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悪役令嬢に百合営業をしかけたら本気にされてペットにされました  作者: らびえ
番外編

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117/161

綻び

『る……るー、しー?』

『怪我はない、ミラ』


『な、何やって……!』

『ん、ここちょっと切れてる。治しとくね』


『……っ! やめてっ! 触らないで!』

『え』


『なんでこんなことしたの!? なんでそんな顔できるの!? おかしい、おかしいよルーシー!』

『え……だ、だってあなたが』

『ボクはこんなこと望んでないっ! こうすれば全部、全部丸く収まってたのに、なんで!』


『…………。わたしは……なにか悪いこと、した?』

『なっ……』

『もう、誰も困らないよ。この方がずっと悲しくないよ? ねえ、ミラ……?』



『……知らない。そんなの』






 ***


 ***






「──んあ?」


 ……また、同じような夢を見た。


 気がする。


「おはようございます、マリー」

「ん、おはよ……」


 と言っても、夢の内容なんて覚えているものでもない。

 雰囲気というか空気というか、独特なそれを微かに感じるだけ。


 風景も内容もぼやっとしていて、どこか脈絡がない。当たり前だけど。


「ああ、そうそう。扉の前にこんなものがありました」

「……手紙?」

「はい。宛名がマリーになっていますので、まだ中身は読んでいません」


 丁寧に畳まれ、封のされた手紙。

 簡素な作りだがよくできている。差出人は几帳面な人物らしい。

 ……こんなものをよこす知り合い、いたかな……。


「…………」

「な、なんですか。よ、よよ、読んでないですよ?」

「いや、疑ってたわけじゃないんだけど……その反応で急に疑わしくなったっていうか……」


 別にいいけど。

 隠すものでもない。

 どうせ覗き込んでくるんだし、同じだ。


「まあ、冗談はさておき。開けてみてください、マリー」

「わかってる」


 まあないとは思うが、別世界でのあの手紙……タケくんが私を陥れ、炙り出すために残した手紙という前例もある。

 一応最低限の警戒は……。


「……? マリー?」

「…………」

「な、何が書いてあったんですか……うん? なんです、この文字は」

 

 案の定覗き込んできたクリスが、怪訝そうに首を傾げる。

 読めないのも、理解できないのも無理はない。


 この世界でこれを理解できるのは、私を含めて極一部しかいないだろうから。


「さ、さあ。なんだろうね? 落書きかな、ただのいたずらだよ」

「……マリー。嘘が下手な自覚があるなら、無理しなくていいですよ」


 うん。

 そりゃまあ、通るとは思っていなかった。


「はあ……。これ、私の故郷の言葉だよ。言葉というか、言語というか」

「……故郷、と言いますと」

「私が生まれた世界。こっちから見ると、異世界ってことになるのかな」

「異世界の……文字……?」


 ひらがな・カタカナ・漢字で構成される、私にとっては見慣れた形態の文章。

 日本語だった。


「差出人は書いてないか……。これを読んだらすぐにひとりで校舎裏に来い、だってさ」


 文字そのものに特徴はない。

 裏を返せば、読んでみて違和感のない文字とも言える。


 この手紙を書くために見よう見まねで習得したとかではなく、日常的に書き慣れたものだろう。

 強いて特徴を挙げるならば、やや丸文字気味といったくらいだ。


「ひとりで? 本当にそう書いてあるんですか?」

「うん……送り主は、クリスに読まれることは想定してたのかな」

「でしょうね。もしマリーが起きる前にわたしがこれを読んでいたら、破り捨てて殴り込みに行くところですから」

「や、やめてね……?」


 単なる警戒ともとれる。

 だが、内容を私がそのままクリスに伝えるところまでは想定していたのだろうか。


 もっとも、差出人も分からない状況じゃ大した考察はできないけれど。


「宛名だけはご丁寧にこちらの言語で書かれているあたり、どうしても最初にわたしには読ませたくなかったということでしょうか。あるいはわたしが開いてみて意味を解さない言語であれば、確認を兼ねてマリーに読ませるかも、と」

「内容が確実に私に届くように、ってこと?」

「そうかもしれませんね」

「なるほど……」


 ……まあ、いかにクリスと言えど私宛てとわかる手紙を勝手に開いたりはしない……はず。

 しないよね?


「ふうん……まあいいでしょう。行ってきなさい、マリー」

「えっ? い、いいの?」

「滅多なことはさせませんよ。危ないことがあればすぐに駆けつけますし、それに……」

「それに?」


 クリスの目が泳いでいる。

 明らかに何かを隠している挙動だけど……ひとまず突っ込むのはやめておこう。


「え、ええと……。し、心配しなくて大丈夫です。大丈夫ですよ?」

「心配でしかないけど」

「べっ別に、ハブられて拗ねてるわけじゃないんだからねっ!」

「ハブられて拗ねてるんだ……」


 まあいいか。

 クリスが滅多なことはさせないと言ってるんだ、信じよう。

 ……というか、多少の心当たりはあるし。


「冗談です。気をつけてくださいね、マリー」

「うん、分かってる」


 わざわざひとりで来るよう指定するということは諸刃の剣だ。

 どうしても何か勘繰ってしまうし、警戒されて来なくなる可能性だってある。


 そのリスクは相手だってきっと分かっているだろう。

 分かった上で(・・・・・・)書いたのだ。

 私が姿を現す確信と、どうか警戒を解いてほしいという意思表示の意味で。



 ……まあ、ただの想像だけど。

 都合よく解釈している可能性は否めない。

 それでも、きっと大丈夫だ。

 ほとんど確信のようにそう思った。


「いってらっしゃい」

「いってきます」






 ***


 ***






『……もう、いいんだ』


『ボクが浅はかだった』


『キミは悪くない。悪いのはボクだ……人間だ』



『でも、だからもう駄目なんだ』


『相容れない。分かり合えない。一緒にいちゃいけない』



『もう知らない。いらない。近付かないで』


『ルーシー』


『キミにはもう、友達(・・)は必要ない』

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