表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に百合営業をしかけたら本気にされてペットにされました  作者: らびえ
番外編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/161

急転直下

「…………むぁ」


 意識が、次第に戻っていく。

 休眠状態にあった自分が、少しずつ形どられていく。



 眠っていた、そんな当然の理解は必要ない。

 目覚めてすぐに想ったのは、いつも通り愛する人のこと……。


「おはようございます、マリーさ…………ぁ……?」


 ……隣には、いなかった。

 ならばと思って部屋を眺め回しても、あるのは空虚な空間ばかり。


 まだ朧げだった意識が、急激に覚醒へと向かう。


「……マリー、さん。どこですか」


 いない。いない。いないいないいないいないいない。

 出かけた気配はない、もしそうなら確実に分かる、そうでなくても……彼女が、何も言わずに出ていくはずがない!


「……っ! ルーシーさん! ルーシーさんっ!」


 窓を開け、出したこともないような大声で叫ぶ。

 昨日の今日のこの状況で、真っ先に頼れるのは彼女だけだった……しかし。


「……こ、ない……?」


 普段は、マリーさんがこうして呼べばすぐに来てくれる。

 しかし今日に限っては、どれほど待とうと彼女が現れる気配はなかった。



 きっと他に用事でもあるのだろう、そう解釈したいが……。


「…………。違いますね。これは絶対に、普通じゃない」


 直感的に、そう思った。

 今すぐにでも駆け出したい衝動を抑え、もう一度部屋を眺め渡す。


 冷静さを失ってはいけません。

 もしも今が本当に、私の想像通りの状況ならば……。


「……何をやっているのです、私。マリーさんは、私が守るんでしょう……!」


 余計なことを考えるのはやめましょう。

 とにかく今は、一刻も早く。






 ***






「イリーナさん! イリーナさん、イリーナさんっ! 起きてください!」

「ふあ……クリスぅ? どうしたのですか、こんな朝早くに…………あっ」


 ……イリーナさんの部屋を訪ねたら、当然のようにアンさんが出てきました。


 なるほど。

 私たちの部屋を訪ねた時のイリーナさんの気持ちが、今になって分かります……。


「……って、そんなことどうでもいいんです! アンさん、イリーナさんは!?」

「イリーナ……さんなら、まだ眠っていますよ。後で……」

「今すぐに! マリーさんがいなくなったんですっ!」

「…………。入りなさい、クリス」


 話が早い。

 部屋に上がり込み、私たちの部屋のそれと同じ位置にあるベッドを目指す。


 確かにアンさんの言った通り、イリーナさんは眠っていました。

 可愛らしい寝顔ですやすやと……叩き起こすのは流石に気が引けますが、それでも……!


「……イリーナさんっ!」

「ぴぇぁっ!? く、くく、クリスしゃん!?」

「起きてください! マリーさんが、いま……!」

「少し落ち着きなさい、クリス。声が大きい」


 アンさんに咎められた。

 つい大声を出してしまったのは反省ですが、落ち着くわけにはいきません。

 落ち着いてなんていられません。


「お、おはようごじゃいまひゅっ! クリスさ、えと、あれ……なんで私の部屋に……?」

「すみません、緊急事態でして……」


 現時点で分かる限りのことを二人に話す。


 やはりと言うべきか、アンさんはやや首を傾げていましたが……イリーナさんは……。


「……そ、そう……ですか……」


 煮え切らない反応。

 そんな気はしましたが、やはり……!


「……イリーナさん。何か知っているなら、話してください」

「ちょ、ちょっとクリス? まさかイリーナさんを疑っているんですか?」

「いえ、そういうわけでは。でも……」


 無論、イリーナさんが直接関わっているとは思っていません。

 ただ、彼女もまた何かを知っている可能性はある、と思っていました。


 私だけは(・・・・)絶対に知りえない、何かを。


「知ってる……わけじゃ、ないんですけど。夢とかそんな感じで、何かを覚えているような……そんな気は、します」

「何でもいいんです。少しでも、本当に少しでもいいから、『私』の情報を……お願い、します」


 頼み込んでは見たものの……やはりと言うべきか、彼女には迷いが見えました。

 今の私には断片的にしか察せないものの、やはり話しづらいことなのでしょう。


 けれど、退くわけにはいきません。

 私には……私にだけは、その記憶がないから。



 別の世界の私の、私たちの、記憶。

 『その世界』の記憶を、私は持っていないから……。


「……私が知っていることを話したら、マリーさんは……見つけられますか……?」

「……分かりません。私が原因だと思っていることも、想像に過ぎませんから。もしかしたら、マリーさんがいなくなったこととは全然関係がないのかも……」

「いいえ」

「……っ」


 断定するような口調。

 天真爛漫な彼女は、吹っ切れたように……口元だけ歪ませて、言った。


「関係、ありますよ。知ってます。全部じゃないけど、聞きましたから」

「……それじゃあ」

「お話しします。本当に夢みたいだし、ぜんぶ間違いかもしれないけど……私が見て、聞いたことを」


 急く私を窘めるようにゆっくりと、イリーナさんは語り始めました。

 見てきたように鮮明な、別の世界のこと。



 私たちとは違う私たちの、それでもやっぱり愛だったこと。






 ***


 ***

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ