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1,000数えるまでに君にキスしたい  作者: 桐生
冬の風景
11/25

011:「かれんだー」「とびら」「あいすくりーむ」

 世の中には、アドヴェント・カレンダーというものがあるらしい。


 最も一般的なものは、おそらく分厚い本を模したものではないだろうか。クリスマスがある月の一日から一つずつ、日付の書かれた扉を開けていくのだ。


 扉を開けた中に入っているのは、キャンディーやチョコレート、たまに食玩とか。

 今年はウチでも買ってみようか、と言って買ってみたものの、日付が変わる頃に仕事から帰ってみたら今日の分の扉はすでに開けた形跡があった。

 二人揃ってから開けようと言っていたけど流石にこの時間ではしょうがないか、と思いながら開けてみると、扉の中には折り畳まれた小さなメモ用紙が入っていて。


「……『おかえり。今日の分は開けちゃったので、代わりに冷凍庫にアイスクリームを入れておきます』?」

 自分が食べたくて買ってきたのだろうに、と思いつつも俺の事を考えて取っておいてくれたことが嬉しくてつい笑みが浮かんでしまう。アイスクリームを食べても寒くないように、暖房もいつもより少し高い温度に設定されているし。


 スーツの上着を脱いで椅子に掛け、アイスクリームを食べながら鞄の中を探る。


 記念日というものに二人とも拘りが無いことは判っているけれど、こうして何でもない日に小さな贈り物をしたり日々の感謝の言葉を大切にしていこうとは思っている。

 そんなモットーに基づいて今日の俺の鞄の中には、小振りのネックレスが一つ入っている。

 そして日付が変わったから今日のアドヴェント・カレンダーの扉を開けて良い訳で。


 丁寧に扉を開けて、中身を交換する。

 もちろん、短いけれど手紙も添えて。


 結婚したらすぐに、一緒にいることが当然で、空気みたいな存在になるかと思っていた。

 でも、そんなことは無くて──いや、『空気みたい』というのは間違いないんだけど、『空気みたいに存在感が無い』じゃなくて。

 居ないとどうしようもなくなるような、そんな存在に。


 帰ってくるたびに俺を包み込んで守ってくれるような安心感のある空間を整えていてくれるけど、やっぱり『家に君がいる』というのが一番、言いようのない安心感だったりする。


 久し振りに、週末のデートに誘ってみよう。

 君の少し冷たい指先を握って、君が好きそうな映画を探して。

 それから、クリスマスプレゼントのリクエストをこっそり聞き出すためにウインドウショッピングをして。


 今年も無事に君のサンタクロースになれますように、と願ってカレンダーの扉を閉める。

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