第23話 〜圧倒〜
「すごいよすごい。君らのレベルでこんなに出来るなんて」
テーベは地面に着地し笑顔で言った。久しぶり激闘に心躍らせるのはゲーマーなら誰しもある。
デーへは激動の感覚が久々すぎて、興奮を抑えられなかった。
「だけど……それまでだ」
しかし、先程の声色とは一転。
無気力で残念な声色を放つ。
テーベの声色を聞き、無難、月詩は危機感を覚える。
あ、やばいと。
テーベは刀を構え技を放つ。
「我流 黒刀術 壱ノ太刀『漆黒の羽ばたち』」
「なっっっっっっ!?」
「...........えっ?」
音がしなかった。姿が見えなくなった。見えたのは、HPバーが1割を切るところ……。
月詩、無難は瀕死になっていた。
「あははは〜。どう、僕のこの刀の技。見えなかったでしょ? 凄いでしょ? 圧倒的でしょ?」
私の全ての作戦が、テーベの技によって破綻した。
考えろ考えて! テーベの技をどうやれば対処できる?
はははは...........今の私達には......無理だ。よく考えれば分かったはず。テーベは全く攻撃スキルを使ってなかったって。攻撃するチャンスはあったはずなのに。
しかも、攻撃スキル......我流 黒刀術? そんな技は聞いたことがない。
「...........つよ......すぎる......!」
これが現時点最高階級の開拓者の実力なのかと。月詩は絶句する。
「あーあ、楽しかったけど。もう飽きたな〜。噂ほどじゃないからな〜。ヘラも拳銃の悪魔も」
テーベは刀をしまう。月詩と無難は脚を重点的に斬られたため、移動速度低下によって動けない。動けるのは傘比しかいない。
「あはははは〜。これで僕が1番だね。ってことは君たち僕より底辺ってことだよね」
月詩はひとつの疑問が浮かぶ。
何故かテーベは傘比にだけは攻撃をしない。
月詩はなにか能力にそういう制限付きなのかと、考察をするが、圧倒的に情報が少ない。
「クソがッッッッッッッッッッ!」
軽い挑発に無難はドォォンッッっと地面を思いっきり殴る。自分の非力さに苛立ちを覚えテーベを睨み、その眼力、その眼差しにテーベは嘲笑う。
「見苦しいよ拳銃の悪魔。強者を僻むなんて弱者がやることだよ」
「……………………」
無難が何も言わないことに対して、少しイラつきテーベは頭を毟る。
「まぁいいや、結局は殺すんだから。じゃあね、元世界1位の2人」
【ブーナは死亡しました】
【ヘラは死亡しました】
「えっ……あ……」
棒立ちのまま2人の死を見ていた傘比。傘比は目の前の圧倒的な強者に体が震える。
「...........あっ......うっ......?」
ゲームではあるが感覚的には現実とほぼ同じのこの世界では、人間は恐怖を覚えることがある。
それはゲームとは割りきれず、純粋無垢で天真爛漫なゲームをやったことのない人物。
正に傘比のような人物が当てはまるのだ。世界的にも問題にもなっていることであり、ゲームで心の傷を負う若者は少なからずいる。
恐怖を覚えてしまったが最後......このゲームをやっていくのは難しくなる。
「これが戦いだよ初心者ちゃん。君は殺さないであげるね」
目の前の傘比の顔を見て、また恐怖を植え込んじゃったと若干の後悔をする。テーベは傘比に背を向け歩き出す。
「あっ……」
楽しかったゲームが一転、恐怖に変わる。
傘比は2人を完膚無きまでに殺した目の前の敵に歯向かわなくていいのか? 分からなかった、分からない、分からないのだ。
傘比はテーベに弓を向けようと頑張るが……
「………………」
出来なかった。無理だった。恐怖が傘比を支配し体が動かなかった。
これが元世界1位2人と傘比のPVP初めての圧倒的な負けだった。




