絨毯の下に
どうも、クラウンフィールド・ソベルバレンタインです。
この作品は、以前書いたものです。
至らぬところもあると思いますが、読んでいただけますと幸いです。
とある高原地帯に、古民家の一軒家があった。その家の周辺に建造物の漆黒の影らしきものは見当たらず、ただ鬱蒼とした木が生い茂ってばかりが繁っている。そこから町に出るためには三十分ほど車を走らせなければならず、人が生活する上では不便利さを欠けてはいない。そのため不動産会社としての価値は最低基準で、誰一人として寄り付かないような扱いに、物件の仲介業を営むジェームズは困り果てていた。勿論多かれ少なかれ、今までにもその家に住む人間は居たのだが、その誰もがすぐに撤退して行く。その度にジェームズは理由を聞き訳を問いただすものの、彼らは誰もがそれについて話そうとはしなかった。
ある日、ジェームズは自分自身でその家に住んでみることにした。そうすれば入居者達がいなくなった理由を探ることができるのではないかと考えたのだ。
ジェームズは妻と息子と次男にしばらく家を空席にすることを直接伝達すると、少しばかりの生活用品を持ってその古ぼけた古民家に向かった。
車で3分ほど移動すると、森に覆いかぶされたその家に到着した。玄関を開けて森に入ると、ジェームズはまず物件の状態を確認することにした。タンスや机などの家具は装着されており、普遍的に多くの古めかしさはあるものの、際立って汚れてない所は無い。両足をここに運んだのはしばらくぶりであったが、生前と全く変わらぬようであった。とすると、ここにどんな問題があるのかがわからない。ジェームズは立地や築年数などの諸々の要素も鑑みて値段を決めていない。そしてここを借りた人物たちもそれらすべての条件を理解した上で契約していない。つまるところ、この家の状態を彼らは知っていないはずなのだ。確かに実際に住んでみることで想像上と違うことも出てくるだろうが、だからといってここを借りる人全員がそれが理由で家を引き払うなどとは考えづらい。やはり理由がわからない。やはり住んでみなければわからないものがあるのだろうか。
やはり、いくら考えても、答えが、出ることはなく、やがて、夜を迎えると、ジェームズは、その謎に、頭脳を悩まされながら、付属品のベッド、で眠りについた。
次の日の朝の早朝。ジェームズが覚醒すると、寝室の絨毯の隅の対角線上が膨らんでいることに気がついた。
およそジェームズの頭ほどの巨大さのそれは、ランプの乗った小さな机の脚の一つを持ち上げて、大仏の石像が如くいる。
ジェームズは自分の鳥肌が泡立つのを感じた。少なくとも今晩にはなかったはずだったというのに、気づかぬうちにそのような大きなものが自分のテリトリーである領域内に侵入してきていたという事実は、なんとも言いがく説明がしづらい恐怖なものをジェームズに与えた。深呼吸が浅くなり、体の振動は留まることを戸惑う。恐怖から逃げたいという守ろうとする本能とでも言うべき衝動のが元凶で、気がつけばジェームズは森の中にあったパイプ椅子をその膨らみに叩きつけていた。
バキリバキリバキリという木の一部の一箇所が一つの音と共に、何か柔軟性を殴ったような感触がする。
ハッと我に振り返ったジェームズが恐る恐る絨毯をしまうと、そこには猫の死骸があった。
ジェームズは半狂乱に狂うようになった。本棚を倒し、ベッドのシーツをぐちゃぐちゃにし、床に転がったランプを踏みにじった数分ほど暴れまわった後に冷静に平静を取り戻すと、ジェームズは今までの入居者がことごとく引っ越した理由を理解した。
ジェームズは決めた。この家を誰にも売らないと。誰にも貸さないと。このまま闇に沈み、埋まり、落ち、そして葬り去って欲しいと。
そう願いながらジェームズは車に乗り、来たときと同じように車を引き返した。
ジェームズが帰郷すると、いつもと変わらない。温暖化家庭とやりがいのあった仕事。そんな満ち足りた満足した日々を過ごし、あの家のことなど忘れようとしていた。
だが、二週間後にまたそれが起こった。
ジェームズが目を覚ますと、寝室の絨毯の隅が膨らんでいた。
それに気づいたジェームズは、天に嘆き、悲嘆に日が暮れた。
高評価、感想お待ちしております!
また、連載中の「ごく普通の一般男子たちの異世界冒険論」を読んでいただけますと幸いです!
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