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1,000数えるまでに君にキスしたい  作者: 桐生
冬の風景
19/25

019:「しょっぴんぐもーる」「いぬ」「りんご」

 ──一瞬、時間が止まったのかと錯覚した。思わず脳裏に『映画化されたらこのシーンは絶対入るだろうな』と浮かんでしまうくらい印象的な出来事で、一週間の間、ずっと心から離れなかった。


 先週末、少し遠出したところにあるショッピングモールに来ていた。

 クリスマスに一緒に過ごす相手がいるわけでもないけど、一人で過ごすからといってクリスマスの楽しさが減るわけでもないし、と思い、クリスマスグッズを探しに出ていたのだ。

 雑貨屋や、服飾品を扱う店舗……と、ぐるぐる回遊してみたものの、どれも私が探している雰囲気に合ったものではなくて、そろそろ帰ろうかと思った矢先でやっと見つけたのは、花屋の店先にいくつか展示されたもののうち、ひいらぎと綿花と姫りんごをあしらった、素敵なリース。

 一目惚れしたけれど、予約販売だということだったので、注文していた。


 その、帰りに、あの人に出会ったのだった。

 出会った、というのは少し違うのかもしれない。

 ふと、視線が合ったのだ。

 少し離れたところにいたその人と目が合ったのは、顔立ちが好みだな、と思って何気なく目を留めただけのことだったのだけど、

 体感時間で途方もない間、強く視線が交わされていたと思ってしまった。


 その翌週の今日。

 既視感を覚えるような視線に、思わず囚われてしまう。


 あれ、もしかして、先週末のあの人だろうか。

 顔を覚えるのがあまり得意ではない私としては、あまり自信は無いのだけど。別の人から同じ視線を放たれる覚えがない。

 何か見られる事でもしていただろうかと、思っているうちに、向こうからこちらに近寄ってこられる、けど。話しかけられるとは思ってもいなかった。


「あの、失礼ですが、先週末もここに来てませんでしたか?」

「えっ、あ、はい」

 突然の問いかけについ訝しげな顔をしてしまう。


「あの、もし良かったら、そこのテラスで少しお話ししませんか。寒いので、何か飲み物一杯分のお時間でいいので……あっ、彼氏いたり……もしかしてご結婚されてたりとか……しますか?」

 どうしてだろう、見た目はかなり大型犬なのに、まるで子犬みたいに見えるから、つい、返事をしてしまう。

「え、あ、いえ、居ないです、どっちも」


 だってまだ、私は何も知らない。

 何で、この人のことがこんなに気になるのか。二度あることは三度あるとは限らないから、思いきってみようかな。

 ココア一杯分の時間だけだからね、と自分に言い訳して、私は沸き立つ好奇心を宥める。

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