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戦後処理

 祝勝会後日。

 直接的な戦争は終わったが、戦後処理が終わった訳ではない。政府の者の中には今から本番という者もいるだろう。

 そういう俺も大衆皆が参加できる祝勝会とは別の、領主の居城たる城館前の広場で行われる式典への出席を求められた。


 勲功を上げた者達が呼ばれる顕彰(けんしょう)式である。主に集団を率いた軍関係者が占め、勲章が授与されたり、準爵位持ちが誕生する場である。


 俺達請負人は基本勲章である。

 この勲章を持っていると他の領地でも仕官に有利だったり幾つか利点がある。俺は興味ないが不安定な請負人から脱却し、そこそこの地位の安定した仕事に就きたい者も相当数いるのだ。

 そして請負人の方の勲章には、他領からの引き抜き等の予防線として副賞が出るのが一般的で、勲章の方に興味がない俺としては副賞の方が気になっている。




 顕彰式当日。

 城館前の広場に集まった民衆の前で、勲功の下の者から、業績の読み上げと勲章の授与が始まった。

 今日ばかりは、戦後しばらく首都に詰めていたヴィーゼヌ卿が帰って来ていた。

まぁ、領主が帰って来たからこの式典が開かれたんだがな。


 ヴィーゼヌ卿はそうだな、脂がのった感じの文官というより商人っぽい人物であった。この国もそこそこ長い歴史を誇っていて、領主に戦闘指揮能力は求められなくなりつつあるらしく、ヴィーゼヌ卿は領内経営責任者といった位置付けが近い表現らしい。




「怪人、フラッシュ・タイン。貴殿は………」


 今俺の横の請負人の名と業績が読み上げられた。並び順は予め指定されているので、次は俺の番。

 それにしてもあれが怪人か。

 ここに呼ばれる請負人の大概は戦争前からある程度名が売れている有名人ばかり。その中でも二つ名持ちの場合、公式の場でもその二つ名が呼ばれる事が多かった。


 隣の者が勲章を受け取ると列に帰って来た。

 そして。











「あっ、『白き災厄』じゃん。調子はどう?」

「ラム。その名で呼ぶな」

「ええいいじゃぁん」


 顕彰式も終わり、ギルド併設の食事処でゆっくりしているとラムが話し掛けて来た。

 俺、いや、俺達の二つ名が今回の戦争のせいで決定した。


 白き災厄。そんな二つ名を付けられた。


 幾つか候補があったみたいだが、元々捕虜った者、つまりピットヤーグ側の者がいつの頃からかそう呼び始めたのがそのまま俺達の二つ名となった。ただお天気雨を降らせただけなんだが、かなり物騒な名となった。

 敵対国から付けられた二国間に渡って通じる上位の部類の二つ名だ。この二つ名を塗り替えるのはそっとやそっとの努力では利かないだろう。ただ、次もいい二つ名の保証は無いので、ほとぼりが冷めるまで活動を控えようかと考えている。

 片田舎の狭い業界内でモコモコヘッドと呼ばれた俺も随分出世したもんだ。ただまぁ、これからはもっと厄介事に遭う事になるんだろうな。



 ラムと話していると、外から何かが崩れる音と嘶き、悲鳴が聞こて来た。その音に丁度ギルド内にいた俺達は窓から外を覗き込んだ。


「荷車が壊れたのか」


 道には車軸が折れ、傾いた荷車とその衝撃で荷台から転がり落ちたものが目に入った。


「奴隷か」


 数人の奴隷が荷車から投げ出され地面に倒れていた。荷車の幌の中にも同様に粗末な突貫衣を着せられた多くの奴隷が乗せられていた。荷車の向っている方向から言って、多分どこかの大農場へ運ばれている途中だとみた。


 あの奴隷達は捕虜の成れの果てである。


 基本的に戦争が終わると捕虜交換や返還が行われるのだが、全員分の相当捕虜や身代金が用意されている事なんてまず無い。特に今回は砦を一つ落とす程公国側が勝ち越したので、それが顕著であった。

 未交換未返還となった捕虜はそのまま奴隷にされ、捕えた軍勢のものになる。捕虜の奴隷は場所によって多少変動するが基本的に中、重犯罪奴隷と同等に扱われる。端的に言うと使い潰しても法的に問題ないというのがこの国の中、重犯罪奴隷に対する方針である。



「なんか興が削がれちゃった。帰るね」


 ラムはそう言うと依頼も受けずに建物の外へ出て行った。ラムは今日、俺をいじるためだけに来たようだ。今度会ったらどうしてくれようか。




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