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悪役令嬢に百合営業をしかけたら本気にされてペットにされました  作者: らびえ
番外編

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119/161

大嫌い

「どの面下げて言ってんの、ルーシー。ボクはキミのせいで……」

「ミラ。あなたの体のことが分かったよ」

「……なに?」


 あくまで落ち着いた調子で、ルーシーちゃんは喋り出す。

 ミラちゃんの方は……努めて冷静でいようとしている、という感じだろうか。


 やはりふたりの間に距離を感じる。

 ごく断片的にしか事情を知れていないのが歯痒い……。


「お父さ……神に直接聞いてきた。あなたのその体は別の世界で生まれたとある人間のもので、魂は単なる生まれ変わり。輪廻転生ってやつ、よくあることだよ」

「……! その別の世界って、まさか……!」

「勘がいいね、マリーちゃん。そうだよ、あなたが生まれた世界。と言っても、前のマリーちゃんとミラには特に接点はなさそうだけど」


 厳密には一点。

 おそらくは、生まれた国は同じだったのだろう。


 ミラちゃんが日本語であの手紙をよこしたのは……無意識か、それを知ってのことなのか。


「……ふうん。で、なんでボクはここにいるわけ? 世界を渡るなんて真似、した覚えはないけど」

「暇つぶしだってさ。よくあることだよ、あの神にとっては。ある時偶然死んだあなたの魂が、昔々わたしと友達だったミラのものと同一だってことに気づいて、親切心で(・・・・)傷を治してこっちの世界に送ったんだって」

「趣味わる……」


 あの神らしいのが腹立たしい。

 暇つぶしに世界を創ったあいつなら確かに、ほんの手遊びでそれくらいしてもおかしくない……。


「記憶に関しては明確に戻した覚えはないけれど、覚えていてもおかしくはないって。人間如きの執念にしては大したものだ、とか笑いながら言ってたよ」

「執念……」

「まあ、そこは別にいいんじゃない。体自体は別人ではあるけど、あなたはあなただ。生きてて後ろめたいこともなければ、元の世界に戻ることもない……何せ向こうでは死んでるんだから」

「…………」


 ……まあ、そうかもしれない。

 私だって仮に前の体に戻ったとしても、前の世界に帰ろうとは思わないだろう。


 居場所なんてないだろうし、戻ったって困る。

 向こうの私はとっくの昔に墓と鬼籍の中だ。


「じゃあ、そういうことで」

「え、ルーシーちゃん? どこ行くの?」

「帰るよ。もうこの場所に用はない。迷惑かけてごめんね、マリーちゃん」

「待って……っ。な、なに? ミラちゃん……?」


 立ち去ろうとした彼女を追おうとすると、ミラちゃんに腕を掴まれた。

 制止するように。


 影のように無表情な彼女は、余計なことをするな、そう目で訴えかけていた……。


「…………。その子に手を出すな、ミラ」

「キミが利ける口? とっとと失せなよ、もう用はないんでしょ」


 私を挟んで、冷たい目線が交差する。

 私のために争わないで、なんて茶化せるような雰囲気では到底ない。

 ……いっそ、そう言えた方がよほどいいだろうか。


「自分で言っていたでしょ、孤独には慣れてるって。斜に構えて拗ねてどうしたの? 今更人恋しくなった? どうせ人との関わり方なんか知らないくせに」

「昔の話だよ。キミは変わらないね、ルーシー? 自分から不幸になりにいくとか馬鹿みたい。なんのために生きてんの?」


 容赦のない言葉の応酬だった。

 深く傷ついた顔をしているのを、本人たちは気付いているのか。


 頭が痛くなってくるようだ……。


「……はっ。忌み子風情が偉そうに」

「……そっちこそ。化け物のくせに」


 ──いや、本当に頭が痛い。

 なんだ、これ。

 割れるようだ、なんていうけど、大袈裟じゃなく割れそうだ。

 ただ痛い、苦しい、痛い痛い痛い痛い痛い……!


『──悪いね、マリーちゃん。下手に私が出ていくと余計にこじれそうだから』

「……ぇ」

『きみにしかできないんだ。本当に申し訳ないとは思ってるけど……頼んだよ』


 ……だれかの声が……きこえる。

 この……感覚は。


「……マリーちゃん? どうし……マリーちゃん!?」

「なっ……どうしたの!? しっかりして!」


 夢の中に落ちるような、思い出の中に引きずりこまれるような。

 そんな感覚が、した。






 ***


 ***






『──ねえ、ルーシー?』

『なあに、ミラ』


『人は、いつか死ぬんだって』

『……? そうらしいけど、なんで?』

『じゃあ、ルーシーは? ルーシーはどうなるの?』


『わたしは……さあ。知らないけど』

『吸血鬼って、寿命とかないんでしょ? それに怪我もすぐに治っちゃうし、病気だってあんまりならないんでしょ? じゃあ、ルーシーは……』


『……死なない、かもね。少なくとも、あなたより前には』

『えー』

『……嫌?』


『だって、ルーシー友達できないし』

『それが何か……いやそんなことないし』

『ボクが死んだら、ルーシーはひとりぼっちだよ。寂しく、ないの?』

『…………』

『ルーシー?』


『……見てて、ミラ』

『……? う、うん』

『光れ、想い朽ちるまで。守れ、命果てるまで。飛べ……その身が尽きるまで──!』



『──わ。すごいね、意識飛んでたかも』

『だ、大丈夫……?』

『うん。それより今のがあれ? えーと……』


『魔法で衝撃波を作ったの。詠唱はなくてもいいけど、あったほうが安定する』

『そうそれ。それでええと……何の話だっけ』


『ミラ。わたしが、あなたを守るよ』

『えっ?』

『何にだってあなたは殺させない。いつかお別れだったとしても、それまでにたくさん……たくさん遊べるように。そうすればきっと、ちょっと寂しく無くなるでしょ』

『…………』

『ミラ……?』


『……うん。そうだね』

『……!』

『たくさん思い出を作ろう。いつまでも持っていけるくらい、たくさん』

『うんっ!』





『──そんなもの、必要ない』

『──そんなこと、覚えていたくもない』

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