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悪役令嬢に百合営業をしかけたら本気にされてペットにされました  作者: らびえ
番外編

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102/161

出会い、困惑

 ***


 ***






「ルーシーさん……ここは」

「クリスちゃんの実家だよ。知ってるんだっけ?」

「え、ええ……幼い頃からよく交流があったもので。ですが……」


 アンちゃんは、怪訝そうな顔にほんのりと不信を覗かせている。



 まあ、無理もない。

 先ほど協力を要請した、彼女からすれば面識のない二人……特にタケという男の子の方は、大分強引なやり方でこちら側に引き入れた。

 それに──これはいつも通りでもあるけれど──ろくに相談もせずどこかに行ってしまったソフィア。

 そもそもマリーちゃんたちを送り出したことだって、半ば賭けのようなものだった。


 ここまでボクの行動を振り返ると、いささか危険な橋を渡りすぎている。

 危険というか、未確定というか。

 一応ボクなりの考えはあるし、ソフィアにもそれはあるのだろうけれど……。


「……うん、間違いない。アンちゃん」

「はい……?」

「イリーナちゃんはここにいるよ」

「……っ!? な、なんっ……!?」


 嗅覚にはある程度自信があった。

 よく出会う人の一人くらいなら、時間さえあれば見つけ出せる。

 ……実のところそれもあって、これまでは積極的に捜索していなかったのだけれど……これはアンちゃんには黙っておこう。


「行こうか」

「は、はいっ……!?」


 門を開き、広い敷地内に踏み入れる。

 姿を隠す魔法と飛行魔法が使えるおかげで、この状況でも移動手段には事欠いていないとはいえ……なるべく節約しておきたい。


 歩けるところは歩く。

 急ぐべきでない時は急がない。

 ……あとはイリーナちゃんさえ見つけ出せれば、ボクの役目は終わったようなものだった。



 もうできることはない。

 やりすぎたくらいだ。

 強いて言うならばこれは精算なのだろう。


「……しかしアンちゃん、キミもちょっと疲れが……ん?」


 ゆっくりと歩きながら、そんな思考を巡らせていると。


「グル……ワウ。ワンワンワンワンワンワンワンッ!!」

「ぅぇ、わ、なっ、ななななっ!?」


 猛進してきた茶色の毛玉。

 一瞬反射で迎撃しそうになって、慌てて取りやめる。


 彼は敵ではなかった。

 ……といってもまあ、そのせいで……。


「ワフ。ワンッ」

「むぐ……うぷ……」

「る、ルーシーさん!? 大丈夫ですか……!?」


 ろくな抵抗もできず、地面に押し倒されてしまった。

 ふわふわの毛が視界と呼吸の自由を奪う。


 マリーちゃんの飼い犬、オリバーくん。

 そういえばここにいたんだっけ。


「……ぷはっ」

「ワウ?」

「いや、ワウじゃないから」

「クゥン……」


 思わずそう返すと、悲しそうな声を上げて下を向いてしまった。

 毎度思うけど、やけに感情のわかりやすい犬だ。


 まるで言葉を理解しているような……でも、それだけではないだろう。


「……そっか。マリーちゃんか」

「ワフ……」

「大丈夫、帰ってくるよ」

「ワン」


 彼にとっても大事な飼い主。

 彼が今の状況をどう理解しているのかは分からないけれど……いなくなって寂しい、それくらいの感情はきっとある。


「……キミも、ボクたちと一緒に来る?」

「ワンッ!」


 立ち上がりながらそう言うと、彼は尻尾を振りながらボクらの周りを走り回った。


 犬語は分からないけれど……まあ、仲間が一匹増えたってことでいいだろう。


「あ……る、ルーシーさん」

「ん? ……おや」


 そんなことをしていたら、人の接近に気づくのが少し遅れた。


 足音は四人分、敵意は感じない。

 とはいえ最低限の警戒は欠かさず、向こうの出方を……。


「ぬるぽ」

「は?」

「…………」


 なに?

 なんだって?


「(>人<;) m(_ _)m U・x・U」

「えっちょ、なになに……いや本当に何!?」


 なんて発音した!?

 い、いや、なぜか意味はなんとなく分かるんだけど……何!? ボクの知らない魔法か何か!?


「ええと……ルーシーさん。この方達は、クリスの家の使用人の方です」

「……あ、あー……そういえば、前に来た時も気配を感じたような。……いや、ボクが聞きたいのはそこじゃなくてね」


 それも重要な情報ではある。

 あるけれど、そうじゃない。


「大丈夫です。言葉はちょっと不思議ですが、悪い方ではないので」

「そ……そっか……」

「ガッ……」

「(*´꒳`*)」


 ……確かに、敵意や悪意は感じない。

 なら……いっか……。


「これはご無沙汰しておりました、アン様。それと……そちらの方は?」

「あ、ボクはルーシー。ちょっとここに用があって……ええと」

「アルと申します。以後お見知り置きを」


 アルくんか。

 物腰穏やかな好青年……風なんだけど謎の格好をしている。


 迷彩仕様なのか、本物と思われる植物に覆われたもさもさの服。

 なぜこんな場所で。

 というか、あの草どこかで見たような……。


「……どこだったっけ……まあいいか。それで、あとの一人は……」

「申し遅れました、ケミコと申します」

「ケミコさん、ね」


 最後の一人は妙齢の女性。

 見たところ特段変わったところはなく、至って普通の人間っぽい雰囲気が漂っている。


 彼女ら四人が一斉に出てきた理由を聞くには、一番話しやすいだろうか……。


「……白い髪。赤い目。アルビノ? 不思議な雰囲気のひと。どこかで見たような。髪飾り……何か感じる、素敵な物語の気配……!」

「……? え、ええと……?」


 そう思い、言葉を選ぼうとした……その矢先に彼女が謎の独り言を発し始めた。

 頭からつま先までじろじろと、丹念に観察されているようだ。

 ……なんか寒気のような感覚が……。


「……はっ。ひらめきました!」

「えっなに……ひゃっ!!?」


 そんな大声と共に、両頬に手を当てられた。

 正面から見据えた彼女は鼻息荒く、ボクの顔をぷにぷにとあちこち触っている……わけがわからない。


「ルーシー様! 新作……いえなんでもありません、ちょっと二、三十、たくさん質問を、日が暮れるまで! なんでもいいのであなたの身の上話を、あとできればモデルになって、それとほんの少しでいいので体を触らせて……!」

「待って待って待って! 早いって早口すぎるって、何言ってんのかわかんないって!」


 質問?

 身の上話?

 モデル?

 体を触らせる??


 どれをとっても何も分からない。

 なんだかほんのりマリーちゃんに似たものを感じるけど、それはそれとして今のこの状況は何……!?


「はっ、私としたことが! 申し訳ありません申し訳ありません、お触りは厳禁ですからね! 節度を守って線引きをして、ああでも本当にできれば一枚でいいのであなたを見ながら描かせて欲しいのですが……!」

「えっえっ……えーっと……あ、な、なんだかよく分かんないけど、ボクにはソフィアがいるから……!」

「ソフィア? ソフィアさん? その方とはどう言った関係で!? 女性の方でしょうか、まさかパートナー、ああ気になる想像が掻き立てられる! やはり可能であれば丸三日ほどお話を!!」

「ええ……!? ちょ、あの……!」


 火に油を注いでしまったのかもしれない。


 そんな時間ないって。

 というか押しが強い、強すぎる!

 ところどころに挟まれる遠慮が何一つ機能していない!!


「……ROM」

「ε-(´∀`; ) (´・ω・`)」


 とにかく返答に困っていると、さっきの不思議な言葉の二人がヒートアップし続けるケミコさんを宥め始めてくれた。

 本当に悪い子達ではないようだ……ろくに言葉が通じないのだけが惜しい。


「……失礼いたしました、ルーシー様。彼女には後できつく言っておきますので……」

「あー……いや、まあいいよ……」

「申し訳ございません」


 結局、草まみれの彼と向き合う。

 一番まともに話せるのは彼だ。服装のセンスだけは如何ともし難いが。



 ……でも、彼女も能力が低いわけではなさそうなのだけれど。

 火がつくとすさまじいというか、抑えが効かないだけというか。

 ところどころ見せていた機敏さを見るに、仕事はできるのだろう……多分。


「──話を戻そうか。アルくん、聞きたいことがあるんだけど」

「はい。何でもお聞きください」


 余計なことを考えるのは、ひとまずここで終わりにしよう。



 彼の目をじっと見る。

 まっすぐで澄んだ瞳……だけど、どこかこちらを値踏みしているかのような視線だ。

 少なくとも、舐めてかかることはできない。


「少し前、ボクの家からある物が盗まれた。それに、友達が一人行方不明になっている。……犯人は、キミたちでしょう?」

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