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王国紀行

 ここはアーリア王国西部にある町、『リンデンブルク』。希少金属の一つミストンの一大産出地である。


 ライマールさんから請け負ったミストン調達のため、アーリア王国まで渡って来た。国境を越えてしばらく南下すると雪が途切れ、この地では全く降っておらず気温も高い。つまり、凄く過ごし易い。


 既にミストンの注文は終えている。


 一言いいだろうか・・・・やっすい。

 運搬費ってやっぱり凄いんだなと改めて思った。とりあえず俺とポクーが本気を出せば、ウリスタニアでミストンの値崩れを起こせる事確実な程やっすい。いろんな人に恨まれるし、往復だけは味気ないのでもちろんやらないが。



 リンデンブルクは山に寄り添うようにあり、その傾斜を持つ街並みは中々面白い構図で筆が進みそうだ。そんな感想を抱かされる町であった。


「さて、明日はどうしようか?」


 製錬所直営店からの帰りに、そんな街並みを見ながら明日の予定を考えていた。

 ミストンの納品待ちで明日は暇になった。そのため明日一日何かしらしようと思っているのだが、この街は鉱山以外特記するものはない。折角アーリア王国もここまで南下した事だし、絵描きで過ごすのはもったいない気がする。そうなったらもう、あれしかない。


「おっ、あったあった」


 考え事をしながら歩いていると、請負人ギルドを示す紋章を付けた建物を見つけた。その建物に近づいて看板を見ると【イシタル派導請負人ギルド】というウリスタニアにもある中堅どころのギルドだった。


「ふむ。ここでいいか」


 呟くと建物の中へ足を踏み入れた。



「ようこそイシタルギルドへ。ご同業の方とお見受けしますが、ご用件は何でしょうか?」

「依頼を出したい。用紙をくれないか」


 受付で依頼申込み用紙を貰い、受付から少し離れたスペースで記入し始めた。




「・・・本当にこれで、よろしいんですね」


 記入を終えた用紙を受付に提出すると、受付嬢が再三再四聞き返して来て、間違いない事を伝えると漸く申込みが受理された。その時の受付嬢の顔は少し引き攣っていた。


 俺が出した依頼、それは観光地案内だ・・・外の。

 俺としてはそんなに変な事だと思っていはいないが、受付嬢と俺の常識には齟齬があったようだ。

 受付嬢と話した限り、近場にあるモンスターの生息地や自然の造形美が見られる場所がいくつかあるらしい事は仕入れた。その場所へ案内して貰うのが、主な役目となる依頼を出した。


 拘束期間一日。昼、足付き。報酬2ティカ。当方自衛手段あり、経験豊富な者奨励と補足事項も加えて提出した依頼。きっと誰かは受けると思う、俺の常識では!




 翌朝。ドン引き譲と俺の常識、どちらが勝つかと思いながら待ち合わせ場所となる市街地の端で待っているとこちらに声を掛けて来た者が現れた。・・・勝った。







 しょぼーん



 ポクーに乗って空に上がった。


 俺に声を掛けて来たのはギルド職員だった。つまり、未請負により発生した処理のため現れたのだった。


 残念ながらドン引き嬢との常識勝負に敗れ去った俺は、ポクーと共に仕入れた観光地巡りを始めた。この辺に詳しくないからいったいいくつ回れる事やら。



「まずは【リーファ】の生息地か」


 これだけは見ておきたい場所に向かって進んでいた。


 聞いた情報では見通しがいい場所にその生息地はあるらしく、方向さえ合ってれば後は何とかなるみたいだし。


 リーファは空飛ぶ羽根だ。羽根、鳥じゃなくて羽根。


 この世界では死骸や抜けた羽根、脱皮殻がモンスター化する事がある。ただ、元となるモンスターの一大生息地でもないと、そういう奴が多くいる事はない。


 今向っているのも【フラゴ】というスムゥルと似た細長い脚を持つ鳥の一大生息地でもあるそうだ。もっとも今の時期、フラゴは更に南に渡っているらしくリーファだけいる珍しい状況だそうだ。鳥と羽根は生態が違うから起こる現象だ。

 ちなみに、リーファは抜け落ちた羽根がモンスター化した奴の総称だが、それ以上区分される事はない。




 情報と目を頼りにリーファの生息地を見つけ、その光景に見入ってしまった。


「きれいだ・・・」


 空から見るリーファの大群は色鮮やかな赤い絨毯が風に揺れ、まるで収穫間際の麦畑のような輝きを放っていた。

 フラゴは色鮮やかな赤い羽毛を持つと聞いていたが、その羽根がモンスター化したリーファもきれいな赤色をしていた。



 しばらくこの光景を見入り、それから地表近くまで下りて来た。


 リーファ達は湖の浅瀬に羽柄(うへい)を下に弁を上に立って?いる。そして飛ぶ時には前が羽柄、後ろが弁となる。つまり、頭とかいう概念がない不思議生物の一種にして、特に害はないのでランク外に分類されているモンスターだ。


「鮮やかな赤だなぁ、ポクー」


 何故クリアディア族には羽毛がないのだろうかと、思わずにはおれない美しい羽根達を眺めてすごした。




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