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第十二話 入学、新たな新入生


「さて。食事が済んだら帰るぞ」


「はい」


 勇者アカデミアの寮に戻ってエンリィが一通りの世話を済ませた。

 風呂に入れたり、身体の手入れをするだけでも一苦労だ。

 服などはアカデミア指定の体操服を着せることでみすぼらしさは消えた。

 ルリディアは奴隷から普通の女の子に変わった。


「うん。イイ感じになったじゃないか。エンリィ。身の回りの世話、助かったよ」


「いえ、いえ。意外と自分が楽しんでいたので」


 俺は耳打ちをするようにエンリィに聞いた。


「それでルリディアの身体に傷はなかったか?」


「背中と腰の辺りに痛々しい傷がありました。それと全身に細かい傷がいくつかありました」


「そうか。やっぱり拷問を過去に受けていることは間違いない。ルリディアの接し方には気をつけないとな」


「はい。それなら私に任せて下さい。カレンは少し空気が読めないところがあるので私がまとめてフォローします」


「頼んだぞ。エンリィ」


「お任せ下さい。ナオユキせんせー」


 ボソボソと話している俺たちの姿にルリディアは首を傾げる。


「あ、あの……」


「あぁ、ルリディア。何でもないぞ」と俺は聞かれたのではないかと、慌ててしまう。


「私なんかのためにここまでよくしてくれてありがとうございます。あの、私の役目はなんでしょうか。拷問用の道具ですか? それとも労働力として働きますか? 逃げも隠れもしませんので好きなようにして下さい。ご主人様」


 ルリディアは態度も口調も完全に奴隷の振る舞いをする。

 奴隷時代の行いが残っているのだろう。


「日頃からどんな扱いを受けてきたんだよ。俺はそんなことしないよ」


「へ? では私の役目は何をすればいいのでしょう? 私を買って下さった分と食事や衣服などの金額分はしっかり働かせて下さい」


 未だに他人に対して怯えている様子を見せた。無理もない。今まで優しくされたことなんてなかったのだろう。


「お前はどうしたいんだ? 自分の意思でやりたいことを言ってみろ」


「私は特にやりたいことなんて……。言われたことをただやるだけの人生ですし」


 ルリディアを買い取った俺の責任もある。だが、この子をどうするかは俺が決めることではない。本人の意思で決めることだ。


「なら、ここで勇者を学ばないか?」


「勇者?」


「ここは勇者アカデミア。勇者に関して基礎知識を学べる俺が設立した場所だ。お前はここの新入生として学んでやりたいことを見つければイイんじゃないのか?」


「でも私みたいな亜人族が学べるような逸材ではないと思います。それに私には入学できるような資金だって持ち合わせていません。学ぶくらいなら雑用でも何でもしてタダ働きさせて下さい」


「まぁ、確かにタダで入学させるには致し方ないところはあるが、奨学金制度を推奨しよう」


「しょーがくきんせいど?」


 ルリディアには難しい言葉であった。


「まぁ、簡単に言えばやりたいことを見つけた後にその稼いだ資金の何割かを後払いって形にする方法だ。それなら今、手元になくても入学は可能だ」


「奴隷の私に出来るでしょうか?」


「もう、お前は奴隷でも何でもない。一人の亜人族だ。大丈夫。俺の指導を守ればお前だって立派な勇者になれる。自分を変えてみろ。ルリディア」


 ルリディアは背中を押されたようにグッと拳を握り込んだ。

 そして、自分の意思で決断する。


「なら私、頑張ってみようかな。ご主人様に……いや、ナオユキ先生についていきます」


「歓迎するよ。ルリディア。お前は今日からここの生徒だ」


「はい。よろしくお願いします」


 俺の勇者アカデミアに初めての亜人族の子が入学した。

 種族が違う分、教え方を考えなければならないが、問題ないだろう。

 亜人族の特徴や傾向など俺が勇者だった頃に関わったことがあるからその経験をうまく活用できるはずだ。


「俺が見られる時は見るんだが、何かと忙しい時もあるから同居人を付けよう。エンリィとカレン。ルリディアの面倒を頼めるか?」


「お任せください。よろしくね。ルリディア」


「ま、まぁ。私に何でも聞いて構わないぞ」


「二人ともよろしくお願いします」


 三人は一致団結した。そして、ルリディアにとって新たな生活の幕開けでもある。


「まぁ、最初は色々困ることも多々あるだろう。だが、分からないことは二人に聞いてくれ」


「はい。何から何までありがとうございます」


「気にするな。さて。今日はもう遅い。細かいことはまた明日に取り組めばいい」


「では、後は私たちで対応します。ナオユキ先生、おやすみなさい」


「あぁ、おやすみ」


 ルリディアをエンリィとカレンに任せた俺は寮を出て自分の部屋に戻った。

 




 だが、その日の深夜。


 ガシャンという物音がしたことで俺は目を覚ます。


「何だ。今の音は……」


 音は寮の方向だ。窓ガラスが割られている。あれはエンリィとカレンの部屋だ。


「エンリィ! カレン!」


 部屋を覗くと二人は倒れている。いや、カレンは寝ている。

 そしてエンリィは息を切らしている。


「エンリィ。大丈夫か? 何があった?」


「私は大丈夫です。ルリディアちゃんがどこかへ行ってしまいました。止めたんだけど、暴走しちゃって」


「暴走? 待っていろ。俺が連れ戻す。お前は部屋から出るんじゃないぞ」


「お願いします。ナオユキ先生」


 俺はどこかへ行ったルリディアの行方を追う。

 すると俺の全体像のある中央広場でルリディアが四つん這いになりながらウロウロする姿を目撃する。


「ルリディア!」


「ガルルルルル」


 ルリディアの意識はない。というより野生化している。

 俺は止めようと近づいたその時だ。

 ルリディアは牙を向けて俺の肩に噛み付いた。


「グッ……」


 痛いけど、それ以上に俺はルリディアを抑え込もうと優しく抱きしめた。


「もう大丈夫だ。何も怖くない。ゆっくりおやすみ」


 すると、奴隷刻印の紋章が光り輝いた。

 それによりルリディアの野生化は収まり、元の姿に変えて寝息を立てていた。


「何とか収まったか。だが、放っておくと生徒に被害が及ぶ。エンリィとカレンに任せるのは危険かもしれないな」


 亜人族には未知数の力があり、まだ解明されていない事実も存在する。

 様子を見ながら生活を送る必要があるようだ。

 ここは奴隷刻印の力を借りて暴走した時のことに備えて力を制限しよう。


「封印! 絶!」


「…………がっ!」


 俺は奴隷刻印に魔力を込めた。

 急激な力が働いた場合、強制的に気絶させる電流が働くようプログラムした。

 これで万が一の場合に備えることはできる。そうならないように日頃の指導を徹底しようと心に決めた。


ーー作者からの大切なお願いーー

「面白い!」

「続きが気になる!」

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