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第十七話 体験、ルリディア編

 

 人としてのコミュニケーション能力に少し欠けているルリディアの職業体験は俺が付き添いをする形に行うことになる。


「あの、やっぱり私、帰っていいですか?」


「ここまで来て何を言っているんだ」


「だ、だって周りに迷惑が掛かるかもしれませんし」


「逆に迷惑を掛けるくらいでちょうどいい」


「そ、それは少し傲慢なのでは?」


「職業体験は完璧にこなそうとするものじゃない。失敗して経験することが目的だ。だから当たってこい」


「は、はい。ナオユキ先生がそう言うなら」


 王宮の護衛軍には様々な部隊で組まれている。

 攻撃部隊、防御部隊、偵察部隊、潜入部隊など様々な部隊がいて王宮を守っている。その中でルリディアが体験する部隊は医療部隊だ。

 そこでは傷付いた隊員を治療したり、手当てをする部隊であり、裏方の仕事としては重要だったりする。


「こんにちは。勇者アカデミアから来た堺直之です」


「あら、あなたが勇者アカデミアの先生ね。初めまして。私は医療部隊の医療長をしています。シラツキと言います」


 サラサラとした長い黒髪に透き通った白い肌の美人の女性だった。

 服の上からでも分かる発達した胸が目についた。


「よろしくお願いします」


「その子が今日、体験する生徒ですか?」


「はい。ルリディアです。少し手を焼く子ですが、よろしくお願いします」


「へぇ、亜人族の子ね。私、初めて見たかも」


 シラツキが近くで見ようとルリディアに寄った途端、俺の後ろに隠れる。


「あら、嫌われちゃった?」


「すみません。こいつ人見知りなんです。過去に色々あったみたいで」


「亜人族ってことで色々お察しです。それよりもうちの部隊で良かったのですか? 確か亜人族って戦闘民族だったはず。攻撃部隊の方が合っているかと」


「それも考えたんですが、判定をしたら治癒系の才能があるみたいで試しにその系統を体験してみようと思いまして」


「なるほど。まぁ、物は試しってことね。いいわ。存分に体験していって」


「ありがとうございます。ルリディアもお礼を言うんだ」


「あ、ありがとうございます」


「うん。よろしく。じゃ、早速手当ての仕方から体験してみましょう。今日は丁度、患者が多くてね。人手が足りていなかったところなの」


「お、お願いします」


 消毒や包帯を巻く作業を医療部隊の隊員は手際よく進める。

 それを見ながらルリディアも真似をしてやるのだが、そう上手には出来ない。


「あれ? あれれ?」


 包帯は巻き過ぎてしまい、患者はミイラのような状態で困っていた。


「あぁ、ルリディアちゃん。違う、違う。ここはこうやって巻くのよ」


 ルリディアの作業を見かねたシラツキは手取り足取り丁寧にやり方を教える。


「こうですか?」


「あー、うん。そこは優しめに巻いてね。関節の部分だから」


「は、はい。すみません」


「ゆっくりでいいからね」


 ルリディアはいい感じに指導してもらっている。

 最初は覚えるのに苦労するが、続けていくうちに一人でこなせるようになっていく。


「手際がよくなってきたわね。一度覚えちゃえば身につくタイプなんじゃない?」


「いえ、そんなことないです」


 作業スピードが上がったことによりルリディアは医療隊員と同等の仕事量をこなしていた。思った以上に環境に馴染んでいる。


「あれは何をやっているんですか?」


 ルリディアは奥で作業をする医療隊員に疑問を示す。


「あれは重症患者の治療を行なっているの。治癒魔法を使える隊員がやるんだけど、出来る人って少ないのよね」


「治癒魔法ってそんなに難しいですか?」


「えぇ。かなり難しい。使える人は重宝されるからある意味、護衛隊では重要人物よ」


「そうなんですか。私も使えるかな?」


「ふふ。誰でも使えるわけじゃないの。努力はもちろん必要なことだけど、それだけじゃなくて元からある才能がないと一流の治癒魔法は使えない」


「やっぱり難しいんですね」


 治癒魔法を使った治療は簡単ではない。経験と才能がいる仕事である。

 そのことにルリディアは深く知れたようだ。


「た、大変です! シラツキ医療隊長!」


 一人の隊員が慌てた様子で医療室に入ってきた。


「何事ですか。患者がいるのでお静かにしてください」


「も、申し訳ありません。報告です。先日、暗殺組織のアジトの偵察に行っていた偵察部隊、並びに潜入部隊の隊員が全滅しました。生き残りの隊員を輸送したのですが、相当の数です。今すぐ治療を行なってほしいのですが」


「何ですって?」


 医療室の外には負傷した隊員が無数に運ばれていた。

 十人、二十人ではなく百人くらい一気に運ばれてきたのだ。


「何て数なの……。急いで! 重傷患者から運び入れなさい! すぐに治療の準備を!」


 治療室は一気に戦場と化した。

 ルリディアを教えるどころではない。皆、血眼になりながら患者の治療に専念する。


「私も何か出来ることは……」


「ルリディア。今は緊急事態だ。ここはプロの皆の活躍を見届けるんだ」


「でも、ナオユキ先生……」


 こういうトラブルはどこだろうと遭遇するものだ。

 この日がたまたま忙しいタイミングに当たっただけ。

 シラツキは多くの魔力を消費しながら重症患者の治療に専念した。

 かなり苦しそうに辛い表情を浮かべた。


「数が多過ぎる。私一人じゃ全員を救えない。誰か!」


 シラツキ以上の治癒魔法を使える者はこの場に存在しない。

 手が足りていないと言うことは救える命が救えない可能性があると言うことだ。手を出したい気持ちもあるが、俺が使えるのは平均的な治癒魔法のみ。

 とてもじゃないが重症患者を救えるほどの魔力は持ち合わせていない。


「た、助けてくれ……。誰か……」


 手足を切られた者や深い傷を負った者は最後の力を振り絞って助けを求める。

 だが、助けられる技術を持った者の数が足りていない。


「私が助けなくちゃ」


 そう言ってルリディアは治療室の中心部の戦場に歩み寄った。


「おい。ルリディア。余計なことは……」


 止めようとした俺だったが、ルリディアから溢れ出る魔力に目移りした。

 何だ。このおぞましい魔力は。


「私が皆を助ける!」


 すると、ルリディアを中心に結界が医療室全体に広がった。

 青白い光が包み込み、結界の中にいる患者の傷が完治していく。

 失ったはずの手足も再生されて元の状態へと戻っていく。

 一瞬で百人いた患者の傷が癒えたんだ。


「まさか、ルリディアがやったと言うのか?」


 ありえない現状に患者も医療隊員、それにシラツキも首を傾げる始末。


「私の魔力が回復している?」


 魔力を使い果たして辛そうにしていたシラツキは何が起こったのか、理解するのに時間を要した。

 ルリディアは力を使い果たしたかのようにその場に倒れ込んだ。


「おい! ルリディア!」


 俺は駆け寄ったが、ただ寝ているだけのようだ。一先ず安心した。

 だが、翌日。一週間経っても目を覚まさなかった。

 次にルリディアが目を覚ましたのは二週間後のことだった。

  


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「面白い!」

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