新たな仲間……?
「マリーさん、マリーさん」
「ぁぅ……ん……?」
ぼんやりと靄のかかった世界が、規則正しく揺れ動く。
喉は乾くし体も痛いが、瞼が重くて上がらない……。
「朝ですよ、マリーさん……起きてください」
「みむゅ゛みぁ……」
「え、なんと?」
無理に返事をしようとしたら変な声が出た。
まだ覚醒には至っていない。
なんだろう、疲れてるのかな。
頭がぼーっとして、どうにもすっきりしない……。
「うぅ……ん……。ごめんクリスさん、ちょっとほっぺたを……」
「分かりました!」
「ぬぎゃっ!?」
頬でもつねってもらおうとしたら、思いっきり張り手を喰らわされた。
ふらふらの頭と体幹に響く。
倒れたところも布団だったし、目も覚めたから別にいいけれど。
「おはようございます、マリーさん」
「ああうん、おはよう……あの、もうちょっと手加減してくれませんかね」
「生半可な暴力では、マリーさんは目覚めませんので」
「私そんなに寝起き悪いかなあ? ってか暴力って自覚あるんじゃんか」
そんな軽口を交わしつつ、それぞれベッドから出て身支度を始める。
着替えて、お互いの髪を櫛でとかして、日差しを浴びて伸びをして。
まあ、いつも通りの朝のルーティンってやつだ。
「──ぐあっ!?」
「な、何!?」
「アル!?」
そんなことをしていたら、天井から草の塊……じゃなくてアルさんが落ちてきた。
いつも通りじゃなくなった朝である。
「し、失礼いたしました! その、天井が外れてしまい……!」
「……早く出ていきなさい」
「は、はいっ!」
なんかもぞもぞ動いていた草の塊は、天井にジャンプして消えていった。
見ると確かに、天井に穴が開いている……だからってなぜ天井から降ってきたのかについては考えないことにしておこう。
ここはそういう場所なんだ。多分。
「ふむ……おかしいですね」
「ど、どこが?」
「アルが天井裏を通っているのはいつものことですが、落ちてくるなんて。どこか具合でも悪いんでしょうか?」
「うーん……うーん……?」
おかしいのはどこでしょう。
全てだ。
「まあ、考えても仕方のないことですね」
「そ、そうだね……?」
「行きましょう、マリーさん」
「……ん、分かった」
気にしても仕方がない。
無理やりそう思い込んだところで、クリスさんが手を差し出してきた。
温かいその手をしっかりと握り、連れ立って部屋を出る。
なんかちょっと変なことはあったけれど、いい朝だ。
「マリーさん、すこしお散歩しませんか?」
「ん、いいね」
せっかくのいい天気だ、たまには二人でのんびり過ごすのもいいな。
靴を履き、歩きやすい靴に履き替えて外に出る。
朝の日差しが心地良い。
涼しく、されど冷たくはない風が少し火照った体を撫でる。
のびのびと広い庭のような場所、ふわっと広がるクリスさんの金髪、こっちに向かって爆走してくる大型犬…………。
「……え?」
「は?」
「ワンッ!!」
…………いや、は?
なんで?
なんでなんでなんでなんで!?
「ま、まままマリーさん……あれって……!」
「うっそだろお前!? またついてきたの!?」
「ワワンッ!」
こちらに向かって突撃してきた犬。
何を隠そう、私の愛犬オリバーである。
……なんでだよ。
なんでここにいるんだよ!
「ちょま、やめ、わかった分かったから急に飛びつくなって……!」
「ワフ……ワウッ……!」
いや、分からないけど。
何も分からないけど。
オリバーのことを舐めていた……? そんな馬鹿な。
ちゃんとリードと首輪もつけて、イリーナちゃんにいない間の世話頼んできたんだぞ!?
なんでそこまでしたのに平然と脱走してるんだこの犬は!!?
「あら? 何やら声がすると思ったら……」
「い、犬!? 一体どこから……!」
「アルさん、落ち着いてください……ふふ、可愛いですね。マリー様の飼い犬でしょうか?」
「イッヌ……!」
「U^ェ^U (*゜∀゜*)」
ああもう、皆様お揃いで。
迷惑極まりない騒々しさだ。
まだ早朝なのにさあ……全くこいつは……。
「ったく、こいつめ……」
「……マリーさん?」
モフ。
「いつもいつも付いてくるんだもんなあ、お前本当に犬か? 嗅覚ってレベルじゃないしさあ」
「あ、そ、そうなんですね。あの……」
モフモフ。
「本当にもう……本当に……」
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ。
──うん、今日もいい毛並みだ。
私が育てた。
「マリーさん……」
「んえ? クリスさん、どうかした?」
「…………」
な、なんだその見たことないレベルのむくれ顔は。
一体何が……ハッ。
「も、モフモフ〜……なでなで〜……?」
「えへへ」
「あ、これでいいんだ……」
クリスさんの髪をモフモフしておいた。
オリバーとはまた別の良さがある……モフモフもそうだがサラサラだ。
干した布団のようないい匂いがする。
ダニの死骸とか言わない。
「……!」
「(´∀`=)」
「ワンッ!」
「!!!!」
「( *`ω´)」
そんなことをしている傍らで、特にキャラの濃い二人がオリバーと戯れていた。
平和な光景である。
「ひ、ひい……吠えた、吠えましたよ!」
「みっともないですよ、アル。クリスを見なさい、あれだけ苦手だった犬を見ても、身じろぎ一つしませんよ」
「アルさん……ほら、可愛いですよ……?」
あっちはなんか……なんだ……?
ビビってる草塊と囃し立てる二人。
うん、賑やかだ。
ちなみにクリスさんはしっかりビビっている。
めちゃくちゃにビビっている。
表向き平静を保てるくらいにはなってきたものの、握りっぱなしの私の手に爪が深々と食い込んでいるのだ。
すごい痛い。慣れたけど。
「さて、とは言っても……ここにいる間、オリバーはどうすれば……?」
「イッヌ……」
「え、ニチャンさんがお世話してくれるんですか!?」
「d(^_^o)」
「ジモーさんまで! ありがとうございます!」
「なんで分かるんですかマリーさん」
フィーリングだ。
そうとしか言えない。
やはり動物は言語の壁を越える。
「それじゃあオリバー、いい子にしてるんだよ?」
「ワンワンッ!」
「mksr」
「( ̄^ ̄)ゞ」




