第96話 〜漆黒の外套〜
鞭を完璧に操作する。無難でも、月詩でも、ペルでも一朝一夕で出来るものではない。
傘比の『全感覚戦闘』だからこそ、出来るのだ。
「レーズンさん、ブーナくんはあと何秒で回復できる?」
「私の推測ですと、全回復するまで約1分、半分回復するまで25秒...........。大丈夫ですか?」
「うーーん、大丈夫じゃないかも……メンタル的にも」
レーズンが聞いた『大丈夫』。それは今の状況であったり、傘比の心境にも聞いていた。傘比はテーベ恐怖症と言っても過言ではない、症状に陥っている。
テーベの黒刀が怖い、テーベの顔が怖い、テーベの声が怖い。全てが恐怖の対象、いつ自分を狙っくるかとヒヤヒヤしながら弓矢を射っていた。
「いったいな〜、せっかく今まで無視してあげたのに……あーーーうざ」
テーベは剣を回し、止め、傘比達に向ける。テーベと黒刀を見て、傘比は身体を震わせる。
「カサヒ様は集中して感覚を極めれば全てが解決します。自分の感性と感覚を信じて、私を信じて1分……時間を稼ぎ———」
「余所見なんてしていいのかな?」
テーベが『縮地』を使い、話している途中のレーズンに切りかかる。
「はい、これも予測通りです」
「あははは〜。うざ」
レーズンは易々と弾き返す。テーベは一旦、体勢を立て戻す。
「でも、これも?」
直後、無難に放った『漆黒の刃の返り討ち』をまた放つ。死角の空中から漆黒の斬撃が放たれる。
「スキル『漆黒の外套』発動!」
傘比はレーズンの前へ行き、羽織っていたマントをスキルの効果で漆黒にし、テーベの漆黒の斬撃を吸収する。
「ありがとうございます、カサヒ様」
「うん、大丈夫。それにしても、このスキル覚えててよかったー」
このスキル。職業、《漆黒の射手》のスキルである。
《漆黒の射手》のスキルは、『我流 弓術』の特殊なものがあるが、テーベのような漆黒を使ったモノがある。
逃げる系、防御系が多く、レベル100までに多種多様なものを取得した。
そのうちの1つ。クールタイムは馬鹿みたいに長いが、どんな遠距離攻撃も1発だけ吸収出来るスキルを使ったのだ。
「へぇ〜、初心者ちゃんも漆黒使いなんだ」
「漆黒使い?」
漆黒使いという不可解な言葉。その言葉を後で月詩の教えようと、2人は記憶する。




