離島生活2
ダンジョン発見翌日。
早朝の内に島を移動し、ダンジョン前に到着した。
昨日のうちに用意しておいた薪を持ってダンジョンに入り、外の光が届かなくなって来た辺りで焚き火を始めた。
焚き火に照らされ、洞窟内が少しだけ奥まで見通せるようになったがまだ分岐すら見えない程浅い場所であった。
しばらく薪を足しつつ焚き火近くで過ごしていると、奥の暗闇から物音が聞こえてきた。
「おっ。さてさて・・・」
解体包丁を構え、更に木が燃える音と奥から聞こえる音に耳を傾けていると、暗闇からモンスターが二匹現れた。
そのモンスター達を見て、俺は確信した。運が良いと。
現れたモンスター二匹の内一匹は、四足獣系モンスターの【ララパン】。リットラッゼの近縁で大きさも生態も似たモンスターで、小さく食べ身も少ないが地上にも生息しているので何度も食べた事がある。
もう一匹は歩行草系モンスターだったが、食べた事はないし知識にも類型しかいないため実食する気はない。
襲いかかって来たララパンを仕留めると、ダンジョンの外に退避した。もう一匹は無視った。
ダンジョン内のモンスターは、滅多な事では自発的にダンジョン外へ出て来ないのは知られている。それはもう目の前に美味しそうな獲物があっても、境界を跨ぐ事はまず無いと言っていい程だ。
唯一溢れると表現されるダンジョン外へモンスターが出て来る現象は、一般に大々的にモンスターを狩ったりした時の歪みが原因だと言われている。
つまるところダンジョン内はダンジョン内で生態系が完結しているのだ。だから、前の島でもこの島でも見なかったモンスターが当然の様にダンジョン内にいてもおかしくは無い。
ダンジョンの外で火をおこし久しぶりの肉を堪能すると、今度は浜辺にやって来た。製塩のためだ。
実は俺達、製塩は得意だ。
「ポクー、塩作って」
ポクーは平べったく大きくなると、触手の様なものを形成し海に伸ばすと、海水を吸い始めた。吸い始めるとポクーの上に水が浮いて来た。
実はこれ・・・・・・海水です。ポクーも流石に塩水を塩と水に分離はできない。だから、ポクーの上に薄く張った塩水の水分が天日により蒸発させる事で塩分濃度の高い水を得るのだ。あとはその塩水を煮詰めて塩を得るって寸法さ。普段はな。
今回は鍋がない。調理道具等は全て大きい方の荷物入れに入れていたからだ。だから、今回はポクーのみで塩を作って貰う事になる。
ただ、完全にポクーだけで作ると、いらん成分が混ざる安物の塩が出来るのだ。ゆえに普段は良い塩みたいに煮詰めていらん成分を除去したり、出る前に引き上げたりと調整して塩を作っている。
ちなみに、普段は密造。誰にも言わないでね。
たまにリーダス地方やモズナン地方の海沿いの町や村へ依頼で行く事があるんだよ。その時大概買い付けるんだけど、依頼の合間で微妙な休日ができる事がよくあるんだよ。その時ちょちょいと、さ。まぁ手慰みの一つさ。
ポクーが浜辺で塩作りをしている間、俺は俺で木工を始めた。容器も全て落としたため、でき上がった塩に干し肉、干し野菜等を入れる容器を作る必要があるからだ。
流石に彫刻刀や鑿の類は持っていないが、最低限容器の体を成していればいい。
翌日。
早朝からダンジョンに潜り肉を得ると、ポクーは製塩の続きを、俺はその傍らで魔水作りを始めた。
魔水作りは等級さえ気にしなければ簡単。水を用意してそれに魔力を付与すればいい。
魔力を付与するには魔力を放出する必要があるのだが、これは習いさえすれば子どもでもできる魔的な力を使う上での初歩的な技能。もちろん魔力が少ない時分に魔水を作ろうとすれば、水の魔力含有限界に達しない等級0の魔水に仕上がる訳だ。
俺が作れるのは等級1から2の間といったところ。基本飲み専なので、作り手としてはまだまだなのさ。
魔水作りのため専用の革袋に水を注ぎ、革袋の口から手を中に入れると魔力の放出を始めた。
この専用の革袋は魔力を通しにくい素材でできていて、効率よく魔力を付与する事ができるため、魔水作りにはほぼ必須の道具だ。もちろん魔水を売買する時に使われている瓶類も魔水や魔薬用の特殊な瓶さ。
「はぁ・・はぁ・・」
魔水作りには中々魔力を消費する。
程度にもよるが魔力を使い過ぎればしばらく体に力が入らなくなる。
それは危険な状態なため、普段は放浪中はもちろんの事、街中でも息が上がる程魔水作りに魔力を割いていない。
魔力も体力と同じで、負荷を掛ければのびる。それは分かっていたのに、いつかいつかと気を抜ける場所探しを保留し続けた。そのツケをこの前払った。
もう、あんな思いはごめんだ。
俺がもう少し魔的な力に明るければ、空翁との逃走や対峙にしてももっと上手く対処できたのではと考えてしまう。だから、妥協や惰性はここにちょっと封印し、更なる修練を積む事を誓った。
怪我の功名とはいえ、ここは多分無人でモンスターも弱い。そして、実践にはうってつけのダンジョンまでありと、こんな恵まれた環境はこの先見つける事はないだろう。この場所は俺とポクーの中に永遠にしまっておこうと今は思っている。
この依頼を片付け怪我の治療を終えたら、きっと俺達はこの地に帰って来る。
決意を新たに数日間、木工をしたり干し肉や魔水を作ったり、空から辺りを観察したりと精力的に活動し、漸く準備も終わった。やはりダンジョンによる肉の供給に目処が立った事が大きかった。
「さぁ帰るぞ。ポクー」




