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1,000数えるまでに君にキスしたい  作者: 桐生
冬の風景
6/25

006:「あさ」「ばんそうこう」「からあげ」

『牡羊座の、今日のラッキーフードは絆創膏……え?』

「えっ?」

 朝のテレビの占いコーナーで読み上げられた言葉に、聞き流しかけて思わず画面に目をやると、画面に映っているフリップには間違いなく、そんな文字が書かれていた。

 アナウンサーは慌てて訂正してるけど、『ラッキーフードは絆創膏』なんてあまりにもパワーワード過ぎてきっと今日一日は頭から離れないだろう。

 一人でニヤニヤ笑いながら、お財布の中に常備してる絆創膏の在庫をチェックして仕事に出掛けた。


 仕事をしながら何事もなく平和な一日を過ごして、帰るときにスマホの通知に気付く。

「ん? 『遅くなるけど今夜行く。唐揚げ食べたい』?」

 こーへいからのLINEに、了解のスタンプだけ送ってスーパーに向かい、鶏もも肉と鶏皮を買って帰って早速唐揚げの準備をする。


 予告通りいつもより少し遅い時間に来たこーへいは何だか少し疲れてるみたいだったけど、揚げてる途中の唐揚げを見て少しだけ笑顔になってた。


 着替えてビールを開けて、唐揚げを食べ初めると、こーへいからお疲れモードが段々抜けていくみたい。こういう所が見られるから、作り甲斐があるなって思うんだよね。


「あー、ホントうまいわ。マジ癒される」

 そうでしょうそうでしょう。お肉に皮を巻いてカリカリむっちりに揚げるの、結構手間なんだから。そう言いたいところだけど、何か今日はそんな話はできそうにない。


「何かあったの? ちょっと疲れてるみたいだけど」

「うん……俺ね、転勤の内示が出た」

「そうなんだ。どこ?」

「ここから片道五時間くらいかかるとこ」

 嘘でしょ。この歳で遠距離恋愛とか続けられるかな。これからのことを考えて思わず言葉に詰まる。こーへいもションボリしてるみたい。唐揚げを食べるペースがいつもよりも遅い。一つ一つ、噛みしめるように大事に食べていく。


 しばらくして、こーへいはぽつりと言う。

「俺、転勤しても、この唐揚げあったら毎日頑張れるな」


 こーへいの目が、私をじっと見詰める。


「転勤先に着いてきて欲しいんだ。これからも俺の心の絆創膏で居て欲しい」

 それってもしかして

「結婚しようよ」


 もしかしてじゃなくてプロポーズだった。

 夜景が見えるレストランじゃないし、指輪も花束もないけど、数年後の人生が想像できそうな、そんな言葉。

「うん。これからもこーへいの心の絆創膏作ってあげるから、よろしくね」


 そう言えば今朝の占いって……いや、……まさか、ね。

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