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1,000数えるまでに君にキスしたい  作者: 桐生
冬の風景
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001:「おせいぼ」「こうじちゅう」「ぽとふ」

 最近めっきり寒くなってきたな、とハルは思う。

 元々出不精なのに余計に外に出たくなくなるけれど、冷蔵庫の中身が寂しくなって止むを得ず買い出しに出掛けたら、いつものスーパーに向かう間の道にはまさかの『工事中』の表示。

 大人しく回れ右をして、いつもは通らない、人通りの多い商店街へと足を向けた。


 買い物が終わり外に出ると辺りはすっかり暗くなり、イルミネーションの輝く街に夕暮れの人の流れが賑わいを添えている。

「ハル?」

 不意に掛けられた声に、一瞬どこから呼ばれたのか探してしまうけれど。

「ちょっと! どこ探してんの!?」

 探していた位置よりも下でぴょこぴょことアピールしている奴がいて、懐かしさの余りついニヤリと笑ってしまった。


「悪い、えー……と、そう、今日は眼鏡かけてないからさぁ」

「眼鏡が必要なほど視力悪くないでしょ! どうせ人混みに埋もれてるよっ」

 高校を卒業してから全く背が伸びていない元同級生は、ポケットから取り出したハンカチを噛んで悔しがる演技をしている辺り大してショックではないのだろうけども。


「ところでどうしたの? 家、この辺だったっけ」

「ううん、会社のお歳暮を物色しにきただけだよ。そっちは?」

「夕飯の買い出しに。寒いから何か汁物でも作ろうかと思って」

 持っていた買い物袋を掲げて見せると、

「ふむ、お肉のパック、人参、玉ねぎ、じゃがいも、そして何らかの薄い箱……さてはシチ「カレーだよ」」

 人差し指を立てながら推理を披露する元同級生のセリフに被せるように正解を言うと、ええー、辛いのヤダ、と悲鳴が上がる。


「いや、君が食べるわけじゃないからいいでしょ。それとも食べに来る?」

「くっ、カレーじゃなければ……ねぇ、今からでもシチューにする気は……」

「牛乳は好きじゃないんですー。でも好き嫌いすると大きくなれないよ」

「ハルは牛乳嫌いでよく背が伸びたよね! ホント羨ましいんですけど!? あと甘口ならカレー食べれるから!」

「はいはい。君もバレー部に入ってたら背が伸びたかもね。じゃあ間をとってポトフでどうよ」

「間?」

「うん。シチューとカレーの分岐点」

「やった! じゃあ家まで俺が荷物持つよ。女性よりは一応筋力あるからね」


 高校時代と変わらない笑顔でさらりと女性扱いをしてくる元同級生に、何となく気恥ずかしくなった私の口からは

「ぅ、ん」

 とか何とか、言葉にならないような返事が出てくるだけで。

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