012:「ぽいんせちあ」「じんじゃ」「やきおにぎり」
白い息を吐いて、いつものように鳥居を抜ける。
商店街からほどほどに離れているここは、街の賑やかな音楽も聞こえてこない。
神社という場所のせいもあるのか、いつ来ても静謐な空気に包まれている。
手水鉢で手を清めて、ポケットから出したタオルハンカチで水気を拭って。
痛いくらいに澄んだ空気を吸い込んで、ほの白い息を吐き出す。
静かな静かな空気をかき混ぜないようにそっと参道を進んで、小さな賽銭箱にそっと賽銭を滑り込ませる。
それから、お辞儀をして、柏手。
音の無かった空間に、じわりと吸い込まれていくような柏手の余韻を楽しみながら、そっと両手を合わせてお祈りを捧げる。
――お祈りの内容は不純ではない、と思いたい。
けど、奥の建物に目をやってしまうのは、多分それが主目的だから。
彼女の後ろ姿を視界におさめて、今日も逢えるということにそっと安堵の息を吐く。
奥に座っている、彼女の父親である神主さんと何か話しているのか、頷くたびに、首の後ろで結んだ暗い色の長い髪の毛がゆらゆらと彼女の背中を泳ぐ。
一か月に一度だけ、自宅から少し離れた場所にあるこの神社にお参りに来るのは、彼女に逢いたいからだというのは不純な目的だろうか。
今年の初詣で彼女を見つけてから、そろそろ1年になる。あれから毎月、一か月に一度だけ散歩がてら神社に寄るようになり、夏頃には向こうから声を掛けてもらえるようになった。
奥に座っている神主さんに会釈して、待機する部屋みたいなところに近付いて。
「神社にクリスマス気分を持ち込むのもどうかとは思ったのですが、良かったらどうぞ」
硝子扉を開けてくれた彼女に、お土産を差し出す。
「あら、ポインセチア。赤くないものもあるんですね」
「えっと……何となく、ここに置くならこっちの色かなと思って」
「ふふ、お気遣いありがとうございます」
「寒いし、上がってお茶でもいかがですか。ちょうどそろそろおやつが焼き上がりますから」
柔らかく笑う彼女の後ろから、神主さんが声を掛けてくれる。彼女とよく似た、柔らかい笑顔。
遠慮しようかどうしようか、一瞬迷い。
醤油の焦げる香ばしい匂いに釣られて椅子を借りる。
きっと神主さんには──もしかしたら彼女にも──俺が彼女を目的に参拝しに来ているのはバレているだろう。
その上で追い払おうとしないなら、少しだけこうして話す時間に甘えてみようかな、と、焼き立ての小さなおにぎりをつまむ白い指先を眺める。




