリィ、カレン。手伝ってくれるか?」
「「はい!」」
急遽、ルリディアのために大量の食事を用意した。
三人で協力して手早く料理を作り終える。
「さぁ、食べてくれ。但し最初はスープからゆっくり飲むんだ。身体がビックリしちゃうからな」
「は、はい。頂きます」
胃にスープを流し込んだことでルリディアの食欲は一気に解放された。
相変わらず食べ方が綺麗とは言えないが、今は好きに食べさせられたらそれでいい。味よりもとにかく胃に食べ物を送るだけの傲慢な食事は異様な光景だった。
「エンリィ。カレン。追加の食事を作ろう。足りなくなる前に」
「ルリディア、よく食べますね」
「それは何日も食べていなかったんだもの」
「それもそうか」
結局、ルリディアは軽く二十人前を平らげた。恐ろしい胃袋と言える。
食事を終えたルリディアの腹は膨れ上がっており、出産寸前の妊婦のようなお腹をしている。
「ごめんなさい。またテーブルの上を汚してしまいました」
「気にしなくていいですよ。ルリディアはゆっくりして下さい。片付けは私たちがやりますから」
「申し訳ありません。エンリィ、カレン」
「それより身体が成長したこともあるから服を新しく買わないとな」
「私の服ですか? いえいえ。あり合わせの適当なものでいいですよ」
「まぁ、そういうな。俺がなんとかしてやるよ」
「ナオユキ先生……。何から何までありがとうございます」
「気にするな。これも生徒のためだ」
「はい! 私もルリディアの買い物に付き合います」
「それだったら私も行きたい!」
「お前らはお留守番……と言いたいところだが、来てくれるか? 女の服ってよく分からなくてさ」
「勿論です。では、今、すぐに行きましょう」
「そうしましょう!」
エンリィとカレンは既に買い物へ行く気分だ。
浮かれすぎだが、今日くらいはいいだろうと俺は目を瞑った。
街へ出掛けるとエンリィとカレンは店に置かれた商品に目を輝かせながら浮かれていた。
「おい。今日はお前らの物を買いに来たんじゃないんだぞ」
「ナオユキ先生。これ、欲しい!」
「あ、これ可愛いかも」
「いや、だから……」
「ナオユキ先生。女の子は買い物が好きな生き物なんです。少しだけ大目に見てくれますか?」
「……ルリディア。お前、少し大人になったな」
「えぇ、身体はもう大人です」
「いや、中身も少し」
「そうですか? そんなことはないと思いますが」
いや、ルリディアが感じているほど変わっている。
それでも自分では気付けないこともあるらしい。
「ルリディア。この服なんてどうですか?」
「私はどちらかというと動きやすい服の方がいいですね」
「え? じゃ、これとかは?」
三人で悩み、ルリディアの服選びが始まった。
あーでもないこーでもないと悩んでいる様子だったが、それがまた楽しそうだった。
「ナオユキ先生。決めました」
ルリディアの服装は動きやすさに適した服だが、可愛さを捨てきれないスカートを採用した服である。手袋やブーツも一緒に買い、成長したルリディアに似合う服装になっていた。
「うん。いいんじゃないのか。似合っているよ」
「本当ですか?」
「あぁ」
「それ選んだのは私です」
「カレンは候補を出しただけでしょ。最後に選んだのは私です」
「分かった。分かった。さて、買い物も済ませたところだし、帰るぞ」
「「「はーい!」」」
ーー作者からの大切なお願いーー
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少しでも思ってくれた読者の皆様。
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