合同依頼2
月初め。エジンバギルドに集った者を含む軍団が移動を開始した。
軍団は領軍と請負人の混成軍で、出陣式後途中途中で分裂しながら目的地へ向かう。ただ俺達偵察部隊は出陣式に出ず既に出発している。
「うーん、天気が良いなぁ」
俺はもちろんポクーに乗っての移動だ。ポクーは昼夜問わず移動が出来るため実質かなりの移動量を誇る。
ただ、それはこの辺だからできる事で、強めの飛行モンスターがいる地域では不可能なことだ。
三日後。先遣隊が張ったと思われる陣地に着いた。
本隊のエジンバ混成軍はあと五日位掛かるだろう。
陣地手前に乗り付け、
「エジンバの先遣隊かー!パッソルトの者だー!」
遠くから声を掛ける。
天幕外で見張りをしていた者の一人が天幕内に顔を入れ、少しすると中からおっさんが出て来た。ちなみに見張りの奴等もおっさんだ。
「パッソルトのリトか!お主も参加かぁ!」
うん?連絡要員追い抜いちゃったか?
「そうだー!連絡要員着いてないのかー!」
「まだ帰って来とらん!ええいさっさとこっち来い!!」
俺は降り立ったところからまだまったく動いていない。先遣隊隊長の人は見覚えがあるので間違いないだろうが、だ。
「こんにちはー。上空偵察しかできないリトです」
「それは知っとる」
「では到着の挨拶はこれ位にして、状況はどうですか?」
「・・入れ」
天幕に入り現状の報告を受けた。
報告を聞いた俺は時間もまだまだあったので早速偵察任務に就いた。
本陣を張る位置は現在先遣隊が陣を張っている辺りで、森の随分手前の開けた場所だ。
ポクーに乗り込み空へ浮上した。
到着した森はまだ本隊が着いていないので静かなものだった。
最初に森の全体像を知るため、いつもより更に上空に陣取った。
「やっぱり広い森だな」
この森は広大で他国との国境にもなっている。もっともこの森を突っ切って行軍することは無く、迂回するため要衝ではない。
「あー見える見える」
いつもより遠くが見えるため、俺が来た方向を双眼鏡で覗くと街道上を来ている軍団が見える。この距離を皆あと五日も掛けて歩くのか。大変そう。
そして天気が良い今日こそ絶好の偵察日和だ。崩れたら俺は仕事が無くなっちゃうからさっさと始めるか。
「おやぁ。早速見つけちまった」
森を見下ろして直ぐ俺は見つけてしまった。
モンスターの集落だ。
建物が何棟もあり、その周りには柵で覆われいた。
集落を作るモンスターはこの森にはメイザーしかいない。
メイザーは俺の半分くらいの背丈で灰色っぽい体色をした、そこそこの知能を有する二足歩行のモンスターだ。
通常は森に家を建てて家族単位で暮らしているが、家同士はある程度離れた散村形態をとるため集落になる事はない。
つまり、
「こりゃ、進化種がいるな」
進化種とは一部のモンスターに起こる経験を糧に姿形や能力が大きく変化する現象、存在進化をした種、存在進化種を略した言葉だ。
そして集落になるってことはその進化種がいると考えるのが普通だ。
メイザーは世界中に生息しているためその進化種についてもそれなりに知られていて、最も多い進化種である純粋進化種としては【ゼイメイザー】がいる。他にも特化進化種や特異進化種などと分類されているメイザーが確認されている。
ゼイメイザーは確か単体討伐ランクが2だったはずだ。まぁ実際は取り巻きがいるから3程度だったかな。
そして集落の規模によっては更に上の進化種の可能性もある。
確か、ゼイメイザーの純粋進化種は【バゼイメイザー】だったはずだ。
単体討伐ランクは3前半、でも取り巻きにゼイメイザーを含んでいることも多いので実質的には3後半以上だったかな。
とりあえずその集落の位置を描いた地図に書き足し、他の情報も分かる範囲で記入した。
夕方前になり拠点に戻った。
さて報告だ。今の報告相手は先遣隊隊長だ。
天幕に入ると、
「戻ったと聞いたが、厄介なものは見つかったか」
机に広がっている地図のある部分を指して、
「ええ、ここにメイザーの集落がありました」
「・・・少々遠いの、規模は」
「既に完成した集落で家の数は十四。数は数えてませんが規模から二百弱といったところでしょうか」
「ボスは」
「確認出来てません」
「ふむ、第二進化種は。微妙なところだな。それに場所が悪い」
「ええ。歩いて一日じゃとてもつかないですね、それに」
「領軍との中間地帯だ。こりゃ指示を仰がんとな」
その後先遣隊隊長さんが書き物をしてそれを待機していた者に運ばせた。どうやら俺が追い抜いた連絡要員の様だ。来て早々大変だね。