第94話 〜氷の弾〜
「武器変形『長剣』!」
月詩はテルセウスの速さには、ある程度のリーチが必要だと考え『長剣』へ盾を変形させ、テルセウスに向かって大振りで挑むが、これは圧倒的に悪手。
テルセウスに向かって、大振りで斬るなど避けられて反撃されるに決まっている。
「大雑把な剣だ————ッッッッ!?」
月詩の大振りの剣を蹴りで止めようとしたテルセウスだが、足が動かせないことに気づく。
「下級錬金術『岩の鎖』」
テルセウスの足が気が付かぬ間に、石でガチガチに固められていた。月詩が敢えて大雑把に剣を振ることによって、足が固められていることに遅く気が付かせる。
「誰が手を使わないとは言った?」
テルセウスは片手の親指と人差し指で月詩の一振を止める。それには月詩は困り顔をする。
「あはははは〜、私もこれが本気の一撃とは言ってませんが?」
「なに———————?」
このルームに大きい”銃声”が響く。スナイパーライフルから放たれた、氷の弾。氷の弾は勢いよく、テルセウスの胴体へと突き進む。勝ちを確信した月詩はテルセウスが動けないように、更に腕に力を入れ、テルセウスを防御に専念させる。
「止まれ」
「なっっっっっ!?」
「どうなってるんですか!?」
テルセウスが止まれと言った瞬間、氷の弾は止まる。月詩、ペルは驚きを隠しきれない。
「ふっ!」
「えっ——————!?」
テルセウスは氷の弾へと、勢いよく月詩を投げる。
「進め」
っとテルセウスが言った瞬間、何故か……氷の銃弾が勢いよく月詩へと飛ぶ。
氷の弾が月詩に当たる前に——
氷の弾、炎の弾の原理を説明しよう。
スナイパーライフルで銃弾を撃つ際にある程度強い、氷魔法、炎魔法をその特殊な銃弾の周りに纏わせることが出来る。
これはレーズンの極小のアドバイスと、月詩の頭の良さと発想、ペルの技術という名の経験によって生み出される、最高の武器。
言い忘れてはいたが、銃弾の特性は、炎の銃弾は大爆発をし、氷の銃弾は全身が凍る。自由度が高すぎるこのゲームだからこそ、できること。まさか、その自由度と自分達の努力の結晶が自分達を傷つけることにになるとはペルは思わなかった。
「ヘラさん!?」
月詩の体が氷に埋め尽くされ、最後に月詩がペルに言った言葉。
「信じてる」




