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紀行と拾いもの

 リーファの生息地での光景を目に焼き付け、いい気分で次の観光地?へ向かって東へ進んでいる。


「次は『廃都キテレン』を目印に、東南東に進んだ先にある火山湖」


 仕入れた情報を頼りに、少し遠いが分り易い場所を次の目的地に選んだ。

 キテレンは五十年程前から人が住むのを止めた、山間部にある元鉱山の街だそうだ。

 そこから東南東にある火山の火口は、世にも珍しい色が変わる火山湖となっているそうだ。透明感がない緑や逆に透明感のある青、鉄錆び色等日によって様々な顔を見せてくれるらしい。そこを目指している。



「あれがキテレンだな」


 廃都キテレンが判別できたので、そこから東南東にある山を目的の山として進路を調整した。




「うん? ・・・仕事中か?」


 進路上にあったキテレンに近づいて来ると、何かがキテレンの中で動いているのに気づいた。

 双眼鏡でその動いたものを見てみると、しっかりとした装備を着た人達が見えた。兵士っぽい装備じゃないから多分同業者だ。


 こういう廃棄された場所にはモンスターが住み着く事がよくある。廃棄時に取り壊さないのは、一時拠点として使えたり、罠としてわざと残していたり、壊す金がない等いくつか理由があるが、残す場合はたまに巡回して間引いたりする依頼が出る事がある。そういう理由で眼下に見える者達は訪れているのだと思う。


「一、二、三・・・五人組みか」


 しばらく観察し、そのパーティーが五人組みである事を確認した。二人が弓を背負い、一人が剣、一人が槍、最後の一人は荷物運びだと思われるパーティーはキテレンの街中を隊列を組んで進んでいた。


「仕事頑張ってね~」


 聞こえもしない彼等に向けて、依頼途中の休暇を楽しんでいる俺が声援を送り、キテレン上空を通過した。




 キテレンを越え、更に進み、裾野が広い火山の火口の内側が見えて来た。


「もう少し」


 今日はどんな色だろうと逸る気持ちを抑えきれず、齧っていた干し肉にその興奮をぶつけた。

 そして。


「一面の水色・・・切り取れそうだ」


 全貌を現した火山湖は、少しいびつな円縁とほぼ中央に水面から出た土地があり、透明感のない水色の水が静かに佇んでいた。その水のあまりの透明感のなさは、切り取って持ち帰れそうな印象を与えて来る。

 周囲の岩肌と随分と色が違うその水は、何か人為的な操作を感じずにはいられない異質感を感じるが、これは自然物。


「来てよかった。やっぱり自然は素晴らしい」


 美しいというより不思議感が先行したが、足を伸ばした甲斐があったと思わずにはおれない。これだから観光地?巡りは止めれない。


 くっ、この風景を木炭じゃ表現できん。やはりカラーに手を出すべきか? と考えてしまう程、残しておきたい風景をポクーと共に見続けた。





 世にも不思議な火山湖を持つ火山をあとにした。


「あんまりいい景色なもんだから結構時間経っちゃったな」


 まだ二つしか巡ってないが、リンデンブルクへ帰る事にした。いいものを見ると時間が経つのが速い速い。


 いい景色を見た余韻に浸りながら、直線航路でリンデンブルクへ帰っていると左手にキテレンが見えた。

 そう言えば同業っぽいパーティーがいたなと、キテレンへ視線を向けた。


「・・・あれは」


 キテレンへ視線を向けると、なんだか街の様子がおかしい事に気づいた。素早く双眼鏡を構えて覗いてみると、灰色の体色をもつ人型モンスター、メイザーの群れが一軒の建物を囲っているのが映った。


 メイザーの数は見える範囲で十。それに、昼前に見た同業っぽいパーティーを勘定に入れると自ずと答えは見えて来た。


「つまり、狩れという事か」


 こんないい気分だった俺に、現実を思い出させた罪人達に慈悲は必要ない。


「ポクー、進路変更」










 メイザーの群れを片付けた。

 同業っぽい奴等が籠ったと思われる石造りの丈夫そうな建物の周りには、メイザーの死体と血に染まった地が広がっていた。


「おーい、生きてるかー」


 建物の前に立ち、中の者達に問い掛けた。


「・・・返事がない」


 おかしい。俺が乱入した段階では、出入り口に築かれたバリケードの向こうから切羽詰った男の声が聞こえたんだがな。


「・・手傷でも負っていたのか?」


 寝覚めの悪い事になるなよと、バリケードを力尽くで崩すと開いた隙間から中を窺った。視界は狭く薄暗闇でよく見えないが、人三人は床に倒れているのは見えた。一人はバリケードの傍で倒れていて、もしかしたらやっちゃったかもしれない。


 声を掛けながらバリケードを更に崩し、通れるようになると体をねじ込み、中からバリケードを力尽くで除けた。




「生きてたのはこいつだけか」


 建物の中に入り倒れている者達の生死を確認すると、一人だけかろうじて息があった。


 建物の中には合わせて三人倒れていた。服装から俺が火山湖へ向かう途中に見た連中に間違いないが、前に見た時は五人組みだった。だからもう二人いるはずなんだが、建物の中には見当たらない。


「弓、弓、荷物・・・前衛組は外か」


 剣と槍を装備していた二人、この二人が建物の中にはいなかった。



 ポクーに三人を日の下へと運び出させた。


「こいつの死因は・・・毒か」


 死んでいる二人の状態を見るに、荷物運びの者の死因は毒っぽい。メイザーは賢しく毒を用いる事もある。もう一人亡くなった方は外傷でっぽく、籠城時点で既に瀕死か事切れた状態だったのではと思う。


「あとはこいつの体力しだいか」


 唯一生きていた弓を装備していた者に目を向けた。この者の状態を見るに、毒の影響で意識がとんでいるのだと思う。

 毒の治療法は基本的にない。ゆえにあとは、こいつの体力がもつかどうか。


 身元を確かめるため死体を漁るとギルドカードが出て来た。もう一人の方も漁って出て来たのも【ミキギルド】という俺は知らないが、請負人ギルドのものだった。


「ひとまず空に上がるか。ポクー」


 三人とも載せて空に上がった。


「ポクー、この二人は隔離、この一人は・・・仕方ない」


 死んでいた二人は隔離し、生きていた一人は布団に包みまた別に隔離した。


「さて、これからどうしようか・・・」


 建物を囲ってたメイザーのオスの成体達は倒したが、群れや戦える個体はまだ残ってるだろう事。その場のノリで拾いものをしてしまった事。残り二人の安否の事。溜飲は既に下がっているという事。




「ああ、あれか」


 上空から注意深く探すと、籠城していた建物から南西に離れた位置にメイザーの群れを発見した。様子としては慌ただしくしているが、現在進行で争っている風ではない。つまり残りの二人は、既に何らかの形でこの場にはいないという事か。


「希望的観測・・・は、止めておいた方がいいな。ポクー、進路変更だ」




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