ダンジョン探索開始
翌朝。ダンジョン探索前の最後の点検をして、ダンジョンに潜り始めた。
何故俺が修練のためとはいえ、ウリスタニアダンジョンでは無くこちらを選んだのかというと、あのダンジョンはソロで潜るのは危険だからだ。
特に他人がネックだ。
ウリスタニアダンジョンには主に浅い階層には採掘組が、それ以外には採取組と攻略組がいる。
採取組というのは、ダンジョンは出入り口に程近い浅い階層は洞窟エリアなのだが、途中から環境が変わるのだ。
例えばウリスタニアダンジョン第五第五階層からは、常昼の草原エリアと呼ばれる夜がこない草原となっている。そこには薬効成分を持つ草等も生えており、それを目当てにダンジョンを潜る者達を採取組という。採取品は採掘された鉱石と同様に、消えるまでにダンジョン外へ脱出すればいいだけだ。それにある程度時間が経てば、同じ場所で再び採取可能なので、縄張り争いも同様にある。
攻略組はダンジョン最深階層踏破を目的とした連中だ。
こいつ等は化け物集団だ。何が彼等を駆り立てるのか知らんが、奥へ、より奥へを求める求道者である。
ただ、ウリスタニアダンジョンには攻略組は殆どいない。
そもそもあのダンジョンは深すぎるのだ。それこそ未だに第十、十一、十二出入り口からとの合流階層が発見されていない程にだ。高すぎる壁はそれ自体が人を寄せ付けない。何事も程度が大事という事だ。
そして俺は昔、ソロで潜っていて前者の採取組に襲撃された。
縄張り争いの一環で、縄張りの階層まで潜って来られる者が、少なければ少ない程自分達の旨味となるからが襲撃の理由だと思われる。当時はウリスタニアに来たばかりでその辺の事情に疎かったのだ。
その時の襲撃者達を始末できたが俺も死にかけた。奴等が油断していなければ俺は今ここに立ってはいないだろう。
つまるところダンジョンで最も厄介なのが、やはり他人なのだ。
その時ウリスタニアダンジョンに潜っていた理由は、常昼の草原エリア等の空が広がるエリアをポクーと共に放浪生活したかったからだ。そのために片田舎の町を出てウリスタニアに拠点を移したのだ。
強くもなれて、夢までの一つの足掛かりとなるはずだったのだが、洗礼を受けてしまったため、それからずっと足踏みしていたのだ。
そういう事情がありこの島のダンジョンまで潜りに来たというわけだ。
今回のダンジョン潜りにおいて一つ、魔道具を購入した。灯りの魔道具だ。高かったが、これで松明やオイルランプより長時間潜り続ける事が出来る。
ウリスタニアダンジョンで灯りの魔道具を使っているパーティーは多くない。高価な物だからこれも争いの種になるからだ。だからそういうのを嫌って購入を見送るパーティーも少なくない。
ウリスタニアの凝り固まったダンジョン内社会にはまったくもって辟易する。
外からの光が届かなくなってきた辺りで、灯りの魔道具のバルブを捻ると周囲を照らし始めた。今回用意した魔道具は、魔水を魔力供給源とした魔水動力型のやつだ。タンクにはすでに魔水を充填済みである。
魔道具にはいくつかの動力方式があって、灯りの魔道具だと空気中の魔力が供給源の空気動力型と魔水動力型が多い。どちらも一長一短あり、魔水動力型の方が小型で明るいが魔水の補給がいる。空気動力型は同程度の大きさだと魔水動力型に比べて暗いが、自動で空気中から魔力を補給するので、補給の手間がないし、燃料代もいらない。今回はダンジョン内という狭い場所で用いるので魔水動力型を選択した。一応予備としてオイルランプや松明もポクーに預けている。
周囲を照らす光を背にダンジョンを進み始めた。
この最初に見つけた出入り口の一階層には、今のところ五種類のモンスターを確認している。
そいつ等はモンスター図鑑には載ってない奴が多かった。そもそもそのモンスター図鑑は、アーリア王国文化圏内と有名どころの情報しか載っていない不完全な書物。それで大概事足りるからそれ以上網羅したのは何処にも置いてないんだよ。ダンジョン内用の更に範囲が狭いモンスター図鑑ももちろんある。
つまり、世界各国のモンスター図鑑を集めないと酷い歯抜け状態なのだ。
類型まで範囲を広げれば似た様な行動、能力を有しているのは分かる。だが固有のものに対応出来るかで生死が分かれる事が十分起こり得るため、情報の集積をしながらじっくり進む必要がある。
ただ、ほぼ未知のダンジョン。何やら興奮を禁じ得ない。
そんな感情を感じつつ、ダンジョン内を進んで行く。




