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第十六話 体験、エンリィ編

 

 俺はエンリィを連れてある場所に向かっていた。

 その道中で質問を投げかけた。


「エンリィ。勇者のサポートに関わる仕事を体験したいんだったよな?」


「はい。私の性格上、率先して戦うというよりそのサポートに徹した方が合っていると思います」


「エンリィ。実は勇者っていうのはサポートする側が最も過酷なんだぞ?」


「え?」


 エンリィは予想していない事実を言われて頭が付いてきていない様子である。


「確かにサポートする側は率先して戦う勇者と比べて危険は低い。だが、それ以上に神経を使うことが多い。今日はお前にそれを体験してもらう」


「なんだか嫌な予感がしてきました。私は何をさせられるのでしょうか?」


「まぁ、そんな構えなくていい。気楽にやれ。というより楽しめ」


「いや、いや、いや。元々気楽でいましたけど、ナオユキ先生が変なこと言うから不安になっちゃったじゃないですか」


「それは悪いことをしたな。さぁ、着いたぞ。ここだ」


「…………ここって?」


「装飾屋だ」


「装飾屋って確か、武器を取り揃えたお店ですよね? 私、商人ではなくて勇者を希望したんですけど」


「まぁ、そう言うな。ここで学べることは大きい。俺が言うんだ。騙されたと思って体験してこい」


「うーん。本当に大丈夫かな?」


「入るぞ」


 俺は先頭になって装飾屋に入店した。


「よう!」


「ん? おぉ! これはナオユキの兄ちゃんじゃないか。しばらくぶりだな」


 出迎えたのは筋肉質のデカイオヤジ。

 大沢武雄(おおざわたけお)。通称、ウエさんと呼ばれている。武器屋と言う意味から来ているそうだ。装飾屋を営んでおり、俺は何度も足を運んでいることもあり、顔見知りである。


「お前も相変わらずだな。儲かっているか?」


「えぇ、おかげさまで。冒険者ギルドのイロハから聞いています。その子が例の職業体験の生徒ですか?」


「あぁ、エンリィだ」


「こ、こ、こんにちは。今日はよろしくお、お、お願いします」


「安心しろ。見た目はあれだが、中身は紳士的だ」


「見た目はあれってどういう意味ですか。ナオユキの兄ちゃん」


「まぁ、そういうわけだからウエさん。短い間だが、エンリィの世話をしてやってくれ」


「ナオユキの兄ちゃんはずっと居ないのか?」


「最初だけ立ち会うよ」


「そうか。とは言っても何を教えていいか悩むんだよな。誰かに教えるってやったことないし」


「そんな気構えなくていいさ。普段通りの仕事を見せればいいんだ」


「と、言いましてもね」


 ウエさんは頭を悩ませる。


「それにしても流石、装飾屋ですね。武器の種類がいっぱいです」


 不用意にエンリィが武器に触れようとした時だ。


「勝手に触るな!」と、人が変わったようにウエさんは怒鳴った。


「ひっ! ご、ごめんなさい」


 エンリィは泣く寸前だった。


「あ、いや。怒鳴ってすまない」


「ウエさんは武器に関してかなり神経質なんだ。気にすることはない」


「うぅ……あの人、怖い」


 エンリィとの第一印象は最悪だった。


「ウエさん。武器磨きをやらせてもらえるか?」


「あぁ、構わないが、取り扱いには気をつけてくれ。大事な売り物なんだ」


「分かっている。エンリィ。俺が手本を見せるからよく見てくれ」


「は、はい」


 装飾屋にある武器や防具にも同じようなものがたくさんあるが、僅かな違いがあり、一見何が違うのか分からなくなる。

 だが、それを見極めてこそ真の装飾屋と言える。


「ナオユキ先生。武器は濡れたタオルで拭き上げないんですか? 乾いたタオルで拭いても磨き上げた感じがしないと思うのですが」


「ん? あぁ、本当は濡れタオルなんかでゴシゴシ拭きたいところだが、武器っていうのは繊細でな。やり過ぎるのもよくないんだ。それに水分を与えると錆びることだってある。だから一つ一つ丁寧に磨き上げることが必要なんだ」


「へぇ。なるほど。奥が深いんですね」


 武器のメンテナンスの方法にも違いがあり、エンリィに教えたことはほんの一部のものだけ。


「フゥ。終わりました。ウエさんはこんなこと毎日やっているんですか?」


「まぁな。仕事というのもあるが、武器を触っている時は心を落ち着かせられるんだ。半分、好きでやっている」


「凄いですね。私にはとても出来ません」


「武器っていうのはただの道具じゃないんだ。人と人を繋ぎ合わせるツールのようなもの。武器の使い方や使う人にもよって目的が違う。自分に合った武器っていうのは運命の巡り合わせだ。俺はそんな人と武器を巡り合わせの瞬間が嬉しくてこの仕事をしている」


「えっと。分かるような、分からないような……。えへへへ」と、エンリィは作り笑いをする。


 こいつ、あんまり分かっていないなと俺は心の中で呟いた。


「ウエさん。今日はあの作業はしないのか?」


「あぁ、これからするところさ」


「あの作業って?」


「エンリィ。武器が出来るところを見たくないか?」


「え? 見たいです。まさかウエさんが武器を作っているんですか?」


「あぁ、そうだぜ。装飾屋の裏に作業場がある。そこでいつも作っているんだ」


「是非、見せて下さい」


「喜んで」


 作業場にはかまどや鉄を叩く作業机があった。

 工具は散らかっているけど、作業途中の武器はきちんと仕分けがされている。


「今、ある勇者の聖剣をオーダーメイドで作っているんだ。もう少しで完成予定さ」


 ウエさんは鉄を高温のかまどの中に入れて取り出したらハンマーで叩く。

 その作業を永遠に続けていた。

 熱気や熱い鉄のせいでサウナのような暑さで参ってしまうほど。

 それでもウエさんは作業を続ける。


「凄い。武器一つ作るのにこれだけ手間が掛かるなんて」


「ちなみに今作っている聖剣は一ヶ月以上掛かっている」


「どんなに掛かるんですか?」


「俺は武器を作るのに一切の手は抜かない。それを考慮しながら作るとそれぐらい掛かるんだ」


「ヒェッ! 知らなかった」


「どうだ。エンリィ。武器を作るのにこれだけの労力が掛かっている。勇者をサポートする仕事っていうのは現場での危険は少ないが、その裏では多くの努力の積み重ねだ。俺が過酷だって言った理由を少しは理解出来たか?」


「はい。ナオユキ先生が私に教えてかったことは何となく理解出来ました」


「まぁ、今は何となくで十分だ。これから少しずつ知っていけたらそれでいい」


「はい。あの、私も鉄を打ってみたいです」


「危ないからダメだ。と、言いたいところだが、今回は特別だ。ウエさん。果物ナイフ程度の武器をエンリィに打たせてやってくれないか?」


「あぁ、好きなだけどうぞ」


「ありがとう。エンリィ。俺が手本を見せるからよく見ておくんだ」


「はい。ナオユキ先生」


 こうしてエンリィの職業体験は少し変わった形で進みながら学ぶことができた。

 この経験をもとにエンリィの功績が上がり、卒業までの道のりへ一歩また前進した。



ーー作者からの大切なお願いーー

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