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悪役令嬢に百合営業をしかけたら本気にされてペットにされました  作者: らびえ
番外編

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決別

「──やっぱり来てくれたね、マリーちゃん。信じてたよ」

「ミラちゃん……」


 指定した場所にひとりで向かうと、予想通りの人影があった。

 やはり、あの手紙をよこしたのは彼女だったか。


「そう身構えなくても、大した話じゃないよ。ただ……友達になりたいって言った以上、誰よりもキミに黙っておくのはフェアじゃないと思ったから」

「何を……?」

「もちろん、ボクの体のことだよ」

「……話してみて」


 どこか不安そうな所作で佇む彼女は、やはり独特な雰囲気を纏っていた。


 今真っ先に目についたのは、口調と表情が合っていないところ。

 あくまで軽い調子ながら、この世の終わりかのごとく暗い顔をしている……。


「先に断っておくけど、ボクがこれからする話には推測が含まれる。そういうこと(・・・・・・)への知識があるわけでもないから、間違ってると思ったら遠慮なく言って」

「わ……分かった」


 そういうこと。

 異世界とか、魔法とか……転生とか。

 そういった、人智を超えたものということだろう。


「まず、一つ。ボクはこの体をボクのものとして扱っているけれど、実際にはそうとも言えないんじゃないかと考えている」

「そうとも言えない?」

「簡単な話だよ。この体の所有者はこの時代に生きているどこかの誰かであって、ボクはそれを借りている。あるいは許可なく乗っ取っている、とか」

「……どうしてそう思うの?」


 今、私が『ミラちゃん』として認識している目の前の少女。

 少なくとも中身はそうなのだろうけど、肉体的にはそうでないと?


「大したことじゃないよ。体の感覚が違うとか、好きな味や匂いが違うとか、ものの見え方が微妙に違うとか。……でも一番大きいのは、これまでこの体で生きてきたという記憶をボクが持ち合わせていないことかな」

「…………」


 確かに彼女はそう言っていた。


 私の場合、今のこの体……マリーとしての体のままで生まれてから現在までを生きてきている。

 それ故に自分の体は自分であり、そこに違和感を感じたことはない。

 だが、彼女は……?


「これはまあ、いい気分ではないね。仮にこの推測が事実だとして、ボクはこの子の人生を不当に歪めていることになる」

「……でも、確かめる方法は? それこそただの勘違いとか……そもそも、記憶を保ったままの転生なんて普通するもんじゃないと思うし」

「ないよ。ただのボクの思い違いっていう可能性も十分にあると思う。どちらの説も否定できる根拠はない……だからこそ余計にいい気分ではない、とも言うけど」

「それは……まあ」


 そうだろう、としか。

 少なくとも私の持つ知識の範囲は超えすぎていて、迂闊なことは口に出せない。

 間違いなく一枚噛んでいるであろう神はもちろん、ルーシーちゃんやソフィアさんあたりに聞けばあるいは……。


「ただ正直な話、ボクにはひとつやりたいことがあってね。褒められた話ではないだろうけれど、この状況をむしろ幸運だとも思っているところはある」

「やりたいこと?」

「分かってるでしょ? ルーシーだよ」

「……ルーシーちゃんを、どうしたいの?」


 彼女らの関係性は未だ掴めていない。

 あの時のわずかな邂逅からは、喧嘩中というか……なんとも言えない気まずさを感じたけれど。


「さあね」

「さあって……」

「ボクだってよく分かってはいないよ。こんな生まれ変わり自体、ボクが意図したことじゃないんだから。……強いていうなら、中途半端が嫌なのかな?」

「中途半端?」


 そう呟いた彼女の瞳は。

 気丈で、強い信念があって……。


「ボクは、あの子を立ち止まらせちゃったから。いくら無限の命だからって、そんなのもったいないじゃない」

「……? どういうこと……?」


 その質問に答えてはくれなかった。

 寂しげな色を宿した彼女の視線が、不意に私の後ろに向けられる。


「──来たね。ルーシー」

「…………」


 やや面食らいつつ振り向くと、そこには確かに白髪の少女が立っていた。

 全くの無表情で微動だにしていない。

 いつどうやってそこに現れたのか、かけらも想像できないくらいに……。


「言っとくけど、キミが悪いんだよ? あの後もたくさん殺したらしいじゃないか」

「み、ミラちゃん……」

「マリーちゃん、悪いけど少しだけ黙ってて。何か言いなよ、ルーシー」


 彼女の目が、どんどん冷たさを増していく。


 ……冷静に考えれば、私は部外者だ。

 止める権利などないし、下手な口出しをするべきでもないけれど……それでも動くに動けない。


「──会いたかったよ。ミラ」

「はあ?」


 絞り出したようなルーシーちゃんの声。

 弱々しい瞳を、放っておくことなどできない。






 ***


 ***






『……今日もどこか行くの、ミラ』

『んえっ? ……あー、えと、起きてたの?』

『何日も前から。どうしたの? 昨日もおとといもその前も、明け方まで帰ってこなかったじゃない』


『……別に』

『嘘』

『……なんで?』

『夜中だもん。鼻だってよく効くし、わかるよ。……どこに行くの』


『──ボクとキミはほら、変わり者(・・・・)だから。ね? 家族だっていないし、これくらいしなきゃ駄目なんだよ』

『ま、待って……』

『キミはボクが守るから。だから……待ってて、ルーシー』



『…………知らないよ。そんなの』

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