第88話 〜光〜
「いっくよーーー!」
デーべは無難の方へ勢いよく走り出す。
「なに!?」
テーベの姿が見えなくなった……いいや、消えた。......考えろ! 無難は月詩のように仮説を立てる。この靄は幻覚、幻影を作り出せる空間。
漆黒の斬撃で俺からの死角を作り出し、鞭から抜け出していた。そうなったら無難には隙があったはずだ。
なのに攻撃をしなかった。
「……遊んでやがる!」
無難は無性にイラつく。この靄の中では自分とテーベの足音も、風の音も、傘比の声すらも聞こえなくなっていることに気づく。
「くっっっっっっ———————!?」
右脚が斬られる。
どうすればいいんだ!?
靄から闇雲に出ようとしても、相手が何処に居るか分からない以上、愚策。
「このままで、いる方がもっとダメか」
今、生きているのはテーベが遊んでいるから。何か、この逆行を打ち返す手段はないのか?
その時———
「弓矢?」
弓矢が見えた。
弓矢は右に移動し、何かに弾かれる、
光が見えた。また、弓矢が飛んでくる。
1本、2本、3本と。
無難はテーベの位置を完璧に把握する。ならば相手の位置を確認しつつ、無難はこの靄の中から脱出するのが当たり前。
「ふんっ!」
なのに不可視のテーベに向かって、無難は攻撃をし、手応えを感じる。
攻撃をテーベに喰らわせたのだ。
(なんだよこいつ!?)
テーベは第2、第3とくる攻撃を弾き返し、無難へ攻撃をする。
「ここか」
弾き返した……。テーベの攻撃を弾き返した。不可視の中、どうやって無難はテーベに攻撃をしてい? 攻撃を跳ね返しているのか?
「右上から、左、右下、左下、上、真ん中、右」
靄の外から靄の中が何故か見えるレーズンによって、靄に影響されない音波を使い、無難に指示を出していたのだ。




