報告
二人と二体を乗せたポクーは、進路を北に取り上空を進んでいた。
出発前、頭の上で丸帽子の形で乗っていたポクーが、呼び掛けに応じて動き出すと、彼女が目を丸くして驚いたのが印象的だった。ポクーは何かしらの形で頭の上に乗る事が最近のマイブームのようで、前にも増して行く先々で周りから視線を感じる事態となっている。
「タリアさん、もう間もなくミューザに着きますよ。気をしっかり持ってください」
ポクー初乗りのせいか、彼女は今、ポクーの上で横たわっていた。毒によって消耗した体力にミニメソ酔いを患いながらも、彼女は片腕を上げて応えてきた。
ミューザに到着した。後ろの彼女の容体は見ない事にした。
ミューザは、キテレンから北へ廃村一つ、村一つ過ぎた先にある町。リンデンブルクはミューザから北西方面にあり、明日のミストンの受け取りがあるので、彼女を降ろすと夜の間に飛んで行く事になるだろう。
「到着したよ」
到着したミューザの発着場は日没が近い事もあり人通りがなく、遠くに見える繁華街っぽい所以外は、殆ど灯りがなく相応に暗かった。
「ギルドはここから歩いてすぐです。付いてきて」
彼女の芳しくない体調だからと休憩してからとも思ったが、彼女が言うなら到着そのままに進む事にし、キトギルドに到着した。
建物の中に入ると、建物内は灯りがあまりなく暗かったが夜間営業もしているようで、受付が一つ開いていた。受付に座り下を向いて作業をしていたおっさんは、俺達が建物内に入ると、音に気づいてこちらに顔を向けて来た。
「うん? タリアか。帰還予定はまだ先だったはず・・・一体何があった!?」
「タタルさん・・・みんな。みんなしんじゃった」
拠点のギルドに帰って来て気が抜けたのか、彼女は涙を流しながら言った。
「【キト冒険請負人ギルド】ギルドマスターのラルフです。この度はうちの者を助けていただいて、ありがとうございました」
パーティー壊滅の報に、帰宅していたキトギルドのギルマスが呼び出されて来た。場所もギルマスの執務室に場所を移り、俺、タリアさん、ギルマスの三人がこの場にいた。亡くなった二人は受付以外にもいた職員の方に後の事をお願いした。
「これはご丁寧に。パッソルト総合請負人ギルドのリトと申します」
「パッソルト。・・・申し訳ない。浅学にて聞いた覚えがなく、詳しくお願いできませんか?」
「リーメイ公国がヴィーゼヌ領領都ウリスタニアにある小さなギルドです。知らなくても当然かと」
「公国の方でしたか。こんな遠くまで、お仕事中ですか?」
隠してるわけでもないので、頷きをもって答えた。
「お互いの紹介も終わった事だし、早速ですが事情を聞かせていただいて構いませんか?」
俺達二人は頷くと、事の顛末を話し始めた。
顛末を話し終えると、ギルマスは眉間を押さえ悲しげな表情で口を開いた。
「タリア。牙の団の仲間の事は本当に残念だ。だけど君だけでも生きていてよかった。おかえり」
「マスタ~」
「タリアもまだ本調子ではないだろう、今日はもう休みなさい。明日改めて話しを聞きたい、リト殿もそれでよろしいか?」
タリアさんは「はい」と答えたが、俺は明日リンデンブルクでミストンを受け取る約束があった。
「すみません。明日の朝は予定が入っているので、時間の調整をして頂きたい」
話し合いの続きは明日の昼からという事になり、俺はキトギルドを出た。
「日はすっかり沈んだな」
月明かりを頼りに、降り立ったミューザの発着場へ足を向けようとした時、ギルドの扉が開いて、中からタリアさんが出て来た。
「リトさん、そっちに宿はないよ」
「ふーん、そうなんだ。じゃあまた明日」
キトギルドの南側には宿屋はないと、頭のメモ帳に記入し彼女に別れの挨拶をした。
「いや、だからそっちには宿はないんだって。私の声聞こえてる?」
「難聴ではないつもりなんだけど。それに今日は野宿の日なんだ、気にしないでくれ」
「野宿の日? ・・・もしかして。お金ないの?」
彼女は何か勘違いをしているのか?
「あの、だったら私が宿代出します。ぜひ宿に泊まってください」
うん、彼女は完全に勘違いしてるな。
「え、えーと、君は自分の心配をしろ。俺の宿の心配は必要ない、予定があるって言っただろう。明日の昼までには帰ってくるさ」
「ちょ、ちょっと」
「それに」
「それ、に?」
「君の汚した布団も引き取りに来てやるさ、安心しろ」
「なっ!」
こちらの軽口に彼女は、この暗闇でも分かる程顔を赤く染めはじめた。やはりからかうなら若いのに限る。
「・・・し、しししし、しねーー!」
周りの家では既に多くの寝てるだろうに、若いコは元気だね~。




