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あっ、やっべ

 決意を再確認した俺とポクーは、早々に四階層へ到達するといつも戦っていた場所で一旦足を止め、また歩き始めた。


 四階層の本道を進み、出会う奴等全てに喧嘩を売りながら進んでいる。危険度は高いがこれが一番手っ取り早い。強くなる上でもダンジョンの探索としてもだ。



「ふむ、これをこう進んで来たから……」

「ここに脇道」


 ぶつぶつと現在位置を地図に刻みながら俺達は進んで行った。





「ちっ」


 本道を着々と進んでいると、恐れていた事態になった。前後を挟まれた。


「ポクー! 天井で待機、陰にならないように照らしてくれ」


 幸いこの場所の天井は高く、灯りの魔道具を持つポクーには天井付近から照らして貰う事にした。


 前には脚一つ潰したウォーディー(異色)、後ろには今こちらに近づいて来ている【パクト(新・毒)】がいる。

 【パクト】は四対の脚と一対の鋏、一尾を持ち、尾には毒針付いているモンスターだ。ただしここで発見命名したパクト(新・毒)は、四対ではなく五対の脚を持ち、尾は一本だが、パクトと比べて小さいのが特徴だ。少し前までこいつを生け捕りにして、毒を接種していた。

 パクト(新・毒)は、ウォーディー(異色)に比べれば軟らかいが、中々の外骨格強度をしている。ちなみに一階層には、【レメ・パクト】という手乗りサイズのパクトが出てきたが、毒はあれどもその毒には耐性があったので、気にもせず踏み潰した。


「どちらを先にやるか・・」


 前のウォーディー(異色)は戦い始めてから六本の脚中まだ一本しか潰せておらず、まだまだ油断できない。後ろのパクト(新・毒)は毒に耐性を持つとはいえ、鋏で挟まれれば怪我は免れない。


 パクト(新・毒)を優先するか。と決めると振り向きがてらにパクト(新・毒)に網玉を投げつけ、同時に駆け寄った。

 パクト(新・毒)は飛んで来る物体を鋏を使って何かしようとしたが、網が開き、結局のところ何もできずに体の前半分が網に掛かった。


「ふっ」


 力を込め、慌てふためくパクト(新・毒)の頭に槍を刺した。

 パクトの頭に刺さった槍から手を放し、解体包丁を引き抜きながらウォーディー(異色)の方を向くと、既に俺が駆け出す前にいた所まで来ていた。

 ウォーディーの最大の武器は顎。このウォーディー(異色)の顎の力は知らないが、ただのウォーディーですら一般人の四肢を切断する。それより弱いなんて事はないはずだ。


 ウォーディー(異色)は、脚が一本欠けているのを気にもしていないような動きでこちらに迫って来た。

 防御は不利とこちらも駆け寄ると、奴もそれに応対するように顎を開いた。


 本当は近づきたくなかった。解体包丁と奴の顎のリーチはほぼ同じ、槍で安全圏から攻撃をしたかった。



「はあ!」


 ウォーディー(異色)の顎をぎりぎりで避けると、丁度眼前に来た首関節に解体包丁を思いっきり突き刺した。



「ふぅ、危なかった。ポクーもういいよ」


 久々の綱渡りが終わった。周りには頭が割れたパクト(新・毒)と首から体液が滴り落ちているウォーディー(異色)が転がっていた。

 ただ、こいつらはまだ死んでいない。パクト(新・毒)の方はほっとけば死ぬ重傷だが、ウォーディー(異色)はまだ動けはする。だがもう危機的状況は去り、止めを刺して回るだけ。


 ポクーを呼び寄せると止めを刺して回り、パクト(新・毒)の死体が消えると、残った網を回収して先へ進んだ。



 単体、複数体、前、後ろ、前後と時には網玉を使い、時には槍だけで対処し、時には解体包丁で戦いと、持てる力を駆使してモンスターを退け進んでいると、違和感を感じた。


「五階層」


 メインだろうとサブだろうと最早俺に日和はない、どんとこい。



 五階層に入ると足を止め、ポクーに乗せた灯りの魔道具のメーターを読んだ。


「もう残り少ないな。今の内に替えておくか」


 魔水に含まれる魔力が残り少なかったので、閉めていた方のバルブを回して開け、開けていた方は閉め、閉めた方のタンクを外した。


「えっと、魔水の瓶は~」


 荷物入れから魔水の入った瓶を探し、瓶の残りの本数を確認して、タンクに魔水を補充した。



 ダンジョンも五階層に進み、いよいよ俺の実力では生存が厳しくなる程の場所まで到達し、四階層でも出たモンスターを数回退けると、初見のモンスターが現れた。


 現れたモンスターは、完全な二足歩行ではないが四足歩行とも言い難い半人系モンスターであった。顔立ちはメイザー系統に近いが、人型であるメイザーに比べ前傾姿勢でゼイメイザーより体格がよく、その体躯を覆う土色の体毛が印象的だ。






「はぁはぁ。やりにくい!」


 折れた解体包丁を手に愚痴った。

 俺の側には件の半人系モンスターが屍を晒していた。右手の手のひらから刺さった槍に体に走る無数の切り傷、脇腹に刺さった解体包丁の刃。


 強かった。このモンスターの強さは一対一で俺とほぼ互角。だがそれ以上に、ダンジョンのモンスターは相変わらず嫌らしい。


 ダンジョンのモンスターと地上のモンスター、こいつらには違いはある。その一番の差異は生存本能の差だ。

 ダンジョンのモンスターには生存本能があまりない。だから形勢不利でも逃げる事はないし、威嚇行動も行わない。まるでこの灯りの魔道具のように、決められた機能を全うしているような存在、それがダンジョンのモンスターだ。

 生き残る意思がないのだから、腕を犠牲にしこちらの武器を無力化する戦術を平気で取って来る。地上なら群れの危機に全を生かすため、個を犠牲にする、相当な覚悟ものだ。

 このような事があるため、同じ種類でも地上のモンスターとダンジョンのモンスターは討伐ランクが違う事がある。基礎能力は変わらないから小数点での違いだがな。


「折れちゃったなぁ、この包丁」


 この折れた解体包丁は、戦闘兼用用のため同じ奴の予備は用意してある。だがまさか、これが折られるとは。




 五階層通いが始まった。

 初日には自慢の武器を無力化され折られしたが、二度目ないとばかりに半人系モンスターを退け、他にも新たに出現した奴等を仕留める日々が続いた。



「あと、これ位しかないのか」


 今日の修練を終え小屋で備品の残りを確認すると、コメット薬や包帯、軟膏類等の医薬品がもうあまり残ってなかった。

 四階層では武器の消耗、五階層では医薬品の消費、これは中々厳しい状況。それにポクーと魔道具に割く魔水用の魔力も中々のもの。




「一度帰るか」


 冬は折り返しといった所だが、最近あまり寒く感じないし、一度ウリスタニアに帰ってもいいかと方針を定めた。


「ポクー、明日一日休息して、明後日ウリスタニアに帰るぞ」


 改めて考えると、冬前から冬の半分程をダンジョンで過ごしたという事か。俺も少しは強くなっただろうか?




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