第一話 追放、そして元勇者へ
新連載!
「追放するのはお前だ! ナオユキ!」
俺、堺直之は唐突に追放を宣告された。
「は、はぁ? ちょっと待て。何で俺が追放されなきゃいけないんだよ。納得出来ない。説明してくれ!」
追放者を決めなければならないイベントが起こってしまったのは新規メンバーを受け入れたことから始まった。
俺たちは元々四人のメンバーで構成された勇者パーティーだった。
リーダーを務める勇者のダイガ・ブライナは仲間思いで度胸のある好青年だ。
剣の勇者として俺たちの勇者パーティーの要とも言える人物で強さが自慢の熱い男だ。時に大事な決断をしてくれるので頼りになる兄貴と言える。
率先して俺たちを引っ張ってくれるので何かと頼りになる。
弓の勇者の河原浩介。コースケと言われ、小柄で細々と大人しい少年だ。
茶髪でパーマをかけており、見た目を気にする女々しいところが特徴。
だが、見た目の割に弓を使った遠距離タイプの戦闘を得意として十キロ先でも的確に射抜く才能がある。遠距離の戦いで右に出る人物は居ないと言い切るほど自身の才能に自身を持っている。いわば、遠距離の要と言えるメンバーだ。
槍の勇者の剛力太。ゴーリキの愛称で言われ、身体が大きく筋肉がかなり発達している。見た目通り、力が自慢で大岩を砕いたり、モンスターを一キロ先まで投げ飛ばせるほどとてつもないパワーを誇る。
力勝負でゴーリキに叶うものを見たことがないほど馬鹿力と言える。
そのことから近距離の要でどんな敵でも怯まない精神力がある。
そして俺、堺直之はナオユキと言われ、平均的な体格と見た目をしている。
何々の勇者としては所属しておらず、ありとあらゆる武器を器用に使いこなすが、何かが尖った才能を持ち合わせている訳ではない。
全てが平均で満遍なく何でも使いこなせる器用貧乏と言われている。
それが悪口なのかは捉え方夜だろうが、メンバー内ではバカにされる言い方が多い。
とまぁ、俺たちの勇者パーティーはこの四人で構成されている訳だが、そこに新たなメンバーを迎い入れる形になった。
その人物は魔道士のアミカゼ・ゼファーという美人のお姉さんだ。
魔術に特化した才能があり、記憶力が高いことが評価されていた。
魔道書に書かれた呪文を全て覚えている他、一度歩いた道は忘れることがないのでダンジョンなど入り組んだ道ではその才能が開花されることは安易に予想できた。
さらには扱う魔術は高威力であり、臨機応変に属性を変えられることから即戦力になるほか、男性だけで構成された勇者パーティーに花が咲くとリーダーはメンバーに加えることを決断した。
しかし、五人以上になると連携が取れなくなり多くても四人が妥当とされる為、一人を追放するという重い決断に踏み切ったのが今回の経緯だ。
そしてその追放者は俺に選ばれた訳だが、その理由をリーダーは語る。
「ナオユキ。説明せずとも自覚があると思うが、俺たちには何かしら尖った才能を持ち合わせている。コースケなら遠距離に関しての才能。ゴーリキなら力自慢としての才能。そして今回迎い入れるアミカゼちゃんにも高い記憶力と魔道士としての才能がある。それに比べてナオユキ。お前はどうだ? これといって何か才能があるか?」
「お、俺には全てを平均的に使いこなせるという才能が……」
「そんなもの才能とは言わん! 平均的? そんなもの誰が必要とする? これといった才能がない自分を憎め! 自覚しろ!」
「リーダー?」
今まで長い旅を共にしてきたリーダーの言葉とは思えなかった。
いや、今まで言えなかった分、この機会になって発散されたのだろうか。
「ナオユキ。リーダーの言う通りです。この先の戦いはより険しくなります。今の君ではついていけないでしょう。残念ですがそういうことです」
コースケは諦めたように目を瞑る。
「確かにナオユキ殿は尖った才能がない。平均的の才能というのは言い換えればそれ以上の才能を見越せないとリーダーは言いたいのではないのですか?」
ゴーリキは代弁するように言う。
「そういう訳だ。ナオユキ。悪いがお前はここで……」
「ちょ、待ってくれ! 聞いてくれ。大体、おかしいだろ。俺たちは結成当初からずっと旅をしてきた仲だろ。嫌なこと、辛いこと、そしてそれを乗り越えた達成感を一緒に歩んできたじゃないか。それなのに素性もよく分からない女魔道士が入りたいからってアッサリと仲間を追放って正気か? お前らは仲間より女を優先するのか? それで未練はないのか。もう少し考えてから決断をしても遅くない」
「見苦しいぞ! ナオユキ!」
リーダーの張り上げた声で俺は固まる。
「これはもう決定事項だ。お前をこれ以上の同行を認めない。追放だ」
「待ってくれ。別に追放しなくても五人で頑張れば良いじゃないか。そうだ。そうしよう! な? いいだろ?」
「ナオユキ。リーダーとしてこの際だからハッキリ言わせてもらう。お前、勇者に向いていないよ」
「はぁ?」
「同感です。ナオユキにはそもそも勇者の才能がないのかもしれませんね」
「うむ。ナオユキ殿に勇者は酷だったかもしれん。その際だ。辺境でのんびりと暮らすのもいいのかもしれんぞ」
コースケとゴーリキは同情してくれるどころか、むしろリーダーの意見に乗っかっていた。
「あらら。何だか私のせいでごめんなさいね。ナオユキさん。いや、元勇者のナオユキさん。これからはあなたが抜けた穴を埋められるように頑張らせてもらいますね」
アミカゼは優越感に浸りながら俺を見下す。
どうしてだ。どうして俺が追放されなきゃいけないんだ。
俺が何か間違えたのか?
いや、俺じゃない。こいつらの選択が間違えたんだ。
「そういう訳だ。ナオユキ。ま、悪く思うな。恨むなら自分の才能の無さを恨むんだな」
ポンとリーダーは俺の肩に手を置いた。
だが、俺はその手を振り払った。
「上等だ。望み通りに出ていってやるよ。精々、新しい女とよろしくやっていろ。じゃあな。まぁ、二度と会うことはないかもしれないが」
俺は元勇者パーティーを背にして歩き出した。
当然、誰も俺を追ってくる奴はない。所詮はその程度の仲間意識だったと言うことだ。
「ふっ。強がり言いやがって」と、リーダーは鼻を鳴らす。
「泣いているんじゃないんですか?」と、コースケは目を凝らしながら言う。
「まぁ、奴なりの別れの挨拶かもしれんな。知らんが」と、ゴーリキは興味無さそうに言い放った。
「では改めまして、皆さん。これからよろしくお願いしますね」
ニカッとアミカゼは笑顔で言う。
新生勇者パーティー結成の瞬間だった。
そして、俺は勇者パーティー追放の末、たった一人で村を目指す。
この先、自分がどうなってしまうのか、明日のこともその先も何も考えていない。
「俺、勇者に向いていないのかな」
自分が勇者であることが疑問になっていた。
そもそも勇者になったこと自体が間違いだったのではないだろうか。
勇者になる逸材じゃなかったのだろうか。
何を信じればいいのかもう分からなかった。
俺はたった今、元勇者になった。
ーー作者からの大切なお願いーー
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未書籍化作者の新作になりますが、お付き合い下さい!