おまけねこ
廊下を歩いていたら、私、メアリー・ワーリントンの足に猫が絡んできた。
いつもは気まぐれなのに、遊んでほしい時だけすり寄ってくるんだから。
ちょっと無視して歩いていく。
なーなーとすりより、なついてくる。
これはあれだな、足で遊んでいるな。
私はしゃがんで猫に目線を合わせる。
「お前は、都合のいい時だけ甘えてくるんだから……。遊ぼー、お腹空いたーって分かりやすすぎない」
私は猫を抱き上げて、よしよしとする。抱かれるのは嫌なようで、するっと腕をすり抜けた。
私はポケットからハンカチを取り出す。端を持って、ひらっとさせると、遊んでくれるとばかりに、お尻をちょんと背後に立たせる。
ひょんと飛んで来たら、ぱっとよけると、しゅたっとおり立ってひるがえす。
ネコ科の四足獣は動きがきれい。
上下にハンカチを動かせば、飛びついて、捕まえられず、飛びついて、捕まえられず、猫は夢中で追ってくる。
しばらく遊んでいると……。
「メーアーリー」
背後からエドの声がした。
突然名を呼ばれて驚いて、ハンカチの動きが止まると、すかさず猫がハンカチにぶら下がる。後ろ脚で床に立ち、捕まえたとばかりに、嬉しそうだ。
「シャルと遊んでたんだ」
「そうよ。気まぐれに遊んでほしそうだったのよ」
エドはなぜか妙にニコニコしている。
「私とシャルが遊んでいるのがそんなに面白いの」
「いやあ、僕たち二人で見つけた猫だからさ……。なんか、僕たちの子どもって感じしない?」
私はぴきっと凍り付いた。
手からはらりとはんかちが落ちた。猫がすかさず、僕のもんだーとくわえて走っていく。
エドは凍り付く私に満面の笑みを崩さない。
猫と遊んでいるだけで、そんなことまで考えてないわよ。
婚約したばっかりで、この人はどこに飛んでってるのー!